2018.01.23 (Tue)

社員のモチベーションを高めるヒント(第27回)

上司が率先して休むと、部下の生産性は向上する!?

posted by 塚田 沙羅

 有給休暇(以下有休)を利用せずに働くような上司のもとでは、部下はまとまった休暇を取りにくく感じているかもしれません。管理職やマネジメント職は、仕事の割り振りや進行だけでなく、自分や部下の休暇の取り方にも気を配りたいもの。気持ちのオンとオフを切り替えて、休暇でリフレッシュすることが、その後の仕事に対するモチベーションや、生産性の向上につながります。そのような循環をつくるために、「休めない職場」を「休める職場」へと変えるために管理職が配慮すべきポイントを紹介します。

半数が有休未消化で、30カ国中の最下位に

 有休を利用して長期休暇をとることは、気持ちをリフレッシュさせる上で有効な手段といえるでしょう。しかし日本人の有給消化率は、ホテル・航空券予約サイトを運営するエクスペディアが調査した「世界30ヶ国 有給休暇・国策比較調査2017」によると、50%しか消化しておらず、調査した30カ国中で最下位でした。

 同調査では、有休取得に罪悪感を持つ人の割合も63%で、日本がワーストとなっています。ほかにも、有休取得に対して上司が快く思っていないのではという疑問を抱いている部下の割合を調査した結果、こちらも33%と最下位になっています。日本に「休むことは悪」「有休取得は許されない」という風潮が残る職場が、いまだに少なからずあることがうかがえます。

 また、人材派遣サービス業のランスタッドが2017年第2四半期に行った休日に関する調査では、1年間で取得する休日数に対する満足度は、満足が35.8%、どちらでもないが32.2%、不満足が32.0%となっています。そして不満足な人の約80%以上が「未消化の有給休暇が多い」「まとまった休暇がとりにくい」ことを理由の上位にあげています。対して満足している人のうち、「まとまった休暇がとりにくい」ことをあげている人は35%にとどまり、その差は約45%と大幅に開きがある結果となりました。ここから、まとまった休暇がないことは、休日数に対する不満が高くなる原因の1つであることが見て取れます。

管理職が有休を取得すれば、部下も追従する

 休めない職場を休みやすい職場にするためには、管理職こそ「休みの手本」となるべきです。管理職自身が、有休で思い切った長期休暇を取得し、オフを楽しむことによって、仕事の生産性があがることを行動で示しましょう。前述の調査からも、こうした割り切りが日本人は苦手のようで、休暇取得に関する不満となっているようです。

 管理職が有休を取得しないと、前述の調査のように部下も「上司が有休の取得を快く思っていない」という不安を抱きます。結果、せっかく有休を取得しても気持ちがリフレッシュできないと部下は感じるでしょう。有休でリフレッシュできないままでは、その後の仕事に対するモチベーションも落ちていくかもしれません。

 部下のモチベーションという観点から「休まない管理職」は、チーム全体の生産性を下げる要因になっている可能性があります。

長期休暇をとっても仕事が回る職場

 休まない管理職の特徴として、「自分が長期休暇を取得したら仕事が回らない」という理由をあげる人が多いようです。しかし、自分がいないと回らなくなるようなマネジメントやワークフローは、チームや部下の成長を停滞させている可能性があります。管理職が意思決定だけでなく、細かな指示や実務まで行っていると、部下やチームは自分で判断や行動を起こさないことに慣れ、日常業務すらも管理職の指示を待つようになるからです。

 反対に、管理職は意思決定をするだけで、業務の実行に関しては部下やチームの判断に任せるようにすれば、能動的に考えて行動するようになり、さまざまな経験を得ることで、部下は成長します。このような状況ならば、管理職が1~2週間ほどいなくても仕事が回らない可能性は低いでしょう。

 自分にしかできない仕事を多く抱えるだけが管理職ではありません。チーム全員で業務にあたるワークフローを構築するのが管理職の仕事であり、そのなかで部下を育て、自分を含めた誰かが長期休暇を取得しても、フォローできる体制を確立することが、本当の意味でのマネジメントではないのでしょうか。

 チーム内で仕事をフォローし合えるような体制や雰囲気を作れば、部下も休暇を取得することへの気兼ねが減るはずです。

急速にオンへ切り替えないことにも配慮を

 フォローする体制だけでなく、休暇を取得した後の働き方にも配慮することで、生産性が向上するという考えが欧米で広まっています。その1つが、休暇直後は頭をフル回転させるような重要な仕事から始めないということです。

 休暇直後となることが多い月曜日の午前中には、頭をフル回転させるような仕事の1つである会議から始まることを避けています。月曜日の午前中に会議となれば、休み明けから頭をフル回転させることになります。気持ちを、いきなり仕事モードに切り替えることが必要になります。しかし電源スイッチのように瞬時に切り替わらないので、よいアイデイアが浮かばずに、会議に実りないことになる可能性があるため、その時間を避けているのです。

 顧客との約束などがある場合は別ですが、月曜日の午前中に実施する定例の社内会議などであれば、午後や他の曜日に変えるなど試してみましょう。

 日本の職場は有休の取得率などからも、休暇取得が生産性に及ぼす影響や、職場やチームでフォローし合う体制ということに関する意識が薄い状態です。もしチームのモチベーションや生産性が上がらないと考えているのなら、自分や部下の休暇取得に関して見直してみましょう。

 もし休めない職場となっているのなら、管理職が有休などの長期休暇を取得することは「必要」であるという意識の切り替えから改善を始めましょう。そして、チームは誰が長期休暇をとっても仕事が回るような体制を整えて、管理職も率先して休暇を取得するようにします。職場に有休取得や長期休暇は「当たり前」という雰囲気を醸し出すのがポイントです。

 有給取得が当たり前という雰囲気には、生産性やモチベーションの維持だけでなく、部下に仕事を任すという信頼関係を築くことも含まれています。仕事において休暇は、さまざまな面に影響を与える要素であると、管理職は認識しましょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年12月23日)のものです。

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https://www.randstad.co.jp/wt360/archives/20170620.html
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塚田 沙羅

塚田 沙羅

イギリス・ロンドン在住のライター/英日翻訳者。東京芸大卒業後、出版社編集部を経てフリーランスに。イギリス情報・文化、ビジネス(働く人にとっての学びや気づき、人材育成、グローバル思考など)、アート・カルチャーについてさまざまな媒体で多数執筆。
https://japanesewriterinuk.com/article/contact.html

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