2017.02.24 (Fri)

社員のモチベーションを高めるヒント(第19回)

“イクメン企業”に学ぶ、ワークスタイル変革術

posted by 田中靖子

 2016年10月に、「イクメン企業アワード2016」の表彰式が行われました。「イクメン企業アワード」とは、厚生労働省が2010年から続けている、社会全体で男性が積極的に育児に関わることを推進する「イクメンプロジェクト」のひとつです。働きながら安心して子どもを育てるための労働環境を整備・推進している優れた企業を表彰するものです。

 今回グランプリに輝いたのは、株式会社丸井グループとリコーリース株式会社の2社。次点となる特別奨励賞受賞には、大成建設株式会社と大和証券株式会社が選ばれました。

 これらの企業は、どのような取り組みを行い“イクメン企業”に選出されたのでしょうか? イクメン企業アワードで表彰された企業の事例から、男性社員の育児参加を支援するための取り組みを見ていきましょう。

子供が生まれた男性社員は“最低でも”5営業日休む

 イクメン企業に輝いた企業の特徴のひとつに、育児のための全社的な休暇・休業制度が導入されている点があります。

 たとえばリコーリースでは、2015年度より「育メン・チャレンジ休暇制度」という制度を導入しています。これは子どもが生まれた男性社員が、“最低でも” 5 営業日以上 の育児休業を取得することを会社として求める制度です。男性社員が育児活動を通じて意識改革を図ることを目的としていることもあり、育児休業取得後は会社に対し、本人と配偶者による育児参加報告書の提出が求められます。

 丸井グループでは、2012年度より最大 7 日間有休を取得できる短期育児休職制度を導入。2014年度にはグループ幹部の集まる会議にて、育児休職取得の促進を呼びかけ、トップダウン方式での取り組みを実施しています。

 さらに、育児のために一時的に勤務地を限定した働き方に変更できる「エリア限定制度」も導入。これに加えて、男性の育児休職取得率をKPI(重要業績評価指標)に掲げ、社内外にその成果を公表し、全社員に対して目標達成することを呼びかけています。

 こうした取り組みの結果、リコーリースの育児休暇の取得率は、制度導入前の2013年度の20%から、導入後の2015年度は76.5%に向上。丸井グループの育児休職の取得率は、2013年度の13.8%から2015 年度 には66% に上昇しています。

「19時以降残業禁止」で資格取得者が増えた

 仕事と育児を両立するためには、残業や休日出勤といった時間外労働の是正も必要です。たとえば、幼稚園の送り迎えをしている期間は、早出や残業をすることはできませんし、運動会等のイベントに参加する際は、土日出勤もできません。時間外労働の削減は、安倍内閣が掲げている政策のひとつであり、現時点でも多くの企業が残業削減に向けて取り組んでいます。

 今回イクメン企業に選ばれた企業では、残業など時間外労働の削減に対し、より具体的な基準を掲げています。

 たとえばリコーリースは、部門別に残業時間の目標値を定めています。2カ月連続で目標値をクリアしなかった部門には、未達成の理由と改善報告書の提出が義務付けられます。残業をする際には、事前申請と勤務実績の入力を必ず実施するという徹底ぶりです。

 また、特別奨励賞を受賞した大和証券では、2007年より、どんなに遅くても19時までに退社する「19時前退社の励行」を続けています。この結果、資格取得や語学の勉強等、自己研鑽に励む社員が増加。フィナンシャル・プランナーの資格のひとつである「CFP資格」の取得者は、2007年度の214名から、2015年度は616名に増えたといいます。

男性の育児制度を整えることがワーク・ライフ・バランス向上につながる

 こうした育休制度や残業時間の削減といった取り組みは、社員のワーク・ライフ・バランスの向上につながります。そして、ワーク・ライフ・バランスが取れた働きやすい企業には、優秀な人材が集まりやすくなるため、企業としての競争力強化にもつながります。

 女性に対する育児休暇制度を導入する企業は多いでしょうが、男性に対する制度を整えている企業は、さほど多くないかもしれません。今回取り上げた“イクメン企業”を例に、ワークスタイルの改革を検討してみてはいかがでしょうか。

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田中靖子

田中靖子

法律家ライター。東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、会社設立等のビジネス関連の業務を扱う。現在はアメリカに在住し、法律関連の執筆や講演を行っている。

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