2023.01.30 (Mon)

他人には聞けないICTの“いま”(第57回)

Z世代の心をつかむ「メタバース採用」とは

 コロナ禍の影響で、企業の採用活動ではリモートによる説明会や面接の機会が増えてきました。また、デジタルネイティブであるZ世代(1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代)の一部では、TikTokやYouTubeなどの動画メディアを活用した就職活動、いわゆるリモート就活も賑わいを見せています。しかしその半面、ディスプレイ画面でのコミュニケーションはリアルの対面と比べて伝わる情報が限られるため、会社の雰囲気が伝わりにくいなど、リモート就活ならではの課題も浮上してきました。その中で注目されているのが、仮想空間で採用活動を行う「メタバース採用」です。今後のZ世代の採用で期待される、この新しい採用メソッドの動向と可能性についてご紹介します。

社風を重視するZ世代のニーズに応える採用ツール

 Z世代の就職活動における情報収集の方法は、従来の就活サイトや説明会から大きく変化しています。電通が2023年卒業予定の大学生・大学院生を対象に行った調査によると、約6割がYouTubeやLINEオープンチャット、TwitterなどのSNSを使って就職活動の情報収集を行っています。同調査では、Z世代が就職先を選ぶ際に最も重視するのは「社内の風通しの良さ」ということも明らかになりました。定型化された就活サイトだけでは得にくい、会社や従業員の雰囲気を動画やSNSで知って興味をもつ人が増えているようです。

 一方、現在多くの企業が取り入れているオンラインでの採用活動は、そうしたZ世代のニーズを満たせていないようです。大手総合就職・転職情報会社の調査では、9割以上の就活生が利便性の高いWeb面接やWebセミナーの参加に前向きであるものの、約5割が「企業や従業員の雰囲気がわかりにくい」という理由で参加に不安を感じているという結果になっています。

 こうした就活生の不安を解消するツールのひとつとして注目されているのが、メタバース(仮想空間)を用いた採用活動です。多くの企業でリモートワークの中で孤立しがちな従業員の関係性をよくするために、アバターを使って交流できるメタバースオフィスの導入が進んでいます。この延長で、メタバース特有の匿名性やその中で築ける親密感が、採用活動においても企業と求職者の双方向のコミュニケーションに役立つと期待されています。国内でも伊藤忠商事のようなVR空間を利用した採用活動の事例が徐々に増えているほか、採用活動に特化したメタバースツールの提供も始まっています。

顔出しなしの面接も、メタバース採用の活用事例

 では、実際にメタバース空間を用いた採用活動にはどのようなものがあるでしょうか。国内外の事例を見ていきます。

 まず最初にご紹介するのは、2022年10月に中京テレビ放送が実施したメタバース会社説明会です。従業員と200名の就活生がアバターを使って参加したこの説明会では、座談会や質疑応答形式で参加者が従業員に仕事について直接質問できる空間を提供。お互いの顔や名前を知らない状態で参加することで心理的ハードルを下げることが狙いのひとつでしたが、参加した学生から「通常の対面の説明会よりリラックスして参加できた」「対面に近い感覚の中、従業員から深い話を聞けた」といった満足の声が寄せられていました。

 面接の過程でメタバースを用いた事例では、クラウドやサーバーの運用に携わる「ビヨンド」が、新卒採用で面接官・応募者ともにアバターを利用して参加するバーチャル面接を実施しました。フラットな状態で学生の人間性を見るという目的で、バーチャル面接は顔出しなし、学歴や性別、年齢などの個人情報も開示せずに行いました。また、学生のアバターに対する創意工夫などから、エンジニアに必要なクリエイティブ力の評価にも生かしたと言います。

 海外の事例では、2021年、LGやサムスン、ヒュンダイなどの韓国の大手メーカーもこぞってメタバース空間を用いた会社説明会を本格的に導入しました。LGの採用担当者によれば、通常のオンライン説明会と比較して学生からの質問を多く引き出すことができ、結果的に地方を回って行っていた従来の説明会と比べても実施にかかるコストを5分の1に抑えることができたそうです。

 発達障害などの神経疾患をもつ求職者の採用プロセスのひとつとして、マイクロソフトはメタバース型オンラインゲーム「マインクラフト」を導入しました。メタバース空間の中で候補者に課題を与えてグループで取り組ませることで、個人の問題解決力やコミュニケーション能力を見極めると同時に、チャットでの自由なコミュニケーションの経験を通して面接でも自分を表現できるように促すことを目的にしています。

固定概念を覆す、メタバース採用への期待

 このようにメタバース技術を用いた採用活動は国内外で注目されていますが、現状ソフトウェアの運用コストや、本格的な導入のために必要なVRゴーグルの普及といったハードルがあり、本格的な導入が進むにはもう少し時間がかかりそうです。スマートフォンや電子タブレットから簡単に参加できるツールも増えているものの、音声データや位置情報など大量のデータを同時に送受信するメタバースの特性上、十分なスペックを備えた通信環境やデバイスが必要など、参加者側の負担も課題となっています。

 しかし、採用シーンにおいて性別や年齢などに対するアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を見直し、個人の適性やスキルセットを重視する風潮が強まる中で、自由度の高い対話機会を生み出すメタバースが果たす役割は大きいでしょう。より幅広い候補者の中から能力を備えた人材を見つけることができる選択肢として、メタバース採用への期待は高まっています。

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