2024.11.22 (Fri)

他人には聞けないICTの“いま”(第65回)

バスはもちろん、鉄道や新幹線も!公共交通機関の「自動運転」の今

 全国的にドライバー不足が社会問題となりつつある今、公共交通機関を自動運転する取り組みが始まりつつあります。中には運転手が乗車しない“完全自動”のバスも存在します。

99%のバス事業者が「ドライバー不足」。京都市バスは非常事態宣言も

 バスのドライバー不足が社会問題となりつつあります。

 一般財団法人 地域公共交通総合研究所が、公益社団法人日本バス協会の会員であるバス会社に対して行った調査によると、回答のあった68社の99%に当たる67社が「運転手不足」であると回答。運転手不足への対策として、回答事業者の半数が「減便」、約3割が「路線廃止」を計画しているといいます。

 実際に運転士不足に苦しむバス事業者も存在します。京都市バスを運営する京都市交通局では、2024年6月に市バスの運転士が50~60名不足していたことから、7月上旬に新規採用者の募集を実施。しかし、70名の採用予定に対し応募が47名に留まったことを受け、10月16日に「市バス運転士不足 非常事態宣言」を発表。運転士の再募集や処遇改善、積極的な採用PR活動を行っていくとしています。

 東京都足立区でも、同区が運営するコミュニティバス「はるかぜ」の一部路線の運航終了が2024年2月に発表されました。理由のひとつに運転士不足が挙げられており、“区から経費の補助があっても解決できる問題ではない”としています。

 バス運転士不足の背景には、単純にドライバーが不足しているということに加え、2024年4月から適用された「改善基準告示」の改正の存在があります。

 同基準の改正により、バス事業者は従来の基準よりもドライバーに長い休息時間を確保する義務を負います。結果的に運転士の拘束時間(実労働時間)も短縮されるため、その穴を埋めるべく、各事業者が募集を行うも、そもそもバス運転士自体の絶対的な数が少ないため、全国で運転士不足が深刻化しているというわけです。

ドライバーもスタッフも同乗しない自動運転バスが運行している

 このようにバスのドライバーの不足が深刻化する中、そもそも運転士がバスに乗車しない「自動運転バス」を導入する地域も増えています。

 たとえば茨城県西部の境町(さかいまち)では、自治体では初となる定時・定路線の自動運転のEVバスを2020年より導入しています。自動運転バスは地図情報とGPSによってルートを把握し、ルートに沿って自動走行します。さらに、バスの外にはセンサーが設置されており、障害物を検知しながら走行します。

 車内には運転手はいませんが、乗車案内や事故時の救護をおこなうオペレーターが1名乗車します。乗車人員はオペレーターを除き10名で、車椅子の乗降にも対応します。現在の自動運転レベルは、特定条件下に限って自動運転機能を行う「レベル2」ですが、車両自体は場所を限定して完全自動運転を行う「レベル4」にも対応しています。

 東京都大田区の大規模複合施設「HANEDA INNNOVATION CITY」(羽田イノベーションシティ)でも、敷地内を循環する自動運転バスが導入されています。こちらもオペレーターが1名乗車しますが、8月1日からは一部の時間帯で、オペレーターが同乗しないレベル4での自動運転をスタートしています

 レベル4での自動運転バスの運転は、福井県永平寺町の「ZEN drive」でも運行されています。北海道の上士幌町でも2024年10月より、現在レベル2で行われている自動運転バスにおいて、レベル4での無人運行のテスト運行をスタートするとしています。

新幹線も自動運転する時代が到来!?

 このようにバスの自動運転に対する取り組みが進む中、鉄道でも自動運転の導入、および導入に向けたテストが度々行われています。

 たとえばJR九州では、2024年3月よりJR香椎線にて、運転士ではなく自動運転乗務員が乗務する「GOA2.5」の自動運転を、一部の列車にてスタートしています。同時期にはJR鹿児島本線でも、運転士が乗務する自動運転を開始しています。

 経営ビジョンに「ドライバレス運転」を掲げているJR東日本では、今から2年前の2022年に、JR山手線の営業列車にて自動運転を目指した実証運転を実施しています。同社ではATO(自動列車運転装置)の開発を進めており、2028年には山手線に同装置の導入を目指しています。

 JR東日本はさらに2024年9月、新幹線における“世界初”のドライバレス運転を目指すことも発表。2028年度には上越新幹線の一部区間における営業列車・回送列車の自動運転、2030年中頃には東京~新潟間の全線で自動運転を目指すとしています。

 こうした自動運転技術がバスや鉄道に導入されれば、たとえ少子高齢化で働き手が不足したとしても、事業者はドライバー不足に頭を悩ませることなく、車両を運行することが可能です。

 とはいえ、自動運転の安全性が証明され、あらゆる車両で利用できるようになるまでには、まだまだ相当な時間が必要です。バス・鉄道事業者は、しばらくの間は運転手をどのように安定的に確保するのか、頭を悩ませる必要がありそうですが、その選択肢の中に自動運転というカードが存在することは、覚えておいても損はないでしょう。

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