2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2023.04.28 (Fri)

他人には聞けないICTの“いま”(第60回)

研究現場もDX!ラボラトリーオートメーションとは

 新薬や新素材開発において、近年注目を集めているのが「ラボラトリーオートメーション」(以下、ラボオートメーション)です。ある調査会社によると、ラボラトリーオートメーションの世界市場は年平均約6%のペースで拡大しているといわれています。データ収集や実験の効率化・自動化を図ることにより、研究者が創造的な研究活動に取り組むための時間を確保し、革新的な発見につなげられると期待されるラボオートメーションについて、概要や国内の取り組み状況、展望などを解説します。

市場規模1兆円、いま注目のラボオートメーションとは?

 ラボオートメーションとは、AIやロボットを活用し、実験・研究を自動化する取り組みを示します。研究準備や実験にロボットを、ゲノム情報や成分構造の画像解析などにAIを使うシステムを構築することで、新薬や新素材開発が加速できると期待されています。

 ラボオートメーションの採用で得られるメリットは2点あります。ひとつは、実験の再現性が向上できることです。自動化された実験器具は、指示したとおりの動作を反復して行うため、常に同じ条件での実験を行うことが可能です。これにより、ヒューマンエラーで再実験しなければならない事態を大幅に削減し、実験データの不正防止も期待できます。

 もうひとつは、人間の認知能力やバイアスを超えた、質の高いデータの確保を自動で行えることです。AIにより、膨大な量のデータを効率的かつ論理的に収集・解析することにより、良質なデータ収集が期待できます。

 こうしたメリットによって、研究者が実験やデータ収集に割く時間を削減し、より創造的な研究活動に取り組む環境を構築できると考えられています。

研究の自動化ですでに成果を上げている国内企業も

 ラボオートメーションは世界中で取り組まれており、そのなかでも北米は最大の市場となっています。また、日本の製薬企業や、素材開発研究を行う企業でも、導入に向けた動きは増えつつあります。そこで、国内企業でラボオートメーションを導入している事例を紹介します。

 まずはアステラス製薬です。同社は創薬における各工程でAIとロボットを活用し、研究者は要所でアイデアや総合的判断などの価値を加えるといった創薬開発におけるプラットフォームを独自に構築しています。その結果、創薬スピードが向上し、医薬品としての適性を高めた化合物の発見まで約70%の時間短縮が可能となりました。

 続いて旭化成です。同社はAIを統計解析などに用いて、素材研究・開発を効率化するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)と呼ばれる手法を軸に、無人で材料探索を行うスマートラボの構築を進めています。開発期間の短縮や革新的な素材開発を目的とし、現在は同社のほぼすべての製品開発でスマートラボが活用されています。

 また、エーザイや中外製薬などでも、研究施設にロボットを導入して実験の効率化を図るといった取り組みが進められており、今後もますます導入機会が増えていくものと考えられます。

人材育成と低コスト化が急務。ラボオートメーション導入の課題とは

 研究や実験には欠かせないものとなりつつあるラボオートメーションですが、こうした仕組みを導入する上で、まず懸念になるのはコスト面です。現在、実験を自動化するロボットは、限定的な範囲での動作のみを行うため、一連の流れをすべて自動化するには、複数のロボットを導入する必要があります。また、個別のロボットを連携させるための接続も、ひとつの壁になっていると考えられます。

 この課題の解決のために、ロボットアームの活用が策として挙げられています。現在も多くの産業で柔軟に活用されるロボットアームであれば、実験器具を自在に使用できるほど高機能・高精度化が進むものと考えられています。また、競争原理により将来的に価格が下がる可能性もあります。そうした高性能なロボットが実装された研究施設を、研究者の間でシェアできるようになれば、トータルコストを抑えることも可能になるでしょう。

 また、ロボットやAIの拡充だけでなく、データサイエンスと合わせて、素材製造・バイオ分野の知見を有する人材の育成も急務といえます。産学連携による講座開発や、教育プログラムの構築といった教育機会の拡充を図ることも、ラボオートメーションを実現するうえでは重要です。

 情勢が目まぐるしく変化する現代だからこそ、時代に即応した薬や素材の開発と供給が常に求められています。さらなる技術革新や人材教育の質の向上により、ラボオートメーションの取り組みが促進されていくことで、より豊かな社会の実現につながるかもしれません。

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