2022.12.21 (Wed)
他人には聞けないICTの“いま”(第55回)
「お絵描きAI」のビジネス活用の可能性と課題とは
入力したテキストを基にAIが画像を作成する「お絵描きAI」は、ICT領域で大きな注目を集めています。ここでは、お絵描きAIツールの概要やビジネス活用の可能性について解説します。
誰もがイラストレーターになれる時代が到来!?
お絵描きAIは、入力したテキストを基に、AI(人工知能)が画像を作成するサービスです。たとえば「浮世絵風の富士山」「雪遊びをする猫」と入力すると、AIによって作成された画像が自動的に表示されます。最近話題になっているツールとしては、「Midjourney(ミッドジャーニー)」や「お絵描きばりぐっどくん」「AIピカソ」「Dream by WOMBO(ドリーム バイ ウォンボ)」などが挙げられます。完成した画像の作風は多種多様で、なかには人が描くものに匹敵するクオリティの画像も見られます。作品が瞬時に完成するのも大きな特徴です。
お絵描きAIが注目されるきっかけとなったのが、2015年にGoogle社が発表した画像解析ソフトウエア「Deep Dream」です。これは、取り込んだ画像を絵に変化させられることで話題になりました。2016年には、17世紀の画家・レンブラントのさまざまな作品の特徴をディープラーニングアルゴリズムにより分析して描かれた「レンブラントの新作」が発表されました。2018年には、AIが描いた絵が43万2500ドルで落札されたことがニュースになっています。
このようにお絵描きAIは着々と進歩を遂げてきましたが、一般ユーザーがお絵描きAIを試す機会は限られていました。しかし、2022年に「Midjourney」が一般公開されることで、お絵描きAIツールの人気に拍車がかかります。
たとえばLINEで利用可能なお絵描きAIツール「お絵描きばりぐっどくん」は、2022年8月のサービス提供開始から2カ月で累計アカウント登録数が250万人を超えるなど、大きな注目を集めています。そのほか、スマートフォンアプリとして提供されているお絵描きAIツール「AIピカソ」「Dream by WOMBO」なども、順調にダウンロード数を伸ばしています。
企業がお絵描きAIを活用するには
現在、お絵描きAIは個人利用がメインとなっていますが、ビジネスの現場でも利用されるようになっています。たとえばイギリスの出版社は、お絵描きAIで作成した画像を雑誌の表紙に掲載しました。またイタリアの新聞社は、お絵描きAIで作成した画像を使った漫画を掲載しています。さらに、ストックフォトサイトの運営企業がお絵描きAIで作成した画像の商用利用を開始したり、世界的なソフトウエア開発企業がグラフィックソフト内にお絵描きAIを組み込んだりと、着実に浸透を続けています。
企業内でのビジネス活用としては、営業資料やプレゼン資料のイメージイラスト、コンセプトアート、製品やサービスの紹介動画の背景制作などが考えられます。こうした用途には、「いらすとや」などが配布するロイヤリティフリーの素材が使われるケースが多いですが、今後はAIお絵描きツールを用いて制作することが主流になるかもしれません。
ビジネス利用時に注意したいのが著作権です。お絵描きAIツールで作成した画像の著作権は、国によって解釈が異なっているのが現状です。たとえばイギリスの場合、AIで作成した画像は著作物として認められます。日本では、内閣官房 知的財産戦略推進事務局の資料によると、現状、AIが自律的に生成した画像は著作権が発生しないとしつつも、今後どのように取り扱うべきかについての議論が続いています。また、お絵描きAIツールの提供企業により利用規約が定められている場合があり、たとえばMidjourneyの場合、作成した画像を商用利用する場合は有料プランへの加入が必要となります。お絵描きAIツールを利用する場合は、まず利用規約をきちんと確認しましょう。
ビジネス資料にイラストを掲載する場合、「イラスト配布サイトの素材を使うと画一的になる」とはいえ「オリジナル素材をイラストレーターに制作依頼するとコストが発生する」という課題があります。その課題を解決する可能性を秘めているのが、お絵描きAIツールです。うまく活用して、資料の差別化につなげてみてはいかがでしょうか。
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