新型コロナウイルスがきっかけとなり、注目度が増した通信制大学。2021年4月に開校した「ネットの大学managara」のほか、ソフトバンクが運営する「サイバー大学」、ビジネスに関する知識を学ぶ「BBT大学」など、オンラインの授業だけで学士号が取得できる大学も出てきました。地方創生にも一役買う、インターネットを活用した通信制大学の最新事情を紐解きます。
アーカイブ動画で復習、SNSで気軽に質問
通信制の学校は「事情があって全日制の学校に通えない人が行く特殊なもの」「社会人が仕事をしながら知識を得るための“補足的”なもの」と考えている人も少なくないでしょう。しかし近年、あえて通学制ではなく通信制の大学を選ぶ学生やビジネスパーソンが増えています。
通信制が選ばれるようになった理由は、全日制・通学制とほとんど変わらないクオリティの学習ができるようになったからです。インターネット環境やオンラインでの学習プログラムが急速に進化したことによって、リアルタイムで一流講師のオンライン授業が受けられるようになり、時間の都合が合わない場合でも、アーカイブで容易に追いかけ学習や予習・復習ができるようになりました。わからないことがあればSNSで気軽に相談できますし、クラウド上でレポートなどの課題を提出し、評価を返してもらえるような仕組みもできています。
最近では、スクーリング(通学して受ける講義)が一切ない大学も出てきました。こうしたインターネットを活用した通信制大学で、例えば、子育てをしながら難関国家資格の取得をめざす人や、仕事をしながら高度な研究を行う人など、本格的な学びに取り組む人が増えています。
地方で家業を手伝いながら学ぶ人も増えてきました。スクーリングのない通信制大学なら、勉強のために家業を休む必要はありませんし、また、家から近い大学を選ばなければならないという制約もありません。さらに、同じように家業を手伝う若者や経営者など、全国各地の意欲ある地方人材とつながることも期待できるのです。こうした地域を選ばず、距離の制約を受けない特性を活用して、地方創生に特化したプログラムを展開する大学は多く、通信制ならではのイノベーションの創出が期待されています。地方創生のカギとしても注目を集めている通信制大学。今後、ますますその数が増えて行くと予測されます。
地方創生に役立つ知識が得られる通信制大学3選
次に、インターネットを活用した通信制大学の中でも、ユニークな試みをしている大学をいくつか紹介しましょう。
2021年4月に開校したばかりの「ネットの大学 managara」は、オンラインで経済経営学士号が取得できる大学です。Zoomを活用したオンライン授業や動画配信だけでなく、EdTech(教育領域のイノベーティブな技術やサービスのこと)を活用した学習プログラムが用意されているところが特徴。また、地方創生に関連する学びを提供する市民大学「さとのば大学」と提携し、4年間で日本各地の5つの地域を巡り、暮らしながら社会課題の解決を実践する「さとまなプログラム」を展開しています。
ソフトバンクグループの通信制大学「サイバー大学」の特徴は、最新の学習システム。履修登録から日々の受講、テスト、レポート提出、成績の確認まで、すべて独自開発のeラーニングプラットフォーム「Cloud Campus」上で行える点です。設置学部は「IT総合学部」のみの単科大学で、「テクノロジーコース」「ビジネスコース」「ITコミュニケーションコース」の3つのコースを用意。地方創生に関する公開講座や授業などもあります。
経営コンサルタントとして知られる大前研一氏が学長を務める「BBT大学(ビジネス・ブレークスルー大学)」は、完全オンラインで起業、事業承継、事業成長、海外展開など、ビジネスに必要な知識を学ぶことができる大学です。また、日本全国でまちづくりのソーシャルスタートアップを手掛ける著名なビジネスプロデューサーから、地方創生に関する講義を受けることも可能です。ほかにも内閣府の補助事業である「地方創生カレッジ」に講座を提供するなど、外部との連携も盛ん。地方×ビジネスに関する知識をしっかりと学べます。
通信制高校に通う生徒が過去最高の20万人超に、進む教育のオンライン化
ほかにも、日本ではじめて通学不要での学位取得を可能にした「八洲学園大学」、情報マネジメントや福祉が学べる「東京通信大学」など、さまざまな大学で、スクーリングをせずに学位を取得することが可能です。完全オンラインではありませんが、「近畿大学 通信教育学部」「日本大学 通信教育学部」などでは、全国各地に所在する学外施設でスクーリングに参加することができます。
なお、高校でも通信制の学校が存在感を増しています。文部科学省が2020年に発表した調査によると、通信制の高校は全国に257校あり、在籍する生徒が初めて20万人を超えたことがわかりました。一方で、全日制・定時制の高校に通う生徒は過去最少の約310万人。いかに通信制の高校に通う生徒が増えているかがわかります。
時間や場所に縛られず、自分のペースで、のびのびと質の高い教育を受けることができる通信制の高校・大学は、今後、着実に増えて行くことでしょう。うまく活用すれば、より一層のキャリアアップや大胆なキャリアチェンジをすることができますし、また、地方の企業にとっても、優秀な人材の確保やイノベーションに創出に欠かせない重要な存在となっていきそうです。
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