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2022.12.21 (Wed)

他人には聞けないICTの“いま”(第56回)

AI採点や新スポーツも、スポーツテックとは何か

 スマートウォッチを身に付けてサッカーやテニスを楽しむ人、スマートフォンを腕に巻いてランニングに励む人など、ウェアラブルデバイスを装着して運動する人をよく見かけるようになりました。スポーツの世界にもテクノロジーが浸透しており、最近では、サッカーワールドカップ・カタール大会で採用された「VAR判定」をはじめとするプロスポーツ向けのテクノロジーや、ユニバーサルスポーツをサポートするテクノロジーなど、幅広い「スポーツ×テクノロジー」の事例が出てきています。拡大しつつあるスポーツテック、その基礎知識や事例、今後の展望について紹介します。

スポーツテックとは何か

 まずは「スポーツテック」の概要について確認しましょう。スポーツテックとは、SportsとTechnologyを掛け合わせた造語です。スポーツの分野にAIやデータ分析、ロボット工学などの技術を取り入れ、より正確な競技判定を行ったり、効率的なトレーニングを後押ししたり、快適な観戦環境を構築することなどに役立てられています。2019年頃、ラグビーワールドカップなど国際的な大会に向けてスポーツ産業全体が盛り上がりを見せるなか注目され始め、おもにスタートアップベンチャーやテック系大企業から多様なソリューションがリリースされるようになりました。

「観る」「支える」「プレイする」、3領域のスポーツテック

 スポーツテックは、「観る」「支える」「プレイする」の3つの領域に大別されます。これら主要3領域の詳細やソリューションについて見ていきましょう。

 「観る」領域のスポーツテックに当たるのが、スポーツの観戦環境を整えるための技術です。スマートフォンやPCでスポーツを観戦するためのストリーミングサービスや、音声配信サービス、テキスト速報サービスなどが該当し、ほかに新型コロナウイルスの影響などにより無観客で行われている試合の会場に遠隔で拍手や声援を届けるサービスや、感染症などに配慮した最適な座席配置を割り出すシステムなども、「観る」領域のスポーツテックに含まれます。

 「支える」領域のスポーツテックに当たるのが、より強い選手やチームを育成するための技術です。選手の弱点に合わせて最適なトレーニングメニューを組んでくれるサービスや、練習の内容や強度などを記録しておけるソリューション、膨大なデータからチームの傾向や戦術についてアドバイスしてくれるシステムなどが挙げられます。ほかにも、コーチに指導の仕方をアドバイスするツールなどもあり、指導、トレーニング、戦術といった幅広い面でテクノロジーが活躍しています。サッカー・ワールドカップで採用されたVAR判定も、「試合の進行を支える」という意味でこの領域に該当します。

 「プレイする」領域のスポーツテックに当たるのが、ジョギングアプリやヨガアプリ、IoTジムなどです。スポーツをすることを直接助けてくれるもの、続ける動機付けになるようなものが多く、一般生活者のなかにも定着しつつあります。また、「テクノロジーを活用して老若男女が運動能力に関係なく対等に楽しめるスポーツを生み出そうという動き」や「AR空間のなかでできる新しいスポーツ」などもあり、これも、「プレイする」領域のスポーツテックと考えられます。

AIによる採点システムやARを用いた新スポーツなど、新しいフレームが続々

 多くのサービスやソリューションが開発され、盛り上がりを見せるスポーツテック市場。では具体的に、どのようサービスが提供されているのでしょうか。いくつかのユニークな事例を紹介しましょう。

 最初に紹介したいのが、富士通が開発した「AI体操競技採点システム」です。3Dセンサーによりマーカーレスで正確に身体の動きをセンシングできるようになっており、センシングデータから骨格の動きを正確に把握。手足の位置やひねりの回数などをとらえ技の難度や点数をアウトプットします。すでに国際大会で採用されており、審判の判断負荷の軽減や審査の公平性担保に貢献した実績もあり、今後増えるであろう“AIによる採点”の先進事例として注視したいソリューションです。

 次に紹介したいのが、ARを利用した日本発の新スポーツ「HADO」です。頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着し、自らの手で“デジタルのエナジーボール”を放ってぶつけ合いつつチーム戦を行います。現在39カ国以上の国々でプレイができ、世界で350万人以上の人が体験しているといいます。公式大会も定期的に行われており、また、誰でもできるスポーツとして教育現場での活用を模索する動きも進んでいます。

 アシックスが開発した、走りを分析するスマートシューズ「EVORIDE ORPHE」も話題になりました。これは、シューズに内蔵されたセンサー「ORPHE CORE 2.0」で計測されたデータを解析し、アシックス独自の分析アルゴリズムによってランニングタイプや足運びの改善ポイントを算出するというもの。スマートフォンによって走りの改善ポイントがリアルタイムで音声フィードバックされ、またアプリにはおすすめのトレーニングメニューが表示されるようになっており、よりよいランニングをサポートします。

 単なるアプリではなく、AI、AR、センサー、スポーツ用品など、さまざまな技術やモノが掛け合わされ、新しい枠組みが生まれているところがポイントです。今後も、スポーツテックによって、斬新なプレイ体験や観戦体験、これまでにないユニバーサルスポーツなど、多くのニューノーマルが生まれることでしょう。

市場規模は1,500億円!単なるアプリやツールを超え、街づくりにまで拡張も

 スポーツ庁は、2015年に5.5兆円だった国内スポーツビジネスの市場規模を2025年に15.2兆円に拡大させると表明しています。また、民間の調査会社によって、2019年に310億円程度だったスポーツテック市場が、2025年には1,500億円超に進展するという予測も発表されています。

 最近では、DeNAが横浜にスポーツを中心としたスマートシティ「Delightful City」をつくる構想を進めています。国内最大級のライブビューイングアリーナの設置、さまざまな観光施設を移動できる「ラストワンマイルモビリティ」の実現などが計画されているとのことで、今後このような「スポーツとテクノロジーを軸にした街づくり」も広がっていくことでしょう。

 単なるアプリ、単なるツールを超えて、コミュニティや街づくりにまで拡張しつつあるスポーツテック。今後もその動向に、目が離せません。

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