2023.03.06 (Mon)

他人には聞けないICTの“いま”(第59回)

「ベビーテック」は少子化対策の切り札になるか?

 ICTを活用して妊活から出産、乳幼児の子育てをサポートする「ベビーテック」のプロダクトやサービスが生まれています。国や自治体も、少子化に歯止めをかけるために、ベビーテックの導入を勧めています。本記事では、国や自治体の取り組みのほか、家庭・保育施設に向けたプロダクトやサービスを紹介します。

国や自治体が、ベビーテックで少子化対策を進めている

 日本の少子化は歯止めがかからない状態となっています。2020年の出生数は84万835人で、これは過去最少の数値です。第二次ベビーブームの1973年の約210万人と比べると半分以下で、半世紀にわたり減少傾向が続いています。

 このような状況を踏まえ、岸田首相は2023年1月の施政方針演説で「次元の異なる少子化対策の実現」について述べ、国会では扶養家族が多いほど税負担が軽減される「N分N乗方式」が議論されています。さらに自治体に目を向けると、小池百合子東京都知事は1.6兆円の少子化対策を発表しました。

 育児負担を軽減する取り組みのひとつとして、国や自治体が推進しているのがベビーテックです。ベビーテック(BabyTech)とは「Baby(赤ちゃん)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で、妊活から出産、育児期の子育てを支援するスマートデバイスやITサービス全般を示します。

 たとえば経済産業省は、神奈川県小田原市と連携して、2022年1月からベビーテックサービスの実証調査を行いました。

 この実証実験では、 赤ちゃんの睡眠リズムを整えて寝かしつけをサポートするスマートベッドライト、妊娠・授乳中の薬の検索システム、子育て関連の情報交換などができるSNSアプリといったベビーテックを家庭で使用し、効果の検証が行われました。結果的に利用者から大きな満足を得られたサービスもあり、今後のさらなる普及が期待されています。

妊婦を助けるアプリに、離乳食づくりをサポートするサービスも登場

 ベビーテック市場の動きは活発です。ITベンチャーが新しいアプリをリリースするなど、さまざまなプロダクトやサービスが生まれています。

 たとえば株式会社カラダノートでは、陣痛間隔計測アプリや、妊娠から出産までをサポートするアプリ「ママびより」などを提供しています。「ママびより」は、週数に応じた赤ちゃんの成長の様子を視覚的にわかりやすく把握できるのが特徴。週数ごとに“先輩ママ”の体験談なども紹介されており、妊婦の心強いツールとなっています。

 FUNFAM株式会社は、五感を育む宅配離乳食や幼児食の宅配サービス「ごかんごさい」を展開。オンラインでさまざまなレシピを紹介したり、離乳食教室を実施しています。同サービスは、優れたベビーテックを表彰する「BabyTech®️ Awards 2022」の授乳と食事部門で大賞を受賞。審査員からは、「“離乳食を学ぶ場所”という視点の当て方が評価できる」「コロナ禍で離乳食教室が開けず、コミュニケーションの機会が減っていたという気づきに根差している」と称されています。

 ベビーテックはこのように企業単体で提供されているものもありますが、それ以外の組織も取り組みを進めています。2018年には、複数のITベンチャー企業が共同で「子育Tech委員会」を発足しました。子育てのさまざまなシーンをサポートするための活動を行っており、参画・応援する企業も増えています。企業以外でも、たとえば東海大学は、妊娠から臨月までの過程を男性も疑似体験できるシステムを開発しています。

ベビーテックは子育てのあらゆるシーンで活躍する

 家庭以外に保育施設でもベビーテックが普及しつつあります。保育施設は、共働き世帯の増加、新型コロナウイルス対策、保育士不足などさまざまな課題を抱えており、これらをベビーテックで解決しようという試みです。

 保育施設で導入されるベビーテックには、保護者と簡単に連絡ができるアプリや、ICカードとタブレット端末による出欠管理で園児の入退室時間を正確に記録するシステム、午睡時のオムツにセンサーを取り付けてうつ伏せ寝を検知し、午睡のデータから園児の体調を予測するシステムなどがあります。

 このようにベビーテックは、子育てに関するあらゆるシーンで、親や赤ちゃん自身、さらには子育てに関わる人をサポートします。国や自治体が少子化対策を推進する中で、ベビーテックのニーズが高まり、社会に普及していくことで、日本の少子化問題も徐々に解決していくことでしょう。

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