2021.02.19 (Fri)

(第27回)

約3割がオフィス縮小を希望、始め方・進め方は?

 テレワークの拡大に伴って、オフィスを縮小する企業が増加しつつあります。オフィスを縮小する最大のメリットは、賃料が抑えられる点です。ほかにも光熱費や通信費など、さまざまな固定費の削減が期待できます。企業にとって大きなメリットがあるオフィス縮小。その現状や、始め方・進め方、フリーアドレス制の採り入れ方について解説します。

約3割の企業が「オフィスを縮小したい」と回答

 人材サービス企業であるアデコの調査によると、2020年4~5月に発出された緊急事態宣言中にテレワークを採り入れた企業のうち、82%が「テレワークを継続している」ということがわかりました。また、ザイマックス不動産総合研究所の調査では、コロナ危機収束後のオフィス面積について「縮小したい」と考える企業が30.4%に上ることも報告されています。

 テレワークの継続とオフィスの縮小志向、この流れがより鮮明になったのが、広告会社大手・電通の本社ビル売却報道です。2021年1月、新聞各紙によって、「電通が汐留本社の売却を検討していること」が明らかにされました。電通は、ビル売却後も移転はせず、売却先からオフィスを借りる形で営業を続ける考えで、「テレワークによって空いたスペースを有効活用することをめざす」と表明しています。

 このほか、日本通運やZOZOといった企業が、スペースの縮小と機能の集約を進めるため本社を移転すると発表。オフィス縮小の流れが顕在化しています。

 前出のような有名企業だけでなく、中小企業などを含めると、オフィスの縮小を考えている企業は相当な数に上る可能性は否めません。今後もオフィス縮小の流れは加速し、ニューノーマルとして定着していくと見てよさそうです。

オフィス縮小に役立つフリーアドレス制の採り入れ方

 では、オフィスの縮小はどのように始めたらよいのでしょうか。取り掛かりやすく現実的なのが、「フリーアドレス制を採り入れてデスクの数を減らす」という方法です。デスクの数が減れば余剰スペースができ、オフィスの面積を減らすことが可能です。従業員数や事業規模を変えることなく、2フロアのオフィスを1フロアに集約したり、より小さなオフィスに移転できるようになります。

 ただし、闇雲にフリーアドレスを採り入れてもうまくいきません。まずは目的を明確にし、従業員と目線合わせを行うところから始めましょう。

 このときに気を付けたいのが、コストカットだけを目的にしないこと。経費を削減することだけを意識してしまうと、フリーアドレスのよさを十分に活かすことができません。例えば「人との交わりを促し、コミュニケーションを活発化させる」「自分で働く場を選ぶことで、主体性や思考力を育てる」「余剰スペースを有効活用して業務効率を上げる」など、コスト面以外での前向きな目的を設定し、意識を共有するとよいでしょう。

 これがしっかりとできたら、設計に着手します。どの部署から導入し始めるのか、どんなタイミングで広げていくのかを計画し、運用ルールを策定するのです。

 運用ルールで特にしっかりと定めておきたいのが、「私物や共有物の扱い」です。

・業務に使う資料やツール類は企業が用意したバッグに入れてロッカーに保管/持ち運ぶ
・資料やツール類はバッグの容量を超えないよう常に整理する
・ハサミやカッターなどの文房具は共同で利用し、使ったら必ず元の場所に返却する
・退社するときはデスク上にものがない状態にする

 上記のようなルールを設定し、周知しておきましょう。ほかにも「前日と同じ席に座らないようにする」など、移動を促すルールを決めておくとフリーアドレスの強みである“交流”が生まれやすくなります。なかには、毎朝くじ引きで席を決める企業や、座席の利用時間に制限をかける企業もあります。

 こうしたことを詰めながら、レイアウトや座席数、必要な設備について考えていくことで、テレワークがよりしっかりと機能するような環境は生まれます。

アプリを活用すれば、より効果的に運用できる

 フリーアドレスで問題になりがちなのが、「誰がどこにいるのかわからなくなりやすい」というところです。結果、話したい人と話せないという事態に陥ったり、重要な報告や確認が遅れたりするということも少なくありません。

 こうした事態を回避するために有効なのが、フリーアドレス制に特化したICTサービスです。空いているデスクを予約し在席状況を表示できる「Suwary」や、出勤・在宅勤務といった勤務状況や誰がどこに座っているかを確認・管理できる「Cloud Steady」、オフィス入口に設置したタッチパネルで出社時に在籍状況を入力できる「SEKIDOKO」など、多様なアプリがリリースされています。なかには座席の抽選機能があるものやビジネスチャットと連携したものもあり、コミュニケーションツールとして活用することも可能です。また、「在宅ワークだけでなく、自社オフィスが密でなければ気分転換に出社したい」や「予約制ではないフリー席の空き状況を確認したい」というニーズも多く、オフィス内のリアルタイム混雑状況をスマホやサイネージで確認することのできる「VACAN」というサービスも注目を集めています。

 従業員数が多い企業や、複数のフロアで執務を行う企業などの場合は、これらのICTサービスを検討してもよいでしょう。

 従業員全員が気持ちよく働けるようなルール、ツールを整えておくことが、オフィス縮小を成功させるカギ。不満が生まれたり、効率が下がったりすることのないよう、まずはじっくり時間をかけて、丁寧に下準備を進めることをおすすめします。

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