2021.02.19 (Fri)

(第26回)

ABWとは?フリーアドレスやテレワークとの違いは?

 「フリーアドレスの進化形」と言われる働き方が、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)です。ABWとは、働く人が業務内容に合わせて自由に働く場所を選ぶワークスタイルのこと。会社、自宅、カフェ、ホテル、さらにはコワーキングスペースや会議室など、どこで仕事をしてもよく「作業効率がもっとも上がる場所で働こう」という概念です。テレワークやフリーアドレスとの違い、魅力やメリット、事例などを紹介します。

ABWは、従業員の生産性を上げるための働き方

 ABWは、1990年代にオランダのコンサルティング会社、ヴェルデホーエン社によって提唱された概念です。従業員が行う“活動”に注目し、まずは活動を下記の10種類に大別しました。これら10種類の活動に適した場所を従業員が主体的に選択し、働くことで「業務効率化」「生産性向上」「アイデアやイノベーションの創出」が期待できるとされています。

・1人で行う活動
(1)高集中:中断されることのない高いレベルの集中が要求される個人作業
(2)コワーク:短い会話や質問などを交えメンバーと場を共有しながら行う個人作業
(3)電話/ウェブ会議:物理的には1人で行う、バーチャル上でのコラボレーション

・2人で行う活動
(4)2人作業:二人が近距離で横並びになり、じっくりと行う作業
(5)対話:2人もしくは3人で行う議論や会話。予約でも突然でも良い

・3人以上で行う活動
(6)アイデア出し:新たな知識やプロセスを構築するために行う3人以上の協働活動
(7)情報整理:計画の進捗を整理・議論するための、3人以上の計画された会議
(8)知識共有:3人以上のグループによる知識共有。主にプレゼンターが話す

・その他
(9)リチャージ:仕事から隔絶し、チャージや心身の切り替えを行う
(10)専門作業:特別な設備を必要とする専門的な業務

出典:ITOKI TOKYO XORK 

 10種の活動に合わせて、例えば(1)の高集中ならオフィスの個室スペース、(6)のアイデア出しならオープンスペースといったように、従業員が自ら「もっとも活動に適した場」を選んで、移動しながら業務を行っていくのです。

 フリーアドレスが会社で働くことを前提とした考え方であるのに対し、ABWは、出社しないことを含んだ概念であるところが特徴です。また、単に固定の自席デスクがないというだけでなく、そもそも「執務用のデスクで仕事をする必要すらない」「仕事はデスクでするものであるという固定概念を捨てる」という発想が土台になっているところもポイントと言ってよいでしょう。

CBRE、イトーキが実践するABW、成功のポイントとは

 ABWを成功させるコツは、社内に、10種の活動を支援するような多様なスペースを用意することです。では、社内のABW環境は、具体的にどうつくっていけばよいのでしょうか。ABWの概念を採り入れてオフィスづくりをしている企業の事例を見ていきましょう。

 不動産大手のシービーアールイーは、オフィスの移転を機にABWを導入しました。導入の際に行なったのが、ワークプレイスに関する社内調査です。会議室の需給状況、在席中に行う業務の割合と集中度、個人の在席率などを調べ、ここから必要な設備やその個数を割り出していきました。調査の結果に従って、電話ブース、集中デスク、カフェスペースなどを完備。オフィスの面積を移転前より18%削減しつつ、より業務の効率が上がる環境を実現しています。

 ヴェルデホーエン社と提携しABWコンサルティングを行っているオフィス家具大手のイトーキは、ABWの活動分類に対応するかたちで、1人用、2人用など、さまざまなタイプの個室を整備しました。また、リチャージ用の部屋「MIND FITNESS」を用意。時間帯によって照明の揺らぎや色温度が変わり、仕事から離れてゆったり休息が取れるようになっています。ほかにソファが設置されたコラボレーションスペースなどもあり、10種の活動を最大限に支援するオフィスづくりを実践しています。

 社内環境を整備した上でリモートワークを併用すれば、さらに可能性が広がります。アイデア出しを社外のコワーキングスペースで行ったり、専門作業をツール類が揃った外部工房で行ったりと、場所に縛られないABWを実践することが可能になります。

従業員への教育やこまめな所在確認が欠かせない

 ABWは自由で柔軟な働き方ですが、一方で、自由であるがゆえに難しい側面も有しています。作業内容が変わるたびに席を移動しなければなりませんし、場所選びも個人で考えて決める必要があります。従業員の思考や意識が重要になるため継続して教育や動機付けが行う必要があり、ある意味ストイックな働き方と言ってよいでしょう。

 また、フリーアドレスに輪をかけて「従業員がどこにいるかわからなくなる」という問題も起こりやすいと言われています。効果的に運用するには、在席状況を常に確認・共有できるようなICTツールの導入が欠かせません。ABWに特化したソリューションはまだほとんど出ていないため、フリーアドレス用のものをうまく使ったり、ビジネスチャットと連携させるなどして、工夫をしながら採り入れることが必要です。

 乗り越えなければならない壁が多いABWですが、うまく導入できれば、フリーアドレス以上の効果が期待できます。なにより従業員の主体性、思考力、モチベーションが上がるというメリットを得ることができるのです。コロナ禍でオフィスの縮小やフリーアドレスの導入が進むと言われているこれから、ますます注目される働き方になっていくことでしょう。

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