2017.01.23 (Mon)
(第12回)
上司のこんな言動が、部下を精神的に追い込む
厚生労働省の調査によると、自殺やうつ病による経済損失額は、なんと年間2兆7千億円(2010年調査より)。失われた労働者の所得や、休業中の補填にかかった費用などを含めると、このぐらいの金額になるというのです。つまり、休職や退職によって従業員を失うことは、企業にとっても、日本社会にとっても大きな痛手なのです。
そこで今回は、企業の財産である従業員を守るために、上司が行うべきためのメンタルマネジメントについてご紹介します。
「自分も若い頃は無理をした。今の若手もできるはず」の危険
最近、部下を精神的に追い込み、休職や退職をさせてしまう「クラッシャー上司」という言葉が注目されています。クラッシャー上司には様々なパターンが存在しますが、中でも悪質なのが、多量の仕事量やノルマを部下に課し、失敗すると「なぜできないのか?」と責める“パワハラ型”の上司です。
性質の悪いことに、パワハラ型上司には自分が部下を追い込んでいる自覚がありません。上司側からすれば、「自分も昔は無理をしてでもノルマを達成してきた」「だから部下も頑張れるはずだ」と期待を込めて仕事を任せているつもりかもしれません。しかし、部下にとっては、自分のキャパシティを超える仕事量を背負わされてしまうことなり、中には、心身ともに疲れ切ってしまい、やがて仕事に手をつけられなくなるほど精神的に追い込まれてしまう人も出てくるでしょう。
こうした問題事例から見えてくることは、上司は部下のキャパシティを見誤ってはいけないということです。「やる気があればできる」といった根性論は上司にとって非常に便利なものですが、多量の負荷をかけ続ければ、仕事の質は落ち、意欲や自尊心までそがれてしまいます。
上司として、部下のメンタルを守り、彼らの労働力を最大限に活かすためには、正確な評価をもとに一人ひとりに見合った仕事量を任せること。そして、「なぜできないのか?」と責めるのではなく、「なぜできなかったのか?」を一緒に考える姿勢を持つことが重要です。
いつも真面目な部下が遅刻を繰り返すように
肉体的かつ精神的に厳しい状況にある部下は、その兆候が普段の生活にあらわれている場合が多いです。そのサインを見逃さないようにしましょう。
たとえば、真面目な部下が遅刻をしり、几帳面な部下が何度もミスをしているなど、普段ならあり得ないことが続いたら、それは部下が疲れているサインです。状況が悪化する前に、残業時間、仕事量、人間関係など、疲れの原因を早急に見つけ出し、改善すべきでしょう。
また、見た目の変化にも注意が必要です。部下がストレスを抱えている場合、急激に太ったり(または痩せたり)、顔色が悪くなるケースがあります。ストレスのせいで、睡眠不足や食べすぎ・飲みすぎの危険性があります。
「いつ復帰できる?」はプレッシャーに
残念ながら部下が休職することになった場合、上司として一番してはならないのは、退職を促したり、逆に「いつ復帰できるのか?」と問うことです。これらは、自尊心や判断力を失っている状態の部下に追い打ちをかける行動です。
期待を込めた復帰の相談でも、部下にとってはその気持ちがプレッシャーとなり、より追いつめてしまう恐れもあります。回復を願うのであれば、「回復した時点で復帰してくれればよい」といった大らかな態度で対応すべきでしょう。
また、復帰を待つ間、上司は他の部下に仕事のしわ寄せがいかないよう十分な配慮をする必要があります。休職する社員の負担は、別の社員が背負うことになります。部下の休職が決定したら早めに人員補充を行い、休職者や退職者の“負の連鎖”が起きないよう食い止めることが肝心です。
部下を精神的に追い込んだところで、その責任を問われるのは、管理を怠った上司本人です。最悪の事態を未然に防ぐために、まずは上司が部下の変化に敏感になることが肝心といえるでしょう。
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