ある特別な能力を持った従業員ひとりに業務が集中している会社もあるかもしれませんが、それは非常に危険な状態です。ひとりに業務を集中させると、その従業員が病欠や退職などで職務から離れることになってしまったときに、周囲でリカバーすることが非常に難しくなります。
そういったリスクを防ぐためには、チーム全体における情報共有が必要です。ビジネスを個人に集中するのではなく、チームで共有するためには、どうすれば良いのでしょうか。
権限の集中はミスや不正の温床になる危険も
ひとりの従業員が特定の仕事を抱え込んでしまうことのマイナス面は、冒頭で挙げた病欠や退職の場合だけではありません。たとえば重大なミスの発生や、不正の隠蔽を察知できない恐れがあります。複数の従業員が業務とその進捗状況を把握できれば、たとえミスや不正が起きてしまったとしても、早期に察知して対処することができます。ひとりにすべてを任せてしまっていたら、察知が遅れて取り返しのつかない事態にもなりかねません。
これは、どんなに優秀で、信頼できる人物でも同じです。会社の根幹となる業務で、特定のスタッフに大きな権限を持たせてしまうと、最初は謙虚だった人物も、次第に増長することがあります。「私がいなければ会社は回らない」という意識が悪い方に膨らんでしまうと、上司や社長の指示に従わず、業務の改善や見直しに抵抗するといったトラブルも起きかねません。
困ったらITに頼るべし
ひとりに特定の業務を集中させることで発生するリスクを回避するには、繰り返しになりますが、複数のスタッフでの情報共有が有効です。
とはいっても、「人手が足りない」「みんな自分の仕事で精一杯で、担当業務を増やしたらパンクしてしまう」というような状況に陥っている企業の場合、情報共有が重要であると頭でわかっていても、結局解決できないことも多々あります。
業務がいっぱいで、情報を共有する余裕がない場合は、ITの力を借りるのが一番です。近年は、情報共有のための便利なシステムが多数登場しています。
たとえば、チームで情報を共有するソフトウェアであるグループウェアや、業務の手順がわかるマニュアル、業務の進捗がわかるスケジュール管理表・工程管理表、顧客名簿と個々の契約状況、顧客情報といった情報も、チームのメンバーと共有できるようになります。
オンラインで情報を共有すれば、メンバーが不在でも安心
こうしたシステムやソフトウェアにはクラウドサービスも含め、さまざまなものがあります。たとえば「Google Drive」や「チャットワーク」といった無料のサービスであれば、特に予算を確保することもなく、インターネット環境があれば今すぐに導入できます。
「Google Drive」は、Googleによるオンラインストレージサービスです。文書作成や表計算のようなソフトも無料で使用でき、作成したファイルをメンバー間で共有できます。容量は15GBまで無料となっています。
「チャットワーク」は、ビジネスに特化したチャットツールです。複数の人が参加できるWEB会議室(グループチャット)、タスク管理機能、音声通話やビデオ通話など、豊富なコミュニケーション機能を備えています。
有料のサービスであれば、より高度なサービスが利用できます。有名なものとしては、サイボウズの「サイボウズOffice」、日本マイクロソフトの「Office 365」、日本IBMの「Notes」などがあります。
「サイボウズOffice」は、メールやファイル共有などの基本的な機能に加えて、スケジュール管理、電話メモ、掲示板、会議室の予約管理、ワークフローの提示などもできるグループウェアです。わざわざ顔を合わせなくても、個別の連絡や打ち合わせが、サイボウズ上でできます。
「Office 365」は、Officeソフトとグループウェアを同時に利用できるサービスです。メール、スケジュール管理機能、WEB会議システムなどが付属しています。パッケージ版のOfficeと比べると、常に最新のバージョンが利用できる点がメリットといえるでしょう。
「Notes」は、メール、カレンダー、掲示板などの情報共有機能を備えた、グループウェアの元祖とも言えるサービスです。拡張性とカスタム性が高いため、それぞれの企業に合った機能を付け加えて最適化できる点が特徴です。
企業活動はチームワークの結晶とも言えます。メンバー1人ひとりがいざという場合に迅速にフォローしあえるように、前述したITのツールを使って、仕事のノウハウ、取引先の情報、請け負っている案件と進捗状況などを、部署やチーム全体で共有しておくことが大事です。
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