新卒学生の採用活動を行っている企業には、既に内定者の選出を終えているところもあるかもしれません。しかし、新卒採用はここ数年「売り手市場」と言われており、たとえ内定を出しても、安心することはできません。優秀な学生は複数社から内定をもらうので、後日辞退者が出てくるからです。
今年の新卒採用では、採用選考の開始日が8月1日から6月1日へと2カ月前倒しされました。企業側の選考期間は長くなりましたが、その一方で、学生側が企業を研究する期間も短くなりました。
才能や意欲のある学生を採用できるよう、早め早めに人材の確保を図る企業もあるでしょうが、優秀な学生は複数の企業から勝ち取った内定を比較検討してから決めるため、決して素早いアプローチが正解とは限りません。
それでは、「内定辞退」を減らすために、企業ができる対策とは何なのでしょうか? 今回はその対策を考えてみましょう。
内定後にどうやってフォローすれば良いか?
内定辞退者を出さないためには、内定者のフォローが不可欠です。一般的には、内定式や懇親会を開き、内定者の囲い込みを図るというのが手段のひとつですが、それでも内定辞退は出てきてしまうものです。
そんななか、効果の高いフォローを行っている企業もあるようです。たとえばある大手製造会社では、内定者に次年度の採用活動を手伝ってもらうとのこと。内定者は10回ほどある企業説明会などの採用イベントに、最低1回はスタッフとして参加します。就活生から憧れのまなざしを向けられ、質問を受けることで、入社の意思が固まるようです。この企業では、他社へ流れる学生が少なくなったといいます。
また、某中堅食品メーカーでは、内定者のフォローを新入社員に任せています。新人には先輩意識を、内定者には身内意識をそれぞれ持たせることができる、一石二鳥の手法です。たとえばバーベキュー大会を行うことで、内定者は身近な先輩からリアルな情報を得ることができ、働く覚悟が生まれているといいます。
内定を複数社からもらった学生が1社を選ぶポイントとは
人事をテーマとしたポータルサイトのHR総研が行った調査によると、複数社から内定をもらった新卒学生が最終的に1社を選ぶときには、「社員の印象」が判断基準の1つになっているとのことです。
たとえば「印象のよい社員が多い」という回答が多かった企業では、新卒社員は「親身に相談にのってくれた」「丁寧で誠意のある対応を受けた」「社員間のコミュニケーションが良かった」といった経験をしており、就活中や内定後のコミュニケーションで良い印象を抱いているようです。
一方、印象の良くない企業の社員の特徴は「上から目線で高圧的」「マニュアル的、流れ作業のよう」など、新卒学生でなくても嫌悪感を抱いてしまいそうなものが挙げられていました。
内定辞退を減らすには、今働いている社員の満足度を上げよう
ここまでの内容を踏まえると、内定辞退者を出さないためには、「積極的に自社の活動に関わらせること」と「その活動の中で、社員とコミュニケーションを取る場を設けること」の2点が重要と言えるでしょう。
そのためには、今働いている社員が会社を好きであることが不可欠です。すでに述べた通り、既存の社員の存在は、新卒学生に大きな影響力を持ちます。自分の会社に対して誇りを持って働いているという社員が多い会社は、学生にとって魅力的に映り、内定辞退も減ることでしょう。
内定辞退の対策というと、内定者ばかりに目がいきがちですが、今いる社員の満足度を上げることが、結果的に良い結果に繋がるかもしれません。
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