厚生労働省は、優れた取り組みを行う企業に対し、さまざまな「認定マーク」を付与する制度を実施しています。中には、対象が中小企業に限定されたものもあります。そのひとつが「ユースエール認定制度」です。
ユースエール認定制度とは、若者(youth)を応援(yell)する中小企業に対して、厚生労働省が認定マークの使用を許可するという制度です。あまり有名な制度ではありませんが、活用次第で中小企業のビジネスに貢献します。
本記事では、このユースエール認定制度ついて紹介していきます。
離職率や時間外労働の条件をクリアしているか?
ユースエール認定制度は、厚生労働省が「青少年の雇用の促進等に関する法律」に基づいて、2015年に始めた制度です。認定を受けた企業は、自社の製品や広告にマークを表示するなど、さまざまなメリットがもたらされます。同省では本制度の狙いについて、企業の情報発信を後押しすることで、企業が求める人材の円滑な採用を支援し、若者とのマッチング向上を図るとしています。
認定を受けるためには、下記のような要件を満たす必要があります(一部抜粋)。
・直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下
・前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下または週労働時間60時間以上の正社員割合が5%以下
・前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上
・直近3事業年度で、男性労働者の育児休業等取得者が1人以上または女性労働者の育児休業等取得率が75%以上
・「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
数字だけを見ると、難しい要件にも見えますが、「男性の育休取得者が“1人”以上」など、基本的には中小企業に合わせた設定になっています。離職率や時間外労働、育休制度などは、どれも若者層が就職や転職活動で気になるポイントでもあり、適切な雇用管理のためには達成しておきたい基準です。
助成金や低利融資利用のメリットも
ユースエールの認定を受けた企業のメリットは、認定マークを使用できるだけではありません。それ以外にも、いくつかのメリットがあります。厚生労働省は、マークの使用を含む6つのメリットを挙げています。
1.ハローワーク等で重点的なPRの実施
2.認定企業限定の就職面接会への参加
3.自社製品・広告へのユースエールマーク(認定マーク)の使用が可能
4.若者の採用・育成のため助成金を加算
5.日本政策金融公庫による低利融資の利用
6.公共調達における加点評価
(公共事業で入札額以外の項目を評価する際、認定企業は加点評価を受けられる)
このように認定企業は、ユースエールマークが使えるだけでなく、資金面でも優遇措置が約束されています。ちなみに、上記のうち最後の2点は、2016年度から新たに加わったメリットとなります。
なぜ「中小企業限定」の制度なのか
このユースエール認定制度は、あくまでも「中小企業」に限定されたものです。これには、ユースエールの目的である「若い求職者と優良中小企業のマッチング」が大きく影響しています。
中小企業は、広範的に自社の宣伝を行える大企業と比べると、優秀な人材を集める点において不利です。たとえ、労働環境が充実した中小企業があったとしても、それをプロモーションするための資金が足りず、周知のための機会も少ない、といったケースもあるでしょう。
ユースエール認定制度は、大企業への人材一極集中を緩和するために、中小企業が優良中小企業であることをわかりやすく示すための制度となります。ユースエール認定制度は、より良い企業に就職したい若者層と、新卒採用等で大企業よりも不利な優良中小企業のために考えられた制度なのです。
厚生労働省によると、認定を受けている企業は2016年12月31日現在で147社です。まだそれほど多くはないものの、認定された企業は、就活サイトにて自社が認定を受けたことをアピールするなど、人材を集めるための“武器”として活用しています。
同制度は、厚生労働省で公開されている必要書類を添付し、各都道府県の労働局に提出することで申請できます。中小企業であることの利点を生かして、ユースエール認定制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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