2024.08.08 (Thu)
いま企業に求められる情報セキュリティ対策(第24回)
詐欺トレンド、ライブ配信を狙ったフィッシング詐欺にご注意
音楽やスポーツなど、ライブ配信が当たり前になりつつある今、ファンを狙ったフィッシング詐欺が発生しているようです。どうすれば防げるのか、その手口とともに紹介します。
ライブ配信のユーザーを狙った詐欺が発生している
2020年から始まったコロナ禍では、感染拡大防止のため、多くの人が一堂に会する大規模なイベントが中止されるなど、我々の生活にさまざまな制限が加えられました。その一方で、「ライブ配信」「オンライン配信」など、会場に足を運ばず、画面上の映像と音声だけでイベントを楽しむ市場が拡大しました。
財務省が2022年11月に発表した「ライブエンタメ市場の現状と今後の展望」という資料によると、オンライン配信のライブエンタメ市場の規模は、2020年は448億円、2021年には512億円に増加しています。同資料では、「コロナの感染拡大を契機として、それまでほとんどなかった有料型のオンライン配信という形態が定着」「鑑賞する場所が限定されず、価格設定も低いという手軽さから、市場規模も拡大傾向にある」としています。
しかし、ライブ配信が定着した今、ライブ配信を利用するユーザーを狙った詐欺の手口も登場しているようです。
SNS上の「公式ライブ配信」「無料生放送」にご用心
音楽コンサートツアーを主催する興行者で構成される「一般社団法人コンサートプロモーターズ協会」は、2023年6月に、「音楽ファン・舞台芸術ファンを狙う偽サイト・偽SNSアカウントにご注意下さい!」という警告ページを公開しました。
同ページによると、ライブ配信やグッズ販売になりすました偽のWebサイトやSNSアカウントから、不審なサイトに誘導されたり、個人情報が不正に取得される事例が増えているといいます。このような偽サイト、偽SNSアカウントに情報を取得された場合、クレジットカードの不正利用被害やSNSアカウント乗っ取りのようなサイバー犯罪に遭ってしまう可能性があるといいます。
具体的な例としては、たとえばSNS上で「公式ライブ配信」「無料生放送」といった投稿のURLをクリックした場合、「ログインが必要です!」「アカウントを作成してください!」といったメッセージが表示されるといいます。しかし、こうしたサイトは情報の窃取を目的としたフィッシングサイトであり、誤ってメールアドレスやクレジットカードを入力すると、それらの情報が盗み取られる恐れがあります。
「音楽ファン・舞台芸術ファンを狙う偽サイト・偽SNSアカウントにご注意下さい!」のページにて公開されている詐欺の手口
アーティスト側も詐欺に対する警告を発信している
こうした偽サイトや偽アカウントに対する警告は、アーティスト側からも発信されています。
たとえばシンガーソングライターの米津玄師さんのサイトでは、SNSにてツアーのライブ配信を謳った悪質なスパム投稿が発表されたと発表。同ツアーではそもそも公式の生配信を行っておらず、かつ会場内の録音やライブストリーミングを禁止しているため、それらのスパムサイトに絶対にアクセスしないよう呼びかけています。
さらに2024年2月には、ロックバンド「L'Arc~en~Ciel」(ラルクアンシエル)のサイトでも、偽にライブ生配信、生中継を騙るフィッシングサイトの注意喚起が発表されました。同6月には、ロックバンド「GLAY」(グレイ)のサイトにも、同様の注意勧告が掲載されました。
なお、ここで挙げた例はいずれも音楽のライブですが、警視庁のサイトによると、スポーツイベントのライブ配信でも、同様の詐欺事件が発生しているようです。過去に行われたゴルフのメジャートーナメント大会や日本で開催されたラグビーの世界大会でも、無料のライブ配信を装ったフィッシングサイトが確認されたといいます。
ファンなら雑な売り文句を見抜くことは可能!
ライブ配信を騙った詐欺に引っかからないためには、どうすれば良いのでしょうか?
先に挙げたコンサートプロモーターズ協会のサイトでは、まずはアーティストや公演の公式サイトで、正確な情報を確認することを呼びかけています。
たとえば米津玄師さんの例でいえば、前述の通り、そもそも生ライブ配信を公式に行っていないことがオフィシャルサイトにて発表されています。SNS上に「米津玄師のライブの生配信はこちら」というリンクがあったとしても、公式サイトをチェックすることで、すぐに詐欺であることが見抜けるでしょう。
L'Arc~en~Cielの場合、ファンクラブ会員限定でライブを生中継しているものの、一部の映画館のみで放映されているため、インターネットでの生配信は行われていません。こうした知識を頭に入れておけば、「ラルクの生配信が今なら無料!」といったような雑な詐欺の売り文句に騙されることはないでしょう。
ファンであれば、好きなアーティストの貴重な映像を見たいと思うのは当然のことですが、詐欺師はそのファン心理を狙って罠を仕掛けてきます。とはいえファンであれば、罠の仕掛けの“甘さ”に気付くことも、そう難しい話ではないでしょう。安易な詐欺に引っかからないことも、「押し活」のひとつといえるかもしれません。
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