いま企業に求められる情報セキュリティ対策(第35回)

増え続けるID・パスワードをまとめて管理「IDaaS」の魅力とは

 クラウドサービスのログインに使用されるIDやパスワードを、クラウド上で管理する「IDaaS」(Identity as a Service)の市場が成長しています。なぜIDaaSは、ビジネスシーンで求められているのでしょうか?

クラウドのID・パスワードを管理する「IDaaS」の市場が伸びている

 ビジネスの現場において、生産性の改善や事業成長のために複数のクラウドサービスを利用することは今や当たり前になりつつあります。企業によっては、多数のクラウドサービスを契約しているケースもあるかもしれません。

 しかし、利用するクラウドサービスが増えるということは、サービスにログインするために必要なIDとパスワードの管理の手間も増えることになります。言い換えれば、クラウドサービスの数だけIDやパスワードが存在することになります。

 こうしたIDやパスワード管理を、クラウド上で効率化するサービスが「IDaaS(Identity as a Service)」であり需要が高まっています。

 IDaaSの市場は、企業のクラウド活用の広がりを受けて急成長しています。ある企業の調査によると、IDaaSがID管理市場全体に占める金額は、2022年度に約1,000億円だったのものが、2023年度は約3割増の1,300億円、2024年度も同じく約3割増の1,650億円へと、年々成長しているとされています。

IDaaSでID・パスワードを管理することは、セキュリティ強化につながる

 IDaaSの導入が進んでいる大きな要因としては、セキュリティ対策が挙げられます。

 クラウドサービスが普及するということは、ログインの際に入力するIDやパスワードが外部に流出する機会も増えることになります。この流出したIDやパスワードを使った不正アクセスによる情報漏えいなどのセキュリティ事故は数多く発生しています。クラウドを正しく利用するためには『ログイン』という個人の認証部分において、高いセキュリティ強度が求められます。

 IDaaSであれば、ID/パスワードがクラウドで管理されるため、流出リスクを低減することが期待できます。アクセス制御も行えるため、不審なアクセスを拒絶することも可能です。また、シングルサインオンや多要素認証の機能を使うことができるため、セキュリティ強化につながります。

 そもそも、IDやパスワード管理を個人で行うことは困難です。

 冒頭でも触れたように、IDやパスワードは、クラウドサービスごとに存在します。複数のサイトで同じID・パスワードを使い回すことはセキュリティの観点からはNGですが、かといってユーザー個人が各クラウドサービスのID・パスワードを記憶することは、実務的な難易度も上がります。利用するクラウドサービスが増えれば増えるほど、ID・パスワードの管理という稼働も比例して増えていきます。

 IDaaSでアカウント管理を一元化すれば、こうしたID・パスワードの管理の手間をIDaaSに任せることができるため、日々の業務負担を軽減することが可能になります。

IDaaSはIT担当者の業務負担を軽減する

 先の段落で触れたように、IDaaSは複数のクラウドサービスのID・パスワードを管理できる点が基本機能です。しかし、それ以外にも備えられたさまざまな機能を活用することでビジネスにおける利便性とセキュリティレベルを高めることができます。

 IDaaSの機能は、提供するベンダーによって詳細は異なりますが、おおむね以下のような機能が含まれています。

1. IDの一元管理:複数のサービスやシステムにおけるユーザー情報を一元的に管理し、アカウント作成・変更・削除などのライフサイクル全体を効率化します。

2. 認証:認証方法を管理します。パスワード認証だけでなく、ワンタイムパスワード、指紋や顔認証などの生体認証、その他複数の認証方法を組み合わせた多要素認証にも対応します。

3. シングルサインオン(SSO):ユーザーが1回の認証プロセスを踏むだけで、複数のアプリケーションやサービスに自動的にログインできる機能です。

4. アクセス制御:ユーザーの役割や属性に基づき、システムやデータへのアクセス権限を細かく設定・管理する機能です。

5. ID連携(フェデレーション):異なる組織や環境間でIDを安全に連携させ、互いのシステムやサービスを利用可能にする機能です。

6. 監査・レポート機能:誰が、いつ、どのシステムに、どのようにアクセスしたかを詳細に記録し、包括的なレポートを生成します。

 特に多要素認証やSSOは、不正アクセスの防止に効果的です。SSOはユーザーがシステムごとに異なるパスワードを覚える必要がないため、ユーザーのログイン作業が簡素化し、業務効率化につながるというメリットもあります。

 IDaaSはユーザーだけでなく、IT担当者の運用負荷の軽減にも役立ちます。たとえば従業員の入社・退職に伴うクラウドサービスのアカウント発行・無効化といった業務にIDaaSを導入すれば、煩雑になりがちなアカウント管理や設定作業を効率化することができます。

 離職した従業員のID・パスワードが消えておらず、システムにアクセスできる状態のまま放置していることで、重大なセキュリティ事故が発生したケースは度々発生しています。しかし、IDaaSを活用し素早く処理を行うことで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減することができます。

 IDaaSは人間のユーザー以外にも、ボットアカウントによる自動処理やシステム間のAPI連携、IoTデバイスによるシステム制御で利用できる点も特徴です。認証キーの管理や、システムが適切に通信しているかを管理・制御する必要もありますが、IDaaSにはそのためのアクセス管理機能も備わっています。

オファリングサービスにIDaaS機能が含まれていることもある

 IDaaSは、単体で導入することも可能ですが、ITベンダーが提供するオファリングサービス(パッケージサービス)に含まれていることもあります。

 たとえばNTT東日本の「BizDriveゼロトラストセキュリティ」というセキュリティサービスにも、IDaaSが含まれています。同サービスを導入することで、ゼロトラスト環境構築の一環としてIDaaSを導入できます。

 クラウドサービスの利用に欠かせないID・パスワードは、機密情報を守るための重要な「鍵」ですが、サービスの数だけ存在するID・パスワードを、人間の手で管理するのは簡単なことではありません。

 IDaaSを利用すれば、大量のID・パスワードを管理し、セキュリティと利便性を両立することが可能です。まだ未導入の企業は、検討してみてはいかがでしょうか。

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