2024.05.22 (Wed)
いま企業に求められる情報セキュリティ対策(第19回)
返金されない?オンラインゲームの無断課金にご注意
スマホのオンラインゲームで、子どもが親に無断で「課金」をするトラブルが頻発しています。スマホが普及した今、どうやって防ぐのが良いのでしょうか?
「無料」を謳うオンラインゲームは、実は無料ではない!?
スマートフォンで、オンラインゲームをしている人は多いでしょう。中にはゲーム内でお金を支払う「課金」をしている人も多いかもしれません。
オンラインゲームの多くは、基本プレイは無料です。しかし、ゲーム内で課金することで、無料プレイでは得られないキャラクターや、ゲーム内における特別なスキル、オリジナルのコスチュームなど、無料プレイでは得られないアイテムを入手することが可能になります。
たとえばサッカーゲームであれば、すでに引退した往年の名選手がゲーム中に登場することがありますが、この選手をユーザーがプレイするためには、ゲーム内で課金を行い、ゲーム用のポイントを貯め、そのポイントを使って何度もくじを引き、当たりを引く必要があります。
このようなオンラインゲームに課金することは、俗に「課金ガチャ(もしくはガチャ課金)」と呼ばれます。ゲームメーカーの側から見れば、ユーザーが何度も課金ガチャをすることで、ゲームの基本プレイが無料であっても、最終的には収益を得ることが可能になります。しかしユーザー側からすれば、目当てのアイテムが出るまで、何度も課金しなければいけないことになり、結果的に無料どころか、相当な額を支払うことになるケースも起こり得ます。
子供が親のスマホで課金するトラブルが増えている
特に最近では、子供が課金することでトラブルになるケースが増えているようです。
総務省のサイト「国民のためのサイバーセキュリティサイト」では、子供が親のパソコンやスマートフォンを使ってオンラインゲームをプレイし、無料だと勘違いして有料のアイテムを購入し、後になって高額な料金が請求される事例が発生しているとしています。
国民生活センターでも同様の警告が2024年3月に発表されています。同センターには子供が無断でオンラインゲームに課金したという保護者からの相談が多く寄せられており、2022年度の相談件数は4,024件で、契約購入金額は平均約33万円といいます。
国民生活センターのホームページでは、実際の相談事例が掲載されています。例として多く見られるのが、親のスマホを子供に貸し、そのスマホに登録されていたクレジットカードでゲームに課金をするというケースです。中には端末に親の指紋認証が必要な設定を加えていたものの、アカウントにログインした状態であったため、子供が自分の指紋を追加登録できたケースもあったといいます。
端末は「ペアレンタルコントロール」で管理できる
子供の課金トラブルは、どのように防げば良いのでしょうか? 国民生活センターでは、保護者のスマホを子供に渡す場合は、保護者自身のアカウントを必ずログオフすることや、保護者の古いスマホや子ども専用のスマホを使う際は、子ども専用のアカウントを作成し、「ペアレンタルコントロール機能」(子供が使う端末の機能を制限する機能)を利用して保護者が管理すべきとしています。
クレジットカードの保管場所にも注意が必要です。一般社団法人 日本オンラインゲーム協会によると、「ゲームアプリのアイテムを購入するために、子供が無断で親の財布からクレジットカードを持ち出して利用した」という報告が寄せられているといいます。
こうした事態を避けるため、国民生活センターではクレジットカードの保管場所に注意し、子どものスマホにクレジットカード情報を入力した際は、端末から入力データを削除することを呼びかけています。
子供の課金は返金される?されない?
もし子供が勝手に課金をした場合、その支払い額を返金することもできるようです。
国民生活センターによれば、民法では未成年者が保護者の同意なく契約した場合、その契約を取り消すことができるとしています。プラットフォーム事業者やゲーム会社に対し、未成年者による課金だということを申し出ることで、額が戻ってくるケースもあるようです。
ただし、子供が保護者のアカウントでログインし、その状態で課金をした場合は、アカウントの所有者である保護者が決済を行ったとみなされ、契約が取り消せない場合もあるといいます。
日本オンラインゲーム協会でも、「カードの名義人ではない子供がクレジットカードを利用した場合、クレジットカード会社からカードの名義人に対して管理責任を問われる」としており、たとえ子供が使ったとしても返金されないケースもあるようです。返金されるか否かは、ケースバイケースといえそうです。
スマホが当たり前になった今、子供がスマートフォンでゲームをすることも当たり前になりつつありますが、子供による意図しない課金は、決して当たり前にしてはいけません。今回紹介したサイトに掲載されているさまざまな対策を取ることで、未然に発生を防ぐことが何よりも重要でしょう。
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