取引先と契約において「押印された紙の契約書でないと受け付けない」という企業はまだ多くあります。しかし、現在は法改正され、契約書を紙で保管することは必須ではなくなっています。本記事では、紙書類での契約業務を見直すことで業務効率化やコスト削減につながる「電子契約」について解説します。
電子契約には、なぜ法的効力があるのか?
電子契約とは、紙に押印・サインをする従来の契約書に替わり、オンライン上の電子書類で交わす契約のことです。
電子契約は、本人性と非改ざん性を証明するための情報が組み込まれた電子署名を施すことによって、従来の契約書と同等の法的効力が得られます。2001年に施行された「電子署名法(第三条)」では、「電磁的記録に記録された情報について本人による一定の電子署名がなされているときは、真正に成立したものと推定する旨の規定を設ける」と定められています。
しかし、電子署名だけでは、いつ作成されたものかを証明できません。そのためタイムスタンプを付与し、作成時刻の信用性を担保することが一般的です。作成時刻の担保については、ワードやAcrobatなどのアプリケーションを使い、自分で電子署名を施して送付・保管することも可能ですが、電子書類をクラウド上で一括管理できるサービスも数多くリリースされています。
数千万のコスト削減ができた企業も
電子契約のメリットは、大きく3つ挙げられます。
1つめは、「業務効率化」です。従来の契約書では印刷、押印、製本、郵送などで契約業務の完了までに数日~数週間程度かかっていましたが、電子契約では双方の合意があれば数分以内に短縮することができます。契約内容に変更が生じた際も、再印刷・再送の手間が省けます。テレワークで課題となっている「押印のための出社」もなくすことができます。
2つめは、「経費の削減」です。電子契約を導入することでペーパーレス化による印刷費の削減だけでなく、郵送費や印紙代などを抑えられます。
不動産業を手掛けるタマホーム株式会社は、施工時に交わす工事請負契約を、2018年時点で電子契約書へ移行しています。高価な印紙代が不要となったことで、年間8000~9000万円のコスト削減につながったと発表しています。
飲料メーカー大手のサントリーホールディングス株式会社は、契約書や請求書など押印が必要な書類について、今年6月より順次電子化を進めていく方針を発表しました。これにより、年間およそ3000万円のコストだけでなく、6万時間もの作業時間を削減できるとしています。
ただし、すべての契約書で電子化が可能なわけではありません。定期借地権設定契約(借地借家法22条)や、農地の賃貸借契約(農地法第21条)など、法律上、書面でのやり取りが契約成立の条件とされているものも一部存在しています。自社が行う契約が電子化可能か分からない場合は、顧問弁護士や中小企業向けの無料法律相談窓口など、専門家に相談するとよいでしょう。
電子契約は、メリットの多い“働き方改革”
電子契約へ移行するにはどうしたらよいのでしょうか?まず、電子署名やタイムスタンプといった「セキュリティ機能」が搭載されている電子契約システムの検討です。その際、複数のサービスを比較して、自社の業務フローにスムーズに取り込めるシステムを探すこと大切です。無料プランを提供しているサービスもありますので、さまざまなサービスを試してみるのが良いでしょう。
取引先への理解を得ることも不可欠です。取引先と同じサービスを利用しなければならない電子契約サービスも存在します。取引先の負担を極力抑えるサービスを選びましょう。
一般財団法⼈⽇本情報経済社会推進協会と株式会社アイ・ティ・アールが2020年1月に行った調査によると、電子契約サービスを導入している国内企業はおよそ4割と、年々その数を増やしています。インターネット関連事業を手掛けるGMOインターネットグループや、大手検索エンジン「Yahoo!」を運営するヤフー株式会社など、新型コロナウイルスの影響を受けて電子契約へ移行する方針を固めた企業もあります。
電子契約がビジネスシーンにより浸透していくことで、社内や取引先の理解も得られやすくなっていくはずです。業務効率化とコスト削減を同時にできる電子契約への移行は、社内外で多くのメリットがある“働き方改革”といえるでしょう。
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