2022.11.15 (Tue)

その悩み、スマートファクトリー化が解決します(第15回)

省エネ施策の第一歩はIoTを使った「消費電力の見える化」

 脱炭素化社会の実現やSDGsへの意識の高まりなど、世界中で環境問題・省エネルギーへの取り組みが求められています。この課題に取り組むことは、企業のCSR活動としても重要で、ブランドイメージの向上も期待できるようになります。環境問題の一環である省エネについては、AI・IoTによるデータ収集・分析をもとに、エネルギーを効率的に利用する動きが加速しています、ここでは、省エネ施策の一つである「使用電力をいかにコントロールするか」について解説します。

環境配慮の取り組みがビジネスの命運を握る

 近年、脱炭素化社会の実現やSDGsの推進など、持続可能な社会をめざす動きが世界的な潮流となっています。こういった環境への取り組みは、コストがかかるため負担に感じる企業も少なくないはずです。しかし、環境問題に取り組むことで得られるメリットは決して少なくありません。

 例えば、SDGsの推進は、CSR活動として非常に重要な意味を持ちます。社会に対してきちんと責任を果たす企業として認識されるため、イメージアップやブランディングに効果的です。そして、高いブランドイメージをもつ企業には、おのずと優秀な人材が集まります。

 企業がCSR活動を行うことで、ステークホルダーとの関係性も良好になります。例を挙げると、最近は投資家の間でESG(環境、社会、ガバナンス)要素を反映した投資が注目されているため、資金調達という観点からも有利に働くでしょう。逆に、これらをおろそかにすれば、取り組むべき社会課題に無関心な企業であると見なされ、サプライチェーンから外されたり、ステークホルダーからの支援を受けられなくなるリスクが生じます。

 実際、企業での環境意識は高まっています。環境省の調査によれば、環境配慮経営について「企業の社会的責任の一つである」と位置づけている企業は58.2%と最も多く、次いで「重要なビジネス戦略の一つである」が19.8%となっています。また、環境配慮経営を実施するうえで重視する事項としては、「ステークホルダーへの対応」と答える企業が55.9%となり、「環境と経営の戦略的統合」が53.8%と続いています。 

出典:環境に配慮した取組に関する調査結果 令和元年度 環境にやさしい企業行動調査

 このように環境への取り組みは、もはや企業責任になりつつあります。それを実現するための手段として、AI・IoTを活用した電力などのエネルギーの効率的な利用、省エネ設備や脱炭素化への投資は、今後の企業トレンドになっていくでしょう。

製造業の省エネ施策は「消費電力の見える化」から

 企業ができる環境への取り組みの第一歩が、省エネです。工場など生産設備を擁する製造業は他業種よりエネルギー消費が多く、日本のエネルギー消費の約7割は製造業が消費しています。製造業で行う省エネの施策は、他業種と比べて業績や環境への影響度が大きいと言えるでしょう。

 企業が実施する省エネ施策は、「設備改善」と「運用改善」に大別できます。設備改善とは、社内の照明や空調、生産機械といった機器や設備に対して行う施策です。具体的には、既存の設備を修理してエネルギー効率を改善したり、より省エネ性能の高い設備に取り替えてエネルギー効率を高めたりといった、設備関連の改善行動が挙げられます。これに対して運用改善は、電気の消し忘れの防止や設備の運用方法の見直しなど、エネルギーの使い方自体を工夫することです。

 これらの施策において成果を上げるためには、「消費電力の見える化」が重要です。具体的な消費電力がわからなければ課題を洗い出せず、改善策を検討することができないからです。しかし、多くの企業でリアルタイムな消費電力の可視化はできていないのが現状です。

 例えば、ある月の消費電力が前年同月と比較して大幅に上がってしまったとしましょう。紙の請求書などを確認して、原因を推測することはできるかもしれませんが、根拠となるデータがなければ確証を得ることはできません。省エネ対策を行いたいのであれば、「いつ」「どこで」「何が」の3つを把握する必要があります。つまり、IoTによる消費電力の見える化が、省エネ施策を始めるうえでの第一歩になるのです。

IoTデータと外部データの組み合わせで効果的な省エネ施策を

 内部の改善点を特定するだけでは、省エネ施策としては不十分と言わざるを得ません。IoTによって得られたデータだけなく、季節や気温などの外部状況を加味して比較しなければ、適切な施策を行うことはできないのです。

消費電力を可視化し、天候などの外部状況と合わせて比較することで問題点を特定する

 工場内の電力使用状況に加えて、外部の気候データをリアルタイムに把握し、自社の過去データや類似施設を比較することで、問題点をより客観的に判別することが必要になってきます。もし適正でないと判断された場合は、「電力使用料量が○kw上昇しています。時間外保守作業などを行っていますか?」「通常時よりも消費電力が高くなっています。今月の電気代は○万円増加する見込みです」といった具合に、従業員に対して電力使用への注意喚起を行ったり、電力利用料の変化を通知したりといったアクションを起こすことが可能になります。

 浮かび上がった問題点をもとに仮説を立て、解決策を検討・実行して新たな課題を見いだす、すなわち「省エネのPDCAサイクル」を繰り返していくことで、現場の改善が進み、ひいては従業員の省エネに対する意識を高めることができるでしょう。そのためにIoTを大いに活用して、根拠となるデータを正確に収集することが、今後ますます求められるはずです。

 近年、消費電力の見える化をサポートするサービスが登場してきています。なかには、製造機械やユーティリティ設備にセンサーを追加するだけで、取得したデータをパソコンやスマートフォンからいつでも確認できるものもあります。

 今から省エネ施策を実践しようとしている企業は、こうしたIoT設備の導入を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。こうしたIoTセンサーを設置するためには、無線化を含むネットワーク環境の整備が必要ですが、ネットワークの整備は工場のデジタル化にもつながるため、検討の価値は十分にありそうです。

ネットワークインフラの強化で実現する製造業の「スマートファクトリー化」ガイド

これからの製造業には、IoT機器の導入をはじめ。ネットワーク環境を適切に整えることの重要性が高くなると思われています。本資料では、デバイス数の増加やアップロードするデータ量の増加に対応できるネットワーク環境を構築するための検討のポイントと、実際の導入事例について紹介いたします。



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