2022.11.15 (Tue)
その悩み、スマートファクトリー化が解決します(第13回)
製造現場の外国人受け入れはICTツール導入がカギ
国内の製造業では、多くの企業で人手不足を解消するために、外国人労働者の採用が広がっています。若い労働者を短期間で確保できるなど多くのメリットがありますが、企業側、従業員側ともに頭を悩ませるのが「言葉の壁」です。これを解消するためにどのような対策を講じるべきなのか、ICTツールの活用を交えながら解説します。
人手不足の切り札となり得る外国人労働者の受け入れ
業界を問わず日本の多くの企業、特に中小企業で人手不足が深刻化しています。その背景としては、少子高齢化はもちろんのこと、若者の大企業志向や高い離職率などが挙げられます。こうした人手不足をカバーするため、外国人労働者を採用しようとする中小企業は少なくありません。
製造業においても人手不足の課題は同様です。経済産業省の「2022年版ものづくり白書」でも、製造業の就業者数は、2002年からの20年間で157万人減少しており、それと相反するように外国人労働者の受け入れは右肩上がりで増えています。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「外国人労働者の雇用状況に関する分析」によると、2019年の外国人労働者の産業構成は、製造業は29.2%と全産業のうち約3割を占めています。
製造業での外国人労働者受け入れには、いくつもメリットがあります。ひとつは「若い労働者の確保」です。製造業に従事する人が減っているのは先述のとおりですが、中でも若年層の就業者数は、ものづくり白書によると20年間で121万人減少しており、非常に深刻と言えます。国内の人材を確保しようとしても、そもそも製造業に就きたい若者の絶対数が減少しているため、採用の難易度は上がっています。
ふたつ目のメリットとしては「短期間で多くの人材を募集できる」という点が挙げられます。外国人を採用する企業は増加傾向にあるとは言え、まだまだ日本人向けの求人がほとんどです。日本での就職をめざしている外国人労働者にとって、就職はハードルが低くなったわけではなく、まだ企業側の「買い手市場」とも言えます。つまり、もし企業側が求めれば、多くの人材を確保しやすい状況にあります。
その他のメリットとしては「労働意欲の高い人材確保が可能である」という点も挙げられるでしょう。日本語を学んでまで働きたい意志があるということは、相対的に優秀でバイタリティーあふれる人材が多いという考え方もあります。
受け入れにあたって乗り越えるべき「言語の壁」
もっとも、外国人労働者の受け入れは簡単でないことも事実です。特に「日本語による労働条件のすり合わせ」や「日本語による指導」について悩んでいる企業も見られます。
日本政府は2007年に「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を示し、「外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるようにするため、必要な日本語および基本的な合図等を習得させるよう努めること」「事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示等について、図解等の方法を用いる等、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うよう努めること」など、外国人労働者への安全な職場環境を実現するための教育を徹底するよう呼びかけています。
これを受けて、母国語別のマニュアルの作成などに取り組むケースもありますが、全ての企業が対応することはなかなか難しいでしょう。来日前に母国で日本語を学び、日本語能力試験をパスして一定水準の日本語を習得していたにもかかわらず、学んだ日本語と現場で使われている日本語のギャップによってコミュニケーションをうまくとれず業務に支障が生じたり職場で孤立したりして、母国へ帰ってしまったという例も存在しています。
音声翻訳の導入でスムーズなコミュニケーションを実現
製造業において、外国人労働者雇用に付随する言語面での課題を乗り越えるために、ICTツールを活用する方法があります。例えば身近なツールとして、スマートフォンを活用して「通話中の音声翻訳」によるコミュニケーションの効率化を図る方法です。その際、社内の機密情報の漏えいを防ぎ、さらに多くの専門用語をカバーできる安全かつ高精度なビジネス用翻訳ツールを導入することが大事です。
言語に配慮した生産現場の業務環境を整えることで、外国人労働者は言葉の壁に苦しむことなく、正しく技術を習得できる上、管理側も指示出しにかかる時間を短縮できます。さらに、外国人労働者にとって安全な職場環境の実現にもつながります。別の視点では、内閣府政策統括官の「政策課題分析シリーズ18企業の外国人雇用に関する分析 ―取組と課題について― 」(2019年9月)によれば、外国人労働者とスムーズにコミュニケーションがとれている企業ほど、定着率が高いという傾向が見られます。
機密情報の漏えいへの危惧や専門用語の多さという障壁もあり、有効だと認識しながらも音声翻訳を本格的に導入できない企業もあるようです。しかし、外国人労働者を増やすことは、単に人手不足の解消のためだけではありません。国籍や人種を越えて幅広い人材を求めることは、多様性を重視する企業ブランド向上にもつながっていきます。
現場でスマートフォンあるいはタブレットを利用する場合、安定した通信を実現するための無線通信環境が必要です。翻訳ツールなどの導入を検討するなら、自社のICTインフラ周りを一度見直してみるとよいでしょう。
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