2021.02.12 (Fri)

いまさら聞けない働き方改革のイロハ(第19回)

働き方改革における中小企業の副業の取組みについて

 働き方改革関連法案の制定により、働く人々の事情に応じた多様な働き方の創出が必要とされています。働き方改革関連法案では、今まで原則として禁止されていた副業の解禁を奨励するという動きがありました。従業員が本業以外に副業や兼業をすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、中小企業は従業員に副業を浸透させ、働き方に多様性を持たせるために、どのような対策が必要でしょうか。本記事では働き方改革における変更点や、中小企業における副業のあり方について解説します。

働き方改革のためのガイドライン

 働き方改革は、多様な働き方を容認し、労働者が個々の事情に合わせた働き方を選択できる社会をめざすものです。働き方改革によって働き方が多様化することで、働きたくても働けない事情を抱えていた人々が労働に参加することが可能になります。

 働き方改革によって多様な働き方が創出されることは、個々の労働者がそれぞれの事情に合わせた柔軟な働き方を実現することにつながります。このように、仕事と生活の調和を図る考えを「ワークライフバランス」と呼びます。ワークライフバランスの実現は労働参加率を上げるだけでなく、労働生産性を向上させることも期待されています。

 各企業が働き方改革を推進するにあたり、指針として作成されたのが働き方改革ガイドラインです。働き方改革ガイドラインでは、働き方改革の実現に向けた具体的なプランやロードマップが記されています。本記事では、働き方改革ガイドラインについて、さまざまな事柄を解説します。

働き方の全体像を把握する

 働き方改革は、働き方改革ガイドラインに沿って展開されています。働き方改革の実現にあたり、働き方改革ガイドラインの中でも特に重要とされているのが「労働時間の是正」「雇用形態の確保」「労働時間法制の見直し」の3項目です。

労働時間の是正

 日本では長らく、労働時間が長ければ長いほど作業効率が高くなると考える傾向がありました。確かに労働時間を長くすることで、ある程度の結果を見込むことができるでしょう。ただし、現代の多くの労働者は、職場の仕事以外にも、子育て・家事・介護といった多様な仕事を抱えています。

 職場での労働時間が長くなると、家庭での仕事に割く時間が短くなるだけでなく、身体的・精神的な疲労が蓄積して、かえって職場での仕事の作業効率を低下させる可能性があります。働き方改革では労働時間を是正し、仕事と生活のバランスを図るワークライフバランスを実現させることで家庭と仕事の両立を図り、労働生産性の向上をめざしています。

 企業は働き方改革ガイドラインに沿って、労働者が個々の事情に合わせた労働時間内に働けるような環境づくりを行う必要があります。

雇用形態の確保

 非正規雇用者と正規雇用者の待遇格差の解消も、働き方改革の重要な柱の1つです。正規雇用者との待遇格差は、非正規雇用者の意欲低下や離職率の上昇に繋がります。多くの企業では人手不足が深刻化しており、非正規雇用者の定着率を上げることは重要な課題となっています。

 非正規雇用者の定着率を上げるためには、その企業が魅力的な職場であることが重要です。また、非正規雇用者にとって魅力的な条件の1つとして、仕事ぶりに応じた賃金や報酬の支給があげられます。そこで、働き方改革では「同一労働同一賃金」の原則を採用し、正規雇用・非正規雇用という雇用形態に関わらず、個々の労働者の仕事ぶりや能力に応じた待遇を与えることを各企業に促しています。

 非正規雇用者の定着率を上昇させて労働力を確保するためにも、各企業は働き方改革ガイドラインに基づき、非正規雇用の待遇改善を行うことが求められます。たとえば定期的な面談の場を設けることや、待遇に関する説明の徹底などは、非正規雇用者の職場への満足度の向上につながります。

労働時間法制の見直し

 働き方改革では、労働時間の是正に向けて、労働時間に関して具体的な上限規制を設けました。

原則 例外(臨時的に特別な事情がある場合)
・月45時間
・年360時間
・年720時間以内
・複数月平均80時間 (休日労働を含む)
・月100時間未満 (休日労働を含む)
・月45時間を超える時間外労働は6カ月以内

働き方改革における中小企業のガイドライン

 上限規制に違反した場合、企業は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。企業は労働時間の適正化を努力目標で終わらせるのではなく、達成のために具体的な対策を講じる必要があります。

 中小企業は大企業よりも人手不足感が強いと言われています。働き方改革では中小企業の人手不足を解消するために、中小企業向けのガイドラインも策定されました。

企業側が求められること

 中小企業は大企業よりも人手不足が深刻化しており、働き方改革による労働時間の短縮は利益の減退につながりかねないという懸念があります。そのため、働き方改革に積極的になれない中小企業も多いのが現実です。

 しかし、人手不足による長時間労働は、かえって生産効率性の低下を招く原因となります。悪循環を断ち切るためにも、中小企業も働き方改革を積極的に行い、より生産効率性の高い職場づくりを行っていくことが求められます。

中小企業における労働生産性を向上

 中小企業の深刻な人手不足や労働生産性の低下を解消するためには、外部との連携を強化することが重要です。中小企業向け働き方ガイドラインでは、各地域の商工会や商工会議所と連携し、働き方改革を行う中小企業を支援する取り組みを行っています。

中小企業の働き方改革における人材育成

 中小企業の人手不足を解消し、長時間労働を是正するためには、若手労働者の育成が重要です。企業は若手育成のためのノウハウをマニュアル化し、若手労働者が定着しやすい環境づくりを進める必要があります。

 働き方改革では人材育成のためのキャリア形成支援の助成金制度を打ち出しています。企業は助成金を活用することで、人材育成にかかる費用負担を軽減することができます。

中小企業の働き方改革における女性・高齢者の採用強化

 人手不足を解消するには、多様な人材の労働参加率を上げることも大切です。中小企業向けガイドラインでは、子育て世代の女性や高齢者が労働に参加しやすい環境・仕事づくりのための支援が行われています。

 例えば、女性活躍推進法に基づき、女性活躍に関する取組や数値目標を達成した企業に対する助成や、ハローワークでの高齢者求職者を支援する「生涯現役支援窓口」の設置などの取り組みがあります。

働き方改革における副業についてのガイドライン

 働き方改革では、多様で柔軟な働き方として、副業や兼業を推進しています。最後に、働き方改革における副業・兼業の促進に関するガイドラインの内容について解説します。</p

副業に際し、企業側に求められること

 副業や兼業は収入が増えるだけでなく、離職することなく他業種のスキルアップが行えたり、自分がやりたい仕事を現実にすることで自己実現を追求できるというメリットがあります。働き方改革では、企業側に、原則として従業員の副業・兼業について容認することを促しています

 副業を成功させるには、企業側だけでなく従業員側にも努力が求められます。例えば、副業に力を入れすぎて、本業に差し障りが出ては本末転倒です。副業はまず、企業と従業員が話し合い、双方にとってメリットのある働き方のルールづくりを行うことが大切です。

副業によるメンタルケア

 本業に関連する副業は、本業では学べない知識やスキルを習得できる機会を得る場でもあります。半面、仕事の延長になりやすいため、企業は従業員の業務量に配慮する必要があります。本業に関連する副業のために従業員が心身を損なう恐れがある場合、企業はメンタルケアや医師による面談を実施するなどの措置を講じなければなりません。

副業における労働時間の管理

 個人の時間外労働時間は、本業と副業先の労働時間を合算して、上限規制内に収める必要があります。あるいは60時間を超える時間外労働時間には、36協定に基づき割増賃金率の適用が求められます。

 上限規制や割増賃金率の適用に違反した場合は罰則の対象になり得ますので、企業側も、個々の従業員の副業先での労働時間を積極的に把握しておく必要があります。企業側は各従業員の本業・副業での労働時間を把握するため、あらかじめ副業に関する届け出を行わせるなどの対策が求められます。

働き方改革における副業を含めた健康管理

 副業の有無にかかわらず、雇用者は、労働安全衛生法第66条等に基づき、従業員の健康管理を行うことが義務付けられています。たとえば疲労が蓄積していると判断される場合には、健康診断や医師による面接指導を設けることが必要です。

 併せて、本業と副業先での労働時間を通算で管理し、健康を害する場合には1日2時間を超える時間外労働を認めないなどの対策を取ることも求められます。

副業を行うなら働き方改革のガイドラインを理解して

 従業員が個々の事情に合わせた労働時間を選択できることや、副業を行うことは、収入や労働生産性の向上だけでなく、自己実現の達成にもつながります。副業の容認や多様な働き方の創出を行うためにも、企業と従業員は積極的なコミュニケーションを行い、双方にとってメリットのある働き方を模索していくことが重要です。

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