コンピューター、ルーター、スイッチ、サーバーなどの機器同士を通信させるには、「プロトコル」と呼ばれるルールが欠かせません。この「プロトコル」と呼ばれるルールに基づくことで、ウェブサイトの表示といった通信が可能となります。では「プロトコル」とは一体どういうものなのでしょうか?この記事では「プロトコル」の役割や機能に加え、「プロトコル」に関連する用語について解説していきます。
通信機器同士の通信に必要不可欠なプロトコル
コンピューター、ルーター、スイッチ、サーバーなど、通信機器にはさまざまなものが存在します。これらの異なる通信機器同士で通信を行うためには、「プロトコル」が必要不可欠です。
プロトコルとは
「プロトコル」とは、通信機器同士が通信を行うためのルールです。具体的には「機器同士でのデータの受け渡し方法」や「どれだけのデータをどこに送るのか」ということが決められています。
コンピューターやルーターなどの通信機器は、さまざまなメーカーから販売されており、構造はメーカーや機器ごとに異なります。構造が異なる機器同士は、そのままでは通信ができません。異なる構造の機器同士でも通信できるようにするためつくられた標準ルールがプロトコルです。
同じプロトコルを使用することにより、メーカーや種類が違う通信機器同士であっても通信が可能になります。
各種プロトコルはレイヤーで区分される
各種プロトコルは、IPセットモデルの段階構造のレイヤーとして分類されています。もともとは「OSI参照モデル」と呼ばれる7つの階層に分割されていましたが、近年ではレイヤー5から7、セッション層・プレゼンテーション層・アプリケーション層を1つに束ねてアプリケーション層と呼ぶようになり、5つの階層に分けるようになりました。これをIPセットモデルと言います。
1:物理層
2:データリンク層
3:ネットワーク層
4:トランスポート層
(5:セッション層)
(6:プレゼンテーション層)
7:アプリケーション層
括弧で括った2つの層が、IPセットモデルではアプリケーション層と統合されています。実装としてはIPセットモデルが頻繁に使われますが、階層を語る際はOSI参照モデルが使われるというのが現状ですので、注意が必要です。
各レイヤーとレイヤー毎の代表的なプロトコルの紹介
各レイヤーは互いに独立していることにより、各レイヤーが個別に発展していくことを促しています。プロトコルは基本的に各レイヤーの階層内のみで動作し、レイヤーを飛び越えての依存関係は基本的にありません (極めて稀な例外はあります) 。
ここでは各レイヤーの説明と、レイヤーごとの代表的なプロトコルについて説明します。
レイヤー1 物理層
電気信号や光などの各種伝送媒体を用いて、bit信号の転送を行うための物理的な接続を定義します。bit信号とは信号の波形を1か0かで制御するもの、つまりONかOFFかで送受信を行う信号のことを言います。IPセットモデル・OSI参照モデルの最下層に位置するレイヤーであり、物理的な接続が行われていない場合、当然信号のやり取りは行えません。
伝送媒体の種類によって、様々なケーブルやコネクタを使用します。一般的によく使用されるケーブルは光ケーブル、同軸ケーブル、UTPケーブルなどです。物理層ではデータを「0」「1」のビット列に変換し、さらに電気信号に変換して送受信を行います。
レイヤー2 データリンク層
データリンク層は「隣接する通信機器間の通信を可能にすること」を定義しています。データを転送するための手順や機能、またデータ転送時に発生したエラーを検出しています。また、データリンク層では隣接機器を特定するためにMACアドレスなどを利用して「どこからどこに伝送するデータなのか」を判断したりします。
MACアドレスとは「Media Access Control Address」の略であり、通信機器それぞれにつけられた固有の識別番号です。
ISDNなどの電話回線が主流だった時代はPPP(Point to Point Protocol)などが使われていましたが、近年ではほとんどLAN回線になっていることもあり、代表的なレイヤー2プロトコルはEthernetになっています。
レイヤー2の代表的なプロトコル・Ethernet
IEEE(アイトリプルイー)によって規定されたプロトコルです。Eternetとは簡単に言うと有線LANを接続する為の標準規格であり、ケーブル種別や伝送速度などを決める物理的な規格と、接続を行う為の論理規格の双方を含みます。Ethernetの通信データ単位は「フレーム」と呼ばれ、このフレームの中にさまざまなデータが組み込まれます。先に上げたMACアドレスも、このフレームのなかに組み込まれています。一般に広く普及しているため、安価で高速なLANが利用できますが、認証機能がないことがデメリットとして挙げられます。
レイヤー2の代表的なプロトコル・PPPoE
2点間を接続するプロトコルであるPPPを、Ethernetのフレーム上にカプセル化して組み込んだプロトコルです。PPPをEthernet上で使うことより、PPPoE(PPP over Ethernet)という名前がつけられました。この技術が確立されたことで、元来ISDNなどのシリアルインターフェイスで使われていたPPPがEthernet上でも使用可能となっています。
PPPは低速なシリアルインターフェイス用というデメリットがありましたが、認証機能を備えており、PPPoEの開発によって「高速かつ認証機能有り」という、EthernetとPPPの良い面を併せ持つことが可能となりました。
レイヤー3 ネットワーク層
通信相手を識別するIPアドレスを元に、通信相手への適切なデータ伝送経路を決定します。
IPアドレスとはネットワーク上の機器を識別するための番号であり、10進数表記のIPv4が主流でしたが、IPv4アドレスの枯渇が進んでおり、16進数表記のIPv6に置き換えられつつあります。IP(Internet Protocol)がデファクトスタンダード(事実上標準)のプロトコルになります。
レイヤー3の代表的なプロトコル・IP
現在主流となっているレイヤー3のプロトコルで、通信データ単位は「パケット」と呼ばれます。前述したとおり、IPv4の枯渇問題により、IPv6への置き換えが進められています。IPパケットはきちんとフォーマットが定められており、パケットの中に送信元IPアドレスや宛先IPアドレスを含んでいます。
レイヤー4 トランスポート層
送信元の機器と宛先の機器の間での通信ステータスを管理する層です。一度に伝送されるデータに合わせて分割して送信する方法、分割されたデータを元通りに並べて復元する方法などを定義します。コネクション型と呼ばれるTCP(Transmission Control Protocol)、コネクションレス型と呼ばれるUDP(User Data Protocol)の2つがデファクトスタンダード(事実上標準)のプロトコルとなっています。
レイヤー4の代表的なプロトコル・TCP
通信チャネルの提供と通信管理を行うプロトコルです。通信チャネルとは「ポート」とも呼ばれ、1番から65535番までが提供可能です。TCPには上位レイヤーのプロトコル(HTTP/DNS/SMTPなど)がカプセル化されて実装されており、ポート番号を識別することで提供するサービスの識別も可能にしています。1つのIPアドレスであっても、ポート番号を変えることで複数のサービス提供を可能にするということです。
例えば、同じ192.168.1.1というIPアドレスにデータを送信する際も、ポート80であればHTTP、ポート25であればSMTPのサービスで使用できるということになります。TCPはコネクション型と呼ばれており、送信元と宛先の機器の間で「3way-handshake」と呼ばれる通信確認作業が行われてからデータ送信がされることにより、信頼性の高い通信を保証しています。
レイヤー4の代表的なプロトコル・UDP
基本的な機能はTCPと変わりませんが、コネクションレス型という呼称が示すとおり、TCPのように通信確認作業を行うことなくデータを伝送するプロトコルです。TCPに比べて信頼性は低く、データ伝送ミスの保証もない半面、速度が優れています。TCPを使うかUDPを使うかは、扱うデータの種類によって区別されます。
レイヤー5 アプリケーション層
OSI参照モデルではレイヤー7、IPセットモデルではレイヤー5に分類されます。ここではIPセットモデルに従いレイヤー5とします。
アプリケーション層ではユーザーが操作するアプリケーション機能について、その仕様や通信手順、データ形式などを定義します。電子メールで使われるSMTP、ウェブページ閲覧で使われるHTTPなどが代表的なプロトコルです。
レイヤー4の代表的なプロトコル・SMTP
SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)はインターネットで電子メールを伝送するプロトコルです。前述の通信チャネル・ポートではポート25、ポート587、ポート465、ポート2525の4つが主に使用されます。
レイヤー4の代表的なプロトコル・HTTP
HTTP(HyperText Transfer Protocol)は、ウェブページを構成するHTMLファイルや音声ファイル、動画ファイルを伝送するプロトコルです。HTTPは暗号化非対応プロトコルであり、信頼性に疑問があり、近年ではHTTPS(HyperText Transfer Protocol Secure)が主流になっています。HTTPSではSSL/TLS(Secure Sockets Layer, Transport layer Security)と呼ばれる暗号化プロトコルが実装されます。
通信機器の通信に欠かせないプロトコル
プロトコルとは、異なる構造の通信機器間での通信を可能にする共通ルールです。役割に応じてさまざまな種類が存在し、ネットワーク通信は複数のプロトコルを同時に使用することで可能になります。
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