ネットワークトラフィックとは、ネットワーク上で転送されるデータ量のことです。誰もが毎日ネットワークを利用することが当たり前の現代では、通信障害が発生してしまうと大きな損害が出てしまいます。そのため多くの企業が、「通信障害が起きているかどうか」「通信障害の原因は何か」を調べるために、ネットワーク通信量を測定しています。この記事では、ネットワークトラフィックの監視が必要な理由と、トラフィック監視の種類について解説します。
トラフィックについての理解
ネットワークトラフィックを監視する上で、トラフィックについてある程度知識を身につけることが必要です。以下ではトラフィックの基礎知識となる、トラフィックの種類とそれがどのように発生し、転送されるかについて解説します。
トラフィックの種類
トラフィックには大きく分けて2つの種類があり、「1対1のトラフィック」と「1対多のトラフィック」が存在します。1対1のトラフィックは送信する側が受信する側を特定できる場合に発生するもので、例としてはパソコンからサーバーへのファイル転送など挙げられます。
1対多のトラフィックは送信側が多数の受信側にデータを送信するもので、さらに「制御用トラフィック」と「マルチキャスト」に分けられます。制御用トラフィックは相手先が特定できない場合に相手を特定するためのトラフィックで、ネットワークに存在する機器全体に問い合わせを送信し、目的の相手からの返信を待つものです。
マルチキャストは映像などを不特定多数に一斉に配信するもので、送信先が多数で1対1の送信よりも同時にデータを配信した方が、効率が良い場合に使用されます。
トラフィックの発生の仕方
トラフィックが発生するのは、自身の機器が他のパソコンやサーバーなどの機器とデータのやりとりをするタイミングで、ウェブへのアクセスやメールの送受信などが挙げられます。
データの転送が行われる際には、データはパケットと呼ばれる単位に分割されて転送されます。パケットに分割して送信することで、通信回線を一度に占有することを避けて、多数の機器のデータを効率よく転送します。
ネットワークトラフィック監視
あらゆるシステムやサービスがネットワークを介してデータのやりとりを行うため、ネットワークで遅延や障害が発生してしまうと大きな損害を被ることになります。そのため、ネットワークトラフィックを監視して、問題に事前に対応したり、問題の早期発見、早期対応を行うことが重要となります。
以下ではネットワークトラフィック監視の概要とそのメリットについて解説します。
トラフィック監視はネットワーク監視の中の一つ
トラフィック監視はネットワーク監視の一つで、名前の通りトラフィックに特化した監視となります。トラフィックを監視することにより、ネットワークが耐えうるトラフィック量を超過して、トラフィックが遅延することを検知したり、遅延が発生する前にネットワークの性能が追いつかないことを検知したりすることで、設備の増強など対策を講じることができます。
トラフィックの監視により損害を抑えられる
トラフィック監視のメリットの一つは監視することによって、あらかじめ対策を講じることができるため、遅延や障害が発生した場合よりもコストを抑えることが挙げられます。
障害が発生してしまった場合、そのネットワークを利用するあらゆるサービスや業務が停止し、さまざまな方面に影響が出るため、金銭的損害だけでなく、顧客との信頼関係が崩れる可能性もあることから、障害を事前に防げることは大きなメリットとなります。
コストカットや設備投資の参考になる
トラフィック監視は、性能の低下を検知するだけではなく、ネットワークの帯域幅が効率的に使用されているかを確認することができます。
そのため、トラフィックを監視することにより無駄な設備投資を避けコストカットすることや、どの設備に対して投資すべきかの参考材料を得ることができるメリットがあります。
トラフィックが輻輳している原因を特定することができる
トラフィックが渋滞していることを「輻輳(ふくそう)している」と表現します。そしてトラフィックを監視する場合、単にトラフィックが輻輳していることを検知するだけではなく、その内容を確認し、原因を特定できることもメリットの一つです。
トラフィック監視を行うツールにはフリーツールもありますが、必要な情報を整理する機能に限界があり、原因の特定が難しいです。そのため、必要な情報を整理して原因特定を簡潔に行える有料のツールを使用する場合もあります。
トラフィック監視の種類
トラフィック監視はトラフィックの情報を監視し、問題が発生した場合に原因の特定を行いますが、監視するための技術にはさまざまなものが存在します。以下ではトラフィック監視の技術についていくつか紹介します。
SNMP
「SNMP」とは「Simple Network Management Protocol」の略で、TCP/IPネットワークに接続されている機器を監視・制御するプロトコルです。
ルーターやスイッチ、サーバーなどのネットワーク機器を監視対象としており、障害が発生した際に、どの機器で問題が生じているかを特定することができます。しかし、ネットワークの分析までは行うことができないため、詳細な原因の特定は他の技術を使用します。
パケットスニファ
「パケットスニファ」とはネットワーク上の各ノードを通過したデータの情報を取得する技術です。ノードとはネットワーク機器とネットワークのつなぎ目のことを指します。パケットスニファによって、取得したデータを分析し、原因の特定につなげることができます。
ただし、この技術は通過するデータからSNMPよりも詳細なデータを取得するため、CPUとネットワークの負荷が高くなるというデメリットもあります。
フロー監視
フロー監視では、流れる情報をパケット単位で取得するのではなく、メール送信のような1アクションをフロー情報として取得する技術のことで、情報を把握しやすく、問題発生時に原因を特定しやすいというメリットがあります。
フロー監視を用いた技術にはCisco社の「NetFlow」やInMon社の「sFlow」が存在します。
ただしフロー単位で情報をまとめるため、CPUやネットワークへの負荷は大きくなります。
WMI
「WMI」とは「Windows Management Instrumentation」の略で、Windows OSを管理することを目的にMicrosoftが開発した技術で、Windowsに特化してネットワークの詳細な情報を取得することができます。
詳細な情報を取得できる反面、監視に多くのリソースを使用するため、負荷をかけたくない場合にはSNMPを使用した方が良い場合があります。
トラフィック監視で通信障害のボトルネックを調べられる
トラフィック監視は、事前に通信障害を回避することができることや、通信障害時に詳細な情報を取得することで、ボトルネックの原因を調査することが可能となります。トラフィック監視はCPUやネットワークに負荷もかけるため、どのような監視が必要であるかを整理した上で、適切な監視を行うことが重要となります。
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