こっそり聞きたいネットワークのキホン(第12回)

ネットワークで起こるバーストトラフィックの解説

 システムを運用していると「アクセスできない、通信が遅い」というケースに遭遇することがあります。そうした時、ネットワーク上ではバーストトラフィックという現象が起こっている可能性があります。システムを運用していく上では、バーストトラフィックをなるべく生じないような対策が必要です。ネットワークで起こるバーストトラフィックとはどういう現象なのか、原因は何なのか、どう対策すればよいかについて解説します。

ネットワークで起こる「バーストトラフィック」とは

 「バーストトラフィック」とは、ネットワークへ瞬間的に大量の情報(トラフィック)が流れること、あるいはサーバーに短時間で大量の処理要求が届くことを意味します。これにより、ネットワークの性能が一時的に著しく低下したり、場合によっては障害が発生することもあります。

 ネットワークを通じたサービス提供が主流となっている現代において、ネットワークの遅延や停止が発生してしまった場合、業務が停止してしまい、多大な損害を被ることになります。そのため、バーストトラフィックを避けるために事前に対策を講じることが重要となってきます。

バーストトラフィックの原因

 バーストトラフィックが引き起こされるのは「大量の情報」が「瞬間的」にネットワークへ流れるためです。しかし、そのような状況を引き起こす原因は多岐に渡ります。以下では、その中から原因となりやすいものについて解説します。

ユーザーによる行動

 大規模イベントなどの影響で、同一のネットワークを多数のユーザーが使用することがあります。このユーザーの行動が、バーストトラフィックを引き起こす原因となることがあるのです。例えば、年が明けた瞬間にユーザーが「あけましておめでとう」という内容のメールを同時多発的に送信するとします。この際、相手へメールが届くのに時間がかかってしまうのは、バーストトラフィックの一例です。

クラウドサービスの普及

 クラウドサービスの普及も、バーストトラフィックの発生原因の一つです。クラウドサービスとは、クラウド上でサービスを提供することで、利用者はクラウドにアクセスすれば、いつでもどこでもサービスが利用できるというものです。サービスの利用者の増加に比例して、クラウドへのアクセス数も増えます。そして同時アクセス数が急速に増加すると、バーストトラフィックが発生する可能性が高まります。

データ容量の増大

 パソコンやスマートフォン、クラウドの普及により、ネットワーク上に流れる情報量は年々増加しています。ネットワークのキャパシティが情報量を超えた場合、バーストトラフィックが発生する可能性が高まります。パソコンやスマートフォンの高性能化に伴い、電子機器で処理できるデータ容量が増えました。高画質な写真や動画などが、これに当たります。データ容量の増加に比例し、ネットワーク上にはこれまでよりも多くデータが流れています。このことも、バーストトラフィックを発生させる原因の一つと言えます。

古いネットワーク機器の使用

 ネットワーク上に流れる情報量が年々増加していることを踏まえて、耐えられるだけの性能を有したネットワーク機器を使用することが重要です。そのため、使用しているネットワーク機器の性能が必要な条件を満たしているかを、定期的にチェックする必要があります。古い機器を使用し続けるとネットワークに流れる情報量に処理が追い付かず、バーストトラフィックが発生する可能性が高まります。

バーストトラフィックの影響

 バーストトラフィックの発生により、ネットワークが遅延、停止することでさまざまな方面に影響が波及します。ここではバーストトラフィックが発生することによる影響を解説します。

ユーザーに対する影響

 簡単な例としては、災害時にユーザーが掲示板やニュースサイトに集中アクセスすることがあげられます。これによりバーストトラフィックが発生し、必要な情報を得られないユーザーが生じます。また、オンライン株取引などでバーストトラフィックが発生した場合には、サービスの通信速度が著しく低下するでしょう。通信速度の低下に止まらず、場合によってはサービス自体が停止してしまう可能性もあります。これにより取引が行えなかったユーザーは、多大な金銭的損失を被ることになります。

システムに対する影響

 バーストトラフィックは、サーバーの負荷を高める原因となります。そのため、原因となっているシステム(サービス)と同じサーバー上に他のシステムが構築されている場合、そのシステムにもアクセス負荷や遅延が発生することがあります。このように、原因となったシステム以外にも影響が波及してしまう可能性があります。

バーストトラフィックへの対策

 バーストトラフィックは、ユーザーにもシステムにも多大な影響を与えかねないことから、事前に対策を講じることが重要となります。ここではバーストトラフィックへの対策について解説します。

システムに必要な回線速度を知る

 システムに必要な回線容量を事前に見積もることで、バーストトラフィックを回避することができます。システムにアクセスするユーザー数や扱うデータ数、サイズなどを事前に把握しておきましょう。

 ここで大切なことは、システムの稼動直後に必要となる回線容量を見積もるのではなく、稼動後にユーザー数やデータ量が増えることを想定して稼働開始の数年後を想定して見積もりをすることです。システム稼働から数年後の数値を見積もることで、長期的にバーストトラフィックを回避することができます。

帯域幅の広いネットワーク方式を導入する

 帯域幅が広いネットワーク方式を導入することで、バーストトラフィックを回避することができます。ネットワークへの接続方式にはIPoE方式とPPPoE方式があります。どちらがバーストトラフィックの回避に有効であるかについて、以下で解説します。

IPoE方式とPPPoE方式

 結論としては「IPoE方式」の方が、バーストトラフィックを回避するのに有効です。PPPoE方式は、インターネットに接続する際に「ネットワーク終端装置」を経由して電話回線からインターネットにアクセスします。対してIPoE方式は、通信機器から直接インターネットにアクセスできます。

 通信量が増大するとネットワーク終端装置付近でトラフィックが発生してしまい、通信速度が低下します。そのため、直接インターネットに接続できるIPoE方式のほうが、PPPoE方式よりもバーストトラフィックを回避できる可能性が高くなるのです。

処理能力の高いネットワーク機器を導入する

 処理能力の高いネットワーク機器を導入することで、バーストトラフィックを回避できます。ネットワーク上でトラフィックが増大しても、ネットワーク機器がより多くのトラフィックを捌くことができれば、バーストトラフィックを回避できる可能性が高まります。ルーターなどのネットワーク機器は、システムに必要な容量に合わせて選ぶとよいでしょう。

バーストトラフィックを起こさない対策は必須

 ユーザーにシステムを快適に使用してもらったり、他のシステムに影響を与えないためには、バーストトラフィックを回避することが必須となります。システムによって必要な性能は異なるため、ユーザー数やデータ量から適切な必要性能を見積もり、それに合わせたネットワーク機器の選定やシステム構成の検討が重要となります。

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