こっそり聞きたいネットワークのキホン(第27回)

ネットワーク機器が持つMIBについて解説

 MIBはシステム内の各ネットワーク機器が持つ機器情報のデータベースです。システムが大きくなればなるほど、正常稼働のために監視しなければならない機器は増えていきます。また、同じシステム内にメーカーの違うネットワーク機器を使用することも多いです。このように、種類の違う、多くのネットワーク機器を効率よく監視するために業界規格としてできたのがMIBです。このMIBについて、構造や含まれる情報の種類などを説明し、どうやって活用するのかについて解説します。

MIBとは

 MIBはネットワークの情報を管理するための規格です。まずはMIBに関する基本的な事項について解説します。

ネットワーク機器の情報DB

 MIBは「Management Information Base」の略語で、通信ネットワーク経由で機器を管理するためのデータベースの一種です。MIBは各メーカーの機器に登録されており、ネットワークを経由してデバイスの管理を行うときに、そのデバイスの情報として用いられます。MIBが登録されている機器にはたとえば、「インテリジェントHUB」や「ルーター」などがあります。

MIBは業界標準の規格

 MIBは世界規模の業界標準規格です。そのため、異なるメーカーの機器でも、登録されているMIB情報の構成要素は同じです。MIBという共通ルールを介することで、各メーカーの機器は通信を行うことができます。

 たとえば多くのシステムでは、複数のメーカーのネットワーク機器を同時に管理する必要があります。このとき、メーカーごとに機器のネットワーク情報が異なっていると、ネットワークを同時に管理することができません。MIBはそういった不便さを解消し、ネットワーク機器情報の構成を統一することで一元的に管理できるように定めた世界規模の業界標準規格です。

MIBの構造はツリー構造

 MIBの情報はツリー構造で記述されます。このツリー構造は「MIBツリー」や「オブジェクト・ツリー」と呼ばれます。ツリー構造で表されたMIBの各オブジェクトには、それぞれの位置から派生した名称がつけられます。なお、各オブジェクトの名称は、数字とドット(.)で表します。

 MIBには「標準MIB」と「拡張MIB」の2種類があります。ツリー構造の標準MIBの在所は「iso.org.dod.internet.mgmt.mib-2(1.3.6.1.2.1)」配下です。一方、「拡張MIB」は、「iso.org.dod.internet.private.enterprises(1.3.6.1.4.1)」配下に位置します。

標準MIBと拡張MIBの違い

 前述のように、MIBには「標準MIB」と「拡張MIB」の2種類があります。それぞれの特徴について解説します。

標準MIB

 標準MIBとはRFCによって定義された業界標準の規格です。各ベンダーで共通で利用することができ、どのメーカーの機器であっても、標準MIBを介することで画一的な情報の交換が可能になります。なお、現在の標準MIBとして位置づけられているのは「MIB-2」です。

 標準MIBには機器に関するさまざまな情報が格納されており、それぞれ11のグループに分類されています。なお、標準MIBに属する11のグループ名は以下の通りです。

・System (1)
・Interface (2)
・Address Translation (3)
・IP (4)
・ICMP (5)
・TCP (6)
・UDP (7)
・EGP (8)
・OIM (9)
・Transmission (10)
・SNMP (11)

 各グループにはそれぞれのオブジェクトが格納されています。具体的な情報には、ベンダー名や機器名といった基本情報のほか、監視する際によく使われるCPU使用率メモリ使用率などがあります。

拡張MIB

 拡張MIBとは、各メーカーがそれぞれの機器に独自に設定した情報のMIB規格です。プライベートMIBとも呼ばれ、メーカーや装置によって情報内容が異なります。ただし、独自のMIBとはいっても、内容に差がありすぎると、異なるメーカーの機器間で通信が行えなくなります。

 そのため、MIBのオペレーションは標準MIB・拡張MIBともに共通です。その他の構造についても、各ベンダーである程度規格が定められており、大きな差が出ないよう管理されています。

MIBは何に活用するのか

 MIBはネットワーク管理を行うために、各ベンダーに登録されている情報です。具体的には、MIBはどのように利用されるのでしょうか。MIBの活用方法について解説します。

ネットワーク機器の監視に活用

 MIBはネットワーク機器の監視に活用される情報です。しかし、あくまでデータベースの一種であるため、MIB単体ではネットワーク機器の管理はできません。MIBを利用してネットワーク機器の管理を行うためには、SNMPというプロトコルが必要です。

SNMPとは?

 SNMPとはネットワーク機器をネットワーク経由で管理するためのプロトコルです。MIBと同じく、世界規模の業界標準規格であり、どのようなメーカーの機器でも利用することができます。SNMPを利用すれば、異なる複数のネットワークを一元的に監視することができます。

 たとえばAビルの中に複数のオフィスが入っているとします。それぞれのオフィスで使用されているのは異なる機器やネットワークです。さらに、隣のBビル内にもさまざまな機器やネットワークが導入されており、ネットワーク同士は互いに複雑に絡み合っています

 各ネットワークはそれぞれ構造が異なるため、そのままでは一括管理できず、個々に管理を行う必要があります。その場合、この地域一帯に通信障害などが起きてネットワークの保護や切り分けが必要になったときには、それぞれに対応が必要です。そのため、手間とコストが膨大にかかります。

 その不便さを解消するためには、一定の範囲内のネットワークを一元的に管理するシステムが必要です。そこで活用されるのがSNMPです。SNMPは業界標準の規格であるため、どのネットワークとも互換性があります。よって、SNMPを利用することで、複雑に絡み合った異なるネットワーク同士を一元的に管理ができます。

SNMPで必要な情報を呼び出す

 SNMPはネットワーク上に存在し、ネットワークを通して各機器の管理を行っています。SNMPでネットワークを管理するときには、「SNMPマネージャー」と「SNMPエージェント」の2つのソフトウェアが活躍します。

 SNMPマネージャーはネットワークを管理するソフトウェアであり、いわばネットワーク管理の司令官です。対してSNMPエージェントは各機器で監視・管理を行うソフトウェアで、派遣された監視員のような役割を担います。

 ネットワーク機器の管理は、派遣監視員であるSNMPエージェントと司令官のSNMPマネージャーの通信によって行われます。SNMPエージェントからは、SNMPマネージャーに対し、定期的に機器の状態などのデータが送信されます。SNMPマネージャーは受信したデータをもとに、SNMPエージェントに指令を出します。

 SNMPエージェントがSNMPマネージャーにデータを送信するときに活用されるのが、MIBです。MIBは業界標準規格であるため、どの機器でも内容が画一化されています。そのため、SNMPエージェントはどのメーカーの機器からでも一律に情報を得ることができます。

SNMP・MIBで管理できる項目

 SNMPとMIBを活用することで管理できるのは、「構成」「性能」「機密」の3つが代表的です。それぞれの内容について解説します。

構成管理

 構成管理は、ネットワークを構成している機器の状態監視や動作を制御する機能です。各機器のファームウェアのバージョン管理も含まれています。

性能管理

 ネットワークパフォーマンスを管理するための機能です。たとえばネットワーク内の不正な通信を記録することで、ネットワーク管理者はネットワークの利用状況を監視することができます。

機密管理

 ネットワーク機器にアクセス制限などを設定し、制限が的確に守られているかを監視する機能です。ユーザーのアクセス記録をチェックすることで、不正なユーザーの侵入をブロックすることができます。

MIBはネットワーク監視には必須

 最近のシステムは複数のネットワーク機器を組み合わせて構成されることが一般的です。したがって、監視すべき機器の数が膨大になります。MIBを利用することで、管理者は複数の機器を一元的に管理することができます。

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