情報通信ネットワークを活用したシステムやサービスが普及した現代で、低品質なネットワークの利用は、業務効率の低下や満足度の低下につながるため、単にネットワークを構築するだけでなく、構築後も随時分析を行い、品質改善を行うことが重要となります。構築後に障害が発生した場合には、損害を最小限に抑えるために問題を早期解決する必要があり、あらかじめ分析が容易に行える環境を整えておくことも重要です。本記事ではネットワークを分析する重要性と分析手法について解説します。
ネットワーク分析の概要と重要性
ネットワークの分析は構築済みのネットワークに対して行うもので、既存のネットワークが最適化されているか調査することや障害時の原因特定に活用されます。ここでは、ネットワーク分析の概要とその重要性について解説します。
ネットワーク分析の概要
「ネットワーク分析」の方法には、ネットワーク構造の可視化、ネットワーク上のデータ量の観測結果から効率良くデータが転送されているかの分析、障害発生時の原因箇所特定など、多岐に渡ります。
ネットワークを分析することによって複雑化していたシステムの全体像を把握できたり、分析結果からネットワークの改善を行えます。
ネットワークを分析することの重要性
現代はネットワークを使用するシステムやサービスが主流となっていることから、ネットワークの遅延や停止が発生すると大きな損害が発生したり、顧客との信頼関係が崩れることにもつながってしまいます。
そのため、ネットワークが正常に稼動しているか、適切な構成であるかを把握し、ネットワークを改善していくために、ネットワークを分析することは非常に重要となります。
ネットワーク分析に必要な基礎知識
ネットワークを分析するにあたって、ネットワークの知識を習得していることが重要になります。
ネットワークの知識は資格を取得したり、業務を通じて習得できますが、ここでは最低限知っておくべき「モデル」に関して、「OSI参照モデル」と「TCP/IP」を解説します。
OSI参照モデル
「OSI参照モデル」はコンピュータやネットワーク機器を相互接続するための概念です。レイヤー(階層)構造となっており、各レイヤーが役割を担っていることが特徴といえます。
レイヤーについて簡単に解説すると、レイヤーは全部で7階層あり、下から「物理層」、「データリンク層」、「ネットワーク層」、「トランスポート層」、「セッション層」、「プレゼンテーション層」、「アプリケーション層」が存在します。
各レイヤーの役割としては、「物理層」は電気特性や符号の変調方式などを規定し、「データリンク層」は物理アドレスやデータのパケット化などを規定、「ネットワーク層」は相手先との通信方法を規定します。
「ネットワーク層」には「ルーティング」という重要な機能が備わっており、これは通信する際に最適な経路(ルート)を決定する機能となります。
「トランスポート層」はノードとネットワークをつなぐ通信を規定し、「セッション層」は通信の開始から終了までを表すセッションを規定、「プレゼンテーション層」はセッションにおけるデータの表現方法を規定します。
最後に「アプリケーション層」はアプリケーションレベルのデータのやりとりを規定します。
TCP/IP
「TCP/IP」は通信プロトコルの1種で、こちらもネットワーク間で通信を行う際の手順を定義したものとなります。
TCP/IPもレイヤー構造になっていますが、OSI参照モデルよりもレイヤーは少なく、下から「ネットワーク インタフェース層」、「インターネット層」、「トランスポート層」と「アプリケーション層」の4層構造となります。
各レイヤーはOSI参照モデルのレイヤーと対応しており、「ネットワーク インタフェース層」は「物理層」と「データリンク層」、「インターネット層」は「ネットワーク層」、「トランスポート層」は「トランスポート層」、「アプリケーション層」は「セッション層」と「プレゼンテーション層」と「アプリケーション層」に該当します。
ネットワークの分析方法
ネットワークの分析方法は多岐に渡り、分析方法によって目的が異なります。ここでは「ネットワーク構造の可視化」、「ネットワークの経路分析」、「ネットワークトラフィックの可視化」について解説します。
ネットワーク構造の可視化
ネットワークを分析する方法として、ネットワーク構造図を作成して構造を可視化する方法があります。図解して分析することで全体像が把握でき、最適化されていない箇所や複雑化している箇所の特定に活用できます。
ネットワークの構造図には「物理構造図」と「論理構造図」があり、その両者を作成することでネットワークの全体像と詳細部分をともに分析できます。
物理構造図
「物理構造図」はネットワーク機器の物理的な配置、配線などをまとめた構造図です。ポイントとしては物理構造図を見た人が機器の配置・配線を迷わず理解できるようにすることであり、各機器に番号を割り振ることや、機器の種類を判別しやすいようにアイコンを使用することで、わかりやすい構造図が作成できます。
論理構造図
「論理構造図」はネットワーク同士がどのように相互接続されているかを表す構成図です。
物理構造図と同様に、ネットワークアドレスなど識別できる番号を記載したり、各ネットワークが明確になるようなアイコンを使用したりすることで、理解しやすい構造図を作成できます。
構造図の作成に活用できるサイトやツール
構造図を1から作成することは大変ですし、人によって描画内容がバラバラとなってしまうため、ツールを使用することをおすすめします。
ツールには構造図をわかりやすく表現できる図形やアイコン、イラストなどの素材が揃っていたり、テンプレートも用意されているため、効率的に構造図を描画できます。
ネットワークの経路分析
ネットワークの経路を分析することは、通信時にデータがどの経路を使用しているか把握できるだけでなく、障害時にどの部分で通信が停止しているか特定することができます。
経路の分析方法としては、Windowsの「tracert」コマンドが挙げられます。「tracert」コマンドはコマンドプロンプトで使用するコマンドで、「tracert [IPアドレスまたはドメイン名]」で通過した経路が表示されます。
ネットワークトラフィックの可視化
「ネットワークトラフィック」はネットワーク上の一定時間内に転送されるデータ量のことであり、その可視化とはいつどれだけのトラフィックがどこで流れているかを表やグラフで見える化し、分析できるようにすることです。
トラフィックを分析することにより、ネットワークの障害を事前に検知して対応できたり、効率良くネットワークが利用できていない部分を特定し、改善を検討することができます。
分析方法は分析の目的によってさまざまですが、例としては「SNMP」や「フロー監視」があります。「SNMP」は特定のネットワーク機器に流れるトラフィックを分析し、「フロー監視」はメール送信などのユーザの1アクションのトラフィック情報を取得する分析方法です。
日々分析を行い最適なネットワークを構築しましょう
ネットワークを分析することはネットワークの品質改善や障害の早期解決につながるため、あらかじめ分析が容易に行える環境を整えておくことが重要です。ネットワークの分析方法は目的ごとに多岐に渡るため、目的に沿って適切な分析方法を選択しましょう。
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