2021.03.19 (Fri)
クラウド導入はじめの一歩(第18回)
クラウドのSaaS、PaaS、IaaSを解説
近年クラウドサービスは注目度を増しており、市場規模も年々増加しています。クラウドはソフトウエアやインフラ環境を導入することなく、ネットワークを経由するだけでサービスを利用することができ、業務効率化やコスト削減を図ることができます。クラウドの提供形態は大きく分けて3種類あり、「SaaS」、「PaaS」、「IaaS」となります。本記事ではこの3種類の提供形態がそれぞれどのようなものであるかを解説し、サービス例を紹介いたします。
クラウドの3つの提供形態
クラウドの提供サービスは、ビジネス効率を向上させる目的で普及しています。しかし、一言にクラウドといっても、その種類はさまざまです。
クラウドは提供するサービス内容で、「SaaS」「PaaS」「IaaS」に分類できます。まずこの項目で、これら3つの詳細をそれぞれ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
SaaS
「SaaS」は「Software as a Service」の略です。ソフトウエアで提供されていたようなサービスをインタネット経由で利用することができます。
本来、ソフトウエアはパッケージ化されたものをインストールすることで使用します。SaaSはソフトウエアがクラウド上に展開されているため、手軽に使用できます。データはクラウド上に保存されるため、複数端末・複数人で共有することも可能です。
PaaS
「PaaS」は「Platform as a Service」の略で、アプリケーション開発に必要な実行環境をインターネット経由で利用できるサービスです。
PaaSには、プログラムしたものを実行するための環境や、データベースなどのミドルウェアなどが提供されています。したがって、開発者が一から環境を構築する必要がありません。低コストかつ迅速に開発作業を行うことができます。
IaaS
「IaaS」は「Infrastructure as a Service」の略で、インターネット経由で構築された仮想的なインフラ環境を利用できるサービスです。
データセンターが提供するインフラ環境ハウジングと違い、ユーザーがリソースを自由に選択することができます。コストや環境に応じて適切かつ柔軟な利用を実現しています。ハウジングおよびホスティングとの違いは後の項目で詳しく解説します。
各提供形態のサービス例
各提供形態には代表的なサービスが多数存在します。ここで「SaaS」「PaaS」「IaaS」それぞれのサービス例を紹介します。
SaaSのサービス例
「SaaS」の代表的なサービスとして挙げられるのは「Google Workspace」や「Salesforce」です。
Google Workspaceは企業向けのグループウェアサービスです。企業単位でGmailやドキュメントといったツールを使用することができます。個人用のGoogleアカウントと同様に感じるかもしれませんが、Google Workspaceは特定の範囲でアクセスを共通化できるため、大規模なチーム作業を円滑に進めることが可能です。
Salesforceは統合CRMプラットフォームです。CRMとは顧客の利益を最大するマネジメント手法であり、顧客の管理や解析、メルマガや問い合わせフォームの自動生成といった機能を多数備えています。
PaaSのサービス例
PaaSのサービスとしては「Google App Engine」と「Microsoft Azure」が代表的です。Google App EngineもMicrosoft Azureもアプリケーション開発を行うための開発環境のプラットフォームです。
Google App EngineはPHP、Pythonといった複数の言語やライブラリをGoogleのインストラクチャ上で選択し実行できます。高負荷に耐えるサーバー設計や世界最大級のデータ分析速度を有しているため、大規模なウェブアプリケーションの開発やホスティングに適しています。
Microsoft AzureはWindowsをベースに構築されたサービスです。200以上の機能が実装。世界規模のネットワーク上で、好きな方法でのアプリケーション構築やさまざまな場所への配置が可能です。
他のMicrosoft製品とも連携しやすいため、Microsoft製品を利用している企業に適しています。一方で、他のOSにも対応している点や従量課金制によりコストを最小限に抑えられる点も魅力です。
IaaSのサービス例
IaaSのサービス例として「Oracle Cloud Infrastructure Compute」と「さくらのクラウド」を紹介します。どちらもインフラ環境を提供するという点では共通しています。
Oracle Cloud Infrastructure Computeは仮想機器やHPC、GPUを安全かつ柔軟な環境で提供しています。アーキテクチャを共通にすることでオンプレミスのシステムをそのままクラウド上で実現することを可能にしています。コストや管理の効率を大きく向上させることが可能です。
さくらのクラウドは低コストを重視したIaaSです。メモリーとCPUに複数のプランを設定されており、そこからさまざまな容量のディスクを自由に追加する形で利用します。ユーザーインターフェースも高く設計されているため、直感的な操作と最低限のコストで手軽に利用することに優れています。
ハウジングやホスティングとの違い
クラウドと比較されるサービスとして、ハウジングやホスティングが存在します。クラウドを含めこの3つを混同している方もいるかもしれません。しかし厳密には異なるサービスです。クラウドと他の2つのサービスとの違いを、ここで紹介します。
ハウジングとの違い
ハウジングはデータセンターを保有する企業がサーバーの設置場所を貸し出すサービスです。クラウドとの違いはハウジングは物理的にサーバーの設置場所を提供するのに対して、クラウドは物理サーバー上に設置された仮想的なインフラ環境を提供するサービスです。利用者はそれぞれが個別の仮想サーバーを利用することになります。
ホスティングとの違い
ホスティングサービスは提供企業が保有するサーバーを貸し出すサービスのことです。借りたサーバーでメールサービスやウェブサービスを利用することで社外でもアクセス可能となります。
両者の違いとして、ホスティングは1台の物理サーバーの機能を利用するため固定されたスペックが提供されます。一方のクラウドは個別の仮想サーバーであるため、自社の求める形にカスタマイズが可能です。
今注目されているDaaS
近年注目を集めているクラウドサービスとして「DaaS」が挙げられます。DaaSはテレワークの推奨に伴い、最近注目度を高めているサービスです。DaaSでどのようなことが実現できるのか、どのような形で提供されているのか、この項目で説明します。
DaaSの概要
「DaaS」は「Desktop as a Service」の略。個人のデスクトップがクラウド上に構築され、ネットワークを経由して利用できるサービスです。特徴として、新たにソフトウエアを導入することなくネットワークにつなげることができれば、いつでもどこでも利用できます。
自宅のパソコンと企業で使用しているものでスペックが異なる点がテレワークの難易度を上げています。しかし、DaaSはクラウド上のデスクトップ環境が反映されるため必要最低限の機能でパソコンのスペックを問わないため効率の良いテレワークを実現できます。
DaaSの3つの提供形態
DaaSの提供形態として「プライベートクラウドDaaS」「バーチャルクラウドDaaS」「パブリッククラウドDaaS」の3つが存在します。それぞれクラウドの構築環境が異なります。
プライベートクラウドDaaSは企業が独自に構築したクラウド環境を提供します。そのため自社にとって最適な構築とカスタマイズ、すなわちオンプレミス型の運用が可能です。クラウドが独立しているため、セキュリティ面も安心です。
バーチャルクラウドDaaSは事業者が提供するIaaSおよびPaaS上で構築した仮想デスクトップ環境を利用するサービスです。サービス事業者の環境上に配置されているため完全に独立してはいませんが、プライベートクラウドDaaSと同様にカスタマイズ、セキュリティに優れています。
パブリッククラウドDaaSは事業者が提供するオープンな環境を利用できるサービスです。パッケージ化されている他、複数の企業で共有するため、カスタマイズ性とセキュリティ性は高くありません。しかし自社運用の手間が省ける点や導入コストの安さがメリットといえます。
目的に沿ったクラウドサービスを選定しましょう
クラウドはソフトウエアやインフラを用意する必要がないため、うまく活用できれば費用対効果の向上を実現できます。
ソフトウエアを提供する「SaaS」、アプリケーション開発に必要な実行環境を提供する「PaaS」、仮想的なインフラ環境を提供する「IaaS」といった3つの違いを理解した上で、ぜひ自社の目的に沿ったクラウドサービスを活用してください。
※この記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています
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