2021.03.19 (Fri)
クラウド導入はじめの一歩(第13回)
クラウド業界のベンダーシェアランキングと概要解説
インターネット上でデータを管理・処理するクラウドサービスは、その利便性の高さから導入が進められています。全世界におけるクラウドベンダーのシェアランキングは、上位を大手企業が維持しており、サービスは多機能で特徴的です。本記事では、世界・日本国内のクラウド業界のマーケットシェアランキングや、上位企業のサービス概要について解説します。代表的なサービス例や、クラウドサービスの安全性評価に関しても触れるので、クラウドサービス検討の参考となります。
クラウド業界について
インターネット上のクラウドで情報を管理・処理するクラウドサービスは、その利便性と導入の容易さから、広く浸透しています。クラウドは、自社専用として用いるプライベートクラウドと、複数の企業・団体が共同で利用するパブリッククラウドに大きく分けられます。
このようなクラウド技術を用いたサービスを展開する業界をクラウド業界と呼びます。ここでは、クラウドサービスを展開する代表的な企業とそのサービスについて解説します。
クラウドベンダーの業界地図
クラウドベンダーとは、クラウドサービスを提供する事業者を指します。クラウドベンダーは世界に無数に存在しますが、Synergy Research Groupが2021年2月に調査した結果によると、マーケットシェア上位は、Amazon・Microsoft・Google・Alibabaが占めています。
AWS(Amazon)
AWS(Amazon Web Service)は、Amazonが提供するクラウドサービスで、世界中で圧倒的なシェアを誇っています。2006年に公開されたAWSは、クラウドサービスの中で歴史が長く、豊富なサービスが特徴です。
サーバー環境の構築やデータベースの利用、コンテンツ配信などの機能が備わっており、特に拡張性に優れたサービスです。簡単な設定のみで、タイムロスすることなく必要に応じたカスタマイズが可能となります。完全従量制のため、無駄なコストをかけることなく利用することができるもの魅力です。
Azure(Microsoft)
Azureは、Microsoftが提供するクラウドサービスで、多くの機能を有している点が特徴です。WindowsやMicrosoft OfficeなどのMicrosoft製品との親和性が高いことがシェアを伸ばしている理由です。
システム開発や運用に活用できる機能を備えていることが特徴で、Microsoftの他のサービスをすでに利用していた場合、それらとの連携・統合が容易です。AWS同様、従量課金制のため、余計なランニングコストをかけることなく運用できます。
GCP(Google)
GCP(Google Cloud Platform)は、Googleがクラウド上で提供するサービス群の総称です。GmailやYouTubeなどのサービスの基盤として活用されていることから、運用実績があるシステムであることがわかります。
GCPは、AIや機械学習を用いたビッグデータの活用・分析、システム開発などに利用できる多彩なサービスを搭載しています。特にAI分野の技術に優れており、関連する用途を検討している場合は、大きな魅力となります。他サービス同様に従量課金制を導入しています。
日本におけるクラウドマーケットシェア
Synergy Research Groupが2020年3月に調査した結果によると、日本国内におけるパブリッククラウドのシェアはAmazon、Microsoft、富士通、NTTグループ、ソフトバンクが上位を占めています。ガートナー社の2020年5月の調査によると、日本企業のクラウドコンピューティング導入率は20%に満たないとの調査結果であり、導入は非常にスローな傾向があります。
ここでは、日本の企業が展開するクラウドサービスの概要について説明します。
富士通
富士通が提供するクラウドサービスは、主に日本国内で高いマーケットシェアを獲得しています。企業の基幹システムのクラウド化などに用いられ、業務を停止しないこと・データを守ること・迅速明快なサポートをコンセプトに、信頼性の高いサービスを提供しています。
他のクラウドベンダーとの連携を強化しており、複数の異なる企業が提供するクラウドを使い分けるマルチクラウドにも対応しています。これらの導入検討においては、専任エンジニアがサポートするサービスを展開しており、最適なクラウド環境を整えるのに役立ちます。
NTTグループ
NTTグループにおいては、NTTコミュニケーションズやNTTデータなどが独自にクラウドサービスを展開しています。企業向けの基幹システムへの導入によって、システムの安全性と堅牢制を担保することをめざす高信頼なクラウドサービスです。
クラウドの導入検討から、導入後の運用までのサポートだけでなく、クラウドを含むICT環境全体を最適化するトータルサポート体制が魅力です。
ソフトバンク
ソフトバンクのクラウドサービスは、日本国内におけるシェア上位サービスです。前述のAzureとのパートナー認定を取得しており、クラウドの導入・運用のトータルサポートが可能です。
ウェブ会議システムやストレージ、ネットワークサービスなど、多くの機能を提供しています。さらに次世代のセキュリティシステムである「Cybereason」を導入するなど、強固なセキュリティもアピールしています。
代表的なクラウドサービス
クラウドを利用した各種サービスをクラウドサービスと呼称し、その種類は多岐にわたります。ここでは、代表的なクラウドサービスを紹介します。
クラウド型ファイルサーバー
クラウド型ファイルサーバーとは、クラウド上でファイルの保管・共有・受け渡しなどを可能とするクラウドサービスです。プライベートサーバーを用いた方法と比較して、運用の容易さや拡張性の高さを実現することができます。
クラウドストレージとも表現され、社内メンバーでのファイル共有において役立ちます。近年浸透してきているリモートワークにおいても、これらのファイル共有サービスが重宝されます。
クラウド会計ソフト
クラウド会計ソフトとは、クラウドサーバー上で会計処理を行うことができるソフトウェアです。ソフト自体がクラウド上に存在するため、インストールの必要がないことから、導入の容易さが魅力です。同様の理由で、ソフトウェアを利用するために専用デバイスを必要とせず、外出先などでもインターネットに接続できれば利用することが可能です。
インターネット上に情報を保管することから、他のソフトウェアや情報との連携が容易である点も導入のメリットです。一方、情報漏えいなどのリスクは高まることから、セキュリティ対策については徹底する必要があります。
クラウド型グループウェア
クラウド型グループウェアとは、クラウド上でメンバーのスケジュール・タスクを管理したり、SNSのような使い方ができたりするサービスです。日常業務に必要なツールが多く備わっているため、組織内での利用による業務の効率化が期待できます。
サービスによっては、人数制限や機能制限があるものの無料で利用できるものも展開されています。自社の規模や、将来的な拡張性を考慮した上で、適切なサービスを検討することが大切です。
クラウドサービスの安全性評価
クラウドサービスは、インターネット上で情報を管理・処理するため効率的である一方、セキュリティリスクも存在します。これに対し、自社のクラウド検討から導入後に至るまでの安全性評価を行うことが重要です。
経済産業省と総務省の主導で実施された「クラウドサービスの安全性評価に関する検討会」では、適切なセキュリティを満たすクラウドサービスを政府が導入するために必要な評価方法について検討しています。このように政府が独自の評価基準を検討するほどにクラウドサービスの安全性については留意が必要であり、適切なセキュリティ対策を講じた上で、導入する必要があります。
特徴や安全性を調査した上で適切なクラウドサービスを導入する
クラウドサービスは、インターネット上で情報の管理・処理を行うことができる便利なシステムです。導入・運用が容易である点から、多くの企業に浸透してきています。一方、セキュリティの観点ではリスクが多く、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。これらの機能・セキュリティ性は、クラウドサービスを提供する各ベンダーによって異なる特徴があります。自社の求める性能を見極めた上で、適切なクラウドサービスを導入することが大切です。
※この記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています
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