2021.03.19 (Fri)
クラウド導入はじめの一歩(第8回)
クラウドの活用で自社に適したビジネスモデル構築
クラウド化を利用したビジネスモデルは、近年の主流となってきています。自社の業務効率化のためにクラウド化は欠かせない要素となっており、長期的にはクラウドを活用したビジネスモデルの創出が利益の最大化につながります。そのためには業務環境からの置き換えや、クラウドプロバイダーとの責任分界点など押さえておかなければならないポイントもあります。既存のクラウドサービスから見るビジネスモデルとロードマップ、押さえておくべき責任共有モデルについて説明します。
クラウドを活用したビジネスモデルの構築
クラウド技術の発展に伴い、クラウド化を念頭に置いたビジネスモデルの構築が求められています。ビジネスシステムのクラウド化によって最大限のメリットを得るために、企業は中長期的な視点に立って、自社に最適なクラウド型のビジネスモデルを構築することが必要です。
クラウドの活用の3つの段階
クラウド技術を企業システムに活用するには、大きく3つの段階があります。すなわち、短期的な視点である「既存ICTの効率化」、中期的な視点である「クラウドを活用した既存ビジネスプロセスの効率化」、長期的な視点である「クラウドベースの新たなビジネスモデルの創造」です。
現状では、多くの企業が短期的な視点である「既存ICTの効率化」を目的としてクラウドサービスを活用しています。しかし、今後ますますクラウド技術やクラウドサービスが発展を遂げることを考えれば、目先の効率化だけでなく、企業の基盤システムを根本から変えていくことが求められます。
すなわち、企業は中長期的な視野に立って、クラウド技術を活用した新しいビジネスモデルの創出に取り組む必要があります。そのために、自社がどの程度クラウドサービスを活用しているのか、現状を正しく分析することが大切です。
クラウド利用の包括的なロードマップの4つの段階
クラウド技術を利用して利益を上げるためには、クラウドを活用したビジネスの価値を正確に分析する必要があります。その方法としてロードマップの策定があります。ロードマップ策定の目的は、クラウドを利用することで中長期的に得られるメリットを最大化することです。
ロードマップの目的を達成するまでのステップには4段階あります。第1段階は「ヒト・モノ・カネといったリソースの現状把握」です。第2段階は「クラウド利用による変革の余地の把握」です。第3段階は「サービス管理・構築・運用モデルの定義」、そして第4段階の「以上を踏まえたロードマップ定義」に続きます。
クラウド導入をスムーズに行うためのロードマップ
クラウドサービスを導入するにあたっては、「現行の業務システムを把握」「クラウド移行に伴う課題の洗い出し」「課題解決の取り組み」という流れでロードマップを策定することが重要です。
ロードマップの第1段階は「現在の環境を確認し移行計画を立てる」ことです。現行のシステム状況とクラウド移行に伴う課題の洗い出しをおこない、課題を解説するための計画を立てます。第2段階は「クラウドサービスの選定」です。第1段階で立てた計画に合致するクラウドサービスについて、メリット・デメリットを考慮しながら吟味します。
第3段階は「アプリケーションとデータの移行」です。選定したクラウドサービスを活用し、システムの移行を実行します。第4段階は「移行後の検証」です。クラウドサービスのメリットを最大限に得るために、移行後の結果を分析し、課題があれば解決策を講じます。
クラウド導入時に抑えておきたい責任共有モデル
クラウドサービス導入にあたっては、ベンダー側とユーザー側のセキュリティ対策の責任範囲を明確にする必要があります。お互いの責任範囲を明確にすることで、万が一の問題発生時にも、速やかな対応が可能になります。特にユーザー側は「ベンダー側にすべて責任がある」と誤解していることが多いため、注意が必要です。
クラウドサービスのセキュリティ対策の責任範囲は、サービス形態によって異なります。クラウドサービス形態は大きく「Saas」「IaaS」「PaaS」の3つに分類できます。
Saas、IaaS、PaaSとは
SaaSとは「Software as a Service」の略語で、パッケージ化された製品をインターネット経由で利用できるサービスです。代表的なものに「GoogleWorkspace」や「Dropbox」があります。
PaaSは「Platform as a Service」の略語です。プログラム開発に必要なハードウェアやOSといったプラットフォームをインターネット上で提供するサービスです。「Google App Engine」や「Microsoft Azure」などが代表的なサービスです。
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略語で、情報システムの稼動に必要なハードウェアやネットワークインフラを、インターネット上で提供するサービスです。PaaSよりもカスタマイズの自由度が高く、その分、専門知識や責任範囲が広いのが特徴です。代表的なサービスとして「Google Compute Engine」や「Amazon Elastic Compute Cloud」が挙げられます。
クラウドを活用したビジネスモデルの3つの形態
クラウドを活用したビジネスモデルには、大きく分類して「クラウドプロバイダー」「クラウドアダプター」「クラウドインテグレーター」の3形態があります。それぞれについて解説します。
クラウドプロバイダー
クラウドプロバイダーとは、自社独自のシステム資源やサービスを、スケールメリットを生かしてサービスを提供するビジネスモデルです。具体的には、自社が開発したクラウドベースのプラットフォームやインフラ、ストレージサービスを他企業や個人に提供する企業やビジネスモデルを指します。
クラウドアダプター
クラウドアダプターは、クラウドプロバイダーのサービスを補完するサービスを提供します。たとえば、プロバイダーが提供するサービスの独自規格に対応するために必要な製品を提供します。あるいは、サービスのごとに規格の異なるファイルやデータを一元的に管理するサービスを提供します。
クラウドインテグレーター
クラウドインテグレーターは、さまざまなクラウドサービスを組み合わせて、その企業専用のサービスを構築するサービスを提供します。具体的に請け負う業務は、システム開発や設計、保守、運用、アフターサポートなど多岐にわたります。
クラウドインテグレーターは、まず個々のクラウドサービスのメリットやデメリットを吟味します。さらに、その長短をお互いに補完し合うサービスの組み合わせを導き出すことで、ユーザーにとって最適かつコストパフォーマンスの高いサービスを提供します。
クラウドを活用したビジネスモデルの検討のための情報収拾を
クラウドを用いたビジネスモデルの構築には、自社のクラウド活用の現状や、クラウド化の目的やメリットを正確に分析する必要があります。そのためにも、既存のクラウドサービスについて理解を深め、導入手順や責任範囲などをしっかり検討しましょう。
※この記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています
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