2021.03.19 (Fri)
クラウド導入はじめの一歩(第17回)
経理・秘書業務のクラウドサービスへの移行について
近年、クラウド技術の活用は注目度を高めており、クラウドを活用したサービスの種類も豊富になっています。経理や秘書業務のクラウド化の移行も同様であり、業務をクラウドサービスに移行することで、これまで社内システムや紙媒体のみを使用していた時と比べてコスト削減や業務効率化が期待できます。本記事では経理と秘書業務に焦点を当てて、具体的にどのような業務がクラウドに移行できるのかということや、クラウドサービスに移行する際の流れや注意点について解説します。
経理・秘書業務をクラウドサービスに移行することで実現できること
経理や秘書業務はICT化が進むにつれて、紙媒体よりもソフトウェアを使用する比率が高くなりました。そして現在は、クラウド技術を利用することで作業用パソコンにソフトウェアをインストールすることなく、インターネットと接続することで場所を選ばずに業務を行えるようになっています。ここでは経理と秘書業務に焦点を当てて、クラウドサービスへの移行で実現できる具体的な業務などを紹介します。
経理業務
経理業務の中でクラウドサービスに移行できる業務として、「仕訳を入力して決算書を作成する業務」が挙げられます。これまで紙媒体を使用していた場合は、クラウド化によりパソコンやタブレットで業務を行えることから、大幅な業務効率化が期待できるでしょう。
さらにクラウドサービスを利用することで、実現できることもあります。その一つが「口座情報や取引明細の自動仕訳」です。クラウドサービスでは銀行口座やクレジットカードと連携し、入出金や取引明細を自動で取り込んで仕訳してくれるものがあるのです。
他にもクラウドサービスは直感的な操作が可能で、メールや電話によるサポートも充実していることから、「経理や会計の知識が浅くても、確定申告や決算書が作成できる」ことが可能になります。
経理業務に関するクラウドサービスの例としては「freee」が挙げられます。freeeは上記の内容が実現できるだけでなく、「資金繰りレポート」機能も提供しており、資金繰りをリアルタイムで把握することが可能となります。
秘書業務
秘書業務の中でクラウドに移行できる業務としては、「スケジュール調整」や「顧客とのやりとりの履歴整理」など、「秘書業務の中でデータを扱うもの」についてはクラウドに移行することができます。
インターネットに接続できるデバイスであればどこでも業務を行えることから、これまで持ち歩いていた手帳や資料などが不要になるため、外出することも多い秘書業務とクラウドサービスは親和性が高いといえるでしょう。
秘書業務に関するクラウドサービスの例としては「Radish」が挙げられます。Radishでは上記の内容を実現するだけでなく、「クレームとその対応履歴」を整理できたり、「過去の贈答履歴や弔辞対応履歴も管理」できるため、顧客への対応を的確かつ迅速に行うことが可能となります。
クラウドへの移行によるメリットとデメリット
クラウドへの業務の移行はメリットが大きいですがデメリットも存在し、そのどちらも把握した上で移行を検討することが重要です。以下ではメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット
メリットとしては「コスト削減」、「業務する場所を選ばない」、「データ共有が楽になる」ことが挙げられます。
コスト削減
インターネット環境があればクラウドサービスが利用可能で、機器の導入や新たにシステム開発を行う必要がないことからコスト削減につながります。
社内システムを利用の場合は、日々の運用や障害対応などをシステムベンダーに依頼する必要がありましたが、クラウドサービスを利用する際はサービス提供企業が対応してくれるため、運用にかかるコストの削減も可能となります。
業務する場所を選ばない
クラウドサービスは、インターネット回線があれば端末や場所を選ばずに利用できます。これまで持ち歩いていた資料はデジタル化し、クラウドに保管することで場所を選ばずにアクセスできます。
データ共有が楽になる
クラウドサービスはインターネットを利用するため、データをインターネット経由で共有できたり、複数人で同時に編集することが可能です。経理や秘書業務ではあらゆる情報を集約して管理する必要があるため、クラウドサービスとの親和性が高いといえます。
デメリット
一方デメリットとしては「インターネット環境に依存する」、「セキュリティリスク」、「カスタマイズ性」が挙げられます。
インターネット環境に依存する
クラウドサービスはインターネットを利用するため、いつでもどこでも作業ができる半面、インターネット環境がない場所では業務ができません。出先で作業することが多い場合はポケットWi-Fiなどを利用することで、デメリットを解消することができます。
セキュリティリスク
インターネットを利用するクラウドは、ローカルネットワークを使用する閉ざされた環境の社内システムと比べると、セキュリティリスクが高くなります。
具体的には情報漏えいや障害によるデータ消失が挙げられます。クラウドサービスを導入する際は、セキュリティ対策を十分に行っているか調査してから利用することが重要です。
カスタマイズ性
クラウドサービスはあらかじめ開発されたパッケージサービスとなるため、カスタマイズ性は社内システムに劣ります。
クラウドサービスは汎用的な業務を想定して開発されており、直感的で使用しやすいものが多いため、必要な機能だけクラウドサービスを利用して、自社特有の業務は既存システムを利用する企業もあります。
クラウドサービスへの移行手順
各種業務のクラウド化を検討する際は、目的に沿ってサービスを選定する必要があります。適切なサービスを選定するためにも、以下のような手順に沿って検討することが重要となります。
事前調査
事前調査として必要なことは「目的の明確化」、「現状分析」、「原因特定」、「必要機能の明確化」です。目的を明確にすることで、検討時に方針がブレてしまい、費用対効果の低いクラウドサービスを選定してしまうことを防ぐことができます。
目的が明確になったら、目的に対して現状を整理し、目的と現状のギャップを整理します。ギャップの原因を深掘りすることで、対応すべき内容が把握でき、クラウドサービスとして必要となる機能が明確になります。
計画
事前調査によって必要なサービスが決まったら、業務効率化の観点やセキュリティの観点など多角的な観点から、どこまでの業務をクラウド化するか明確にし、クラウドサービスを選定します。
サービスが選定できたら、サービスを利用することで今の業務がどのように変わるか資料を残したり、手順書作成や講習会などを実施してクラウド化した後の業務がスムーズに行えるように準備を行います。
クラウド化実施
計画が完了したら、実際に立てた計画をもとにクラウド化を行います。実際に業務を移行すると問題が発生する場合もあるので、社内の取りまとめ役をあらかじめ任命したり、サービス提供企業とコミュニケーションが取れるよう事前調整しておくと問題が生じた際にもスムーズに対応することができます。
事後検証
クラウドサービスに移行した後は、効果の検証を行います。その際の検証観点としては「処理時間/工数」、「品質/制度」、「コスト削減」、「付加価値/経営効果」が挙げられます。
「処理時間/工数」であれば、「2人で1日かかっていた作業が、1人だけで間に合い、かつ半日でできるようになった」など、「品質/制度」であれば、「人的ミスが月10件から2件に減った」などのデータを取ります。
「コスト削減」であれば、「品質向上により手直し工数が減り、月にいくら削減できた」であったり、「付加価値/経営効果」であれば、「顧客情報を整理することができるようになったため、以前に比べこのくらい顧客提案ができるようになった」といったように、効果はできるだけ数字で効果を表現しましょう。
クラウドに移行する際の注意点
上記手順で移行する際に特に注意すべきポイントが存在します。
目的を明確にする
最も重要なことは目的を明確にすることです。目的は始めに明確にすべき内容で、目的があいまいになってしまうと、検討時に本来の目的から相違が生じてしまい、結果として費用対効果を十分に得られないサービスを導入してしまう可能性があります。
目的を設定する際にも注意が必要で、クラウドサービスを導入することが目的となっては本末転倒です。業務上の課題を解決することを目的として設定し、その解決策の一つとしてクラウドサービスが挙げられるということを念頭におく必要があります。
ランニングコスト
クラウドは従量課金制のサービスが多く、必要ない機能を導入すると無駄なコストがかかってしまうため、計画段階で不要な機能は選定しないようにしたり、事後検証の結果から不要となる機能を廃止したりと、適宜見直しすることが重要となります。
注意点も考慮した上でクラウド移行を検討しましょう
多方面の情報を集約して管理する経理や秘書業務はクラウドサービスとの親和性が高く、コスト削減や業務効率化を図ることが可能です。クラウドサービスへの移行はデメリットや注意点もあるため、事前に十分に把握してクラウドサービスへの移行を検討しましょう。
※この記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています
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