カーボンニュートラルなど持続的社会の実現、既存事業の深掘り、新規事業を収益の太い柱にしていく──。多くの会社が取り組むべき課題だ。AGCは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、データサイエンスを重視し、製造現場の知識との相乗効果を図る「二刀流人財」を育成する。AI(人工知能)を使い、環境負荷の低い冷媒・溶剤を開発。またオフィスビルや自動車、スマートフォンなどあらゆる場所に存在するガラスを基盤に、最先端技術を組み込むことに積極的だ。技術で社会をいかに変えていくのか。取締役兼 常務執行役員の倉田英之CTO(最高技術責任者)に聞いた。
オフィス街に立ってみると、たしかにガラスは一等地なのかもしれない。すぐ横には自動車の窓ガラスがあるし、見上げればオフィスビルの全面ガラス、そして手元にはスマートフォンのディスプレイだ。気がつけば、私たちはガラスに囲まれながら生活している。
ローイーというガラス、ご存知ですか?
日本で最初に板ガラスの工業生産に成功したAGC(当時は旭硝子)にとって、多くのビジネスチャンスがそこに潜んでいる。Low-E(ローイー)と呼ばれるガラスがある。Low Emissivityの略で、このガラスの内側と外側で、熱の出入りが少ない特長がある。断熱、遮熱に効果的でエコガラスとも言われる。
優れた点が多いLow-E複層ガラスだが、一方で電波を通しづらい。課題解決のため自動車用ガラスなどで培った技術が応用できないか、考えてみる。「幅広い領域の技術があるのがAGCの強み。そうした相乗効果を図っていくのです」。取締役兼常務執行役員の倉田英之CTO(最高技術責任者)はそう語る。
NTTドコモなどと共同でAGCは、高速通信規格の5Gに対応したガラス一体型のアンテナを開発している。これら技術なども活用しながら、オフィスビル向けなど、環境配慮と使い勝手の良さやデザイン性を兼ね備えた、素材とソリューションを同時に提供できる開発につなげていく。
ありたい姿に向けてDX
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