2016.4.14 (Thu)
ICTで業務を効率化(第1回)
ICT機器のクラウド化でコスト削減クラウドサービスが普及し始めて数年が経ち、導入する企業も珍しくなくなりました。しかし、クラウド型はオンプレミス型(自社所有型)に比べるとセキュリティ面で課題があると考え、導入に踏み切れない経営者が多いことも事実です。そこでクラウド型とオンプレミス型を比較しながら、オンプレミス型と同様の堅牢性をどう確保するかを考えます。
自社内のITインフラをオンプレミス型からクラウド型へ移行する企業が増えています。その理由としては、「初期コストが低い」「ハードウェアの調達期間が短い」「運用管理の手間や労力が少ない」「スケーラビリティ(拡張可能性)が高い」などが挙げられます。これらはクラウド型のメリットとして語られることが多く、実際にコスト削減対策として有効です。
一方、デメリットとしては「カスタマイズのパターンが少ない」「ネットワークセキュリティの脆弱性」などがあります。
対してオンプレミス型は「自社所有ゆえのきめ細やかなカスタマイズ性」「クローズドネットワークにあることで堅牢性が高い」などがメリットで、「調達や障害対応コストが大きい」ことがデメリットといえます。一般的にはコスト面でクラウド型が優れる一方、カスタマイズ性と堅牢性ではオンプレミス型が勝利するという認識が強いのではないでしょうか。
しかし、この差は年々縮まりつつあります。特に堅牢性と安定性が最重視される「基幹システム」の分野にクラウドが進出したことは、大きな変化です。この変化は、クラウドの利用拡大が一層進むことを示唆しているといえるでしょう。
クラウドが世に出始めた頃は、「基幹システムにクラウドには適さない」と言われ続けてきました。基幹システムは、人事・会計・在庫購買・販売・生産管理など経営資源に関するさまざまな重要データを保持するため、他のシステムに比べると堅牢性や安定性が第一とされていたからです。
また、基幹システムの処理遅延はそのまま通常業務の遅滞につながるため、性能面でも高いものが要求されていました。さらに、企業の商慣習や業務プロセスに即して細かなカスタマイズが施され、クラウド型のカスタマイズパターンに当てはまりにくいという点も、理由のひとつでしょう。
しかし、膨大な維持コストとメンテナンス・運用費用が足枷となり、半ば企業のお荷物化していることも多いため、コスト削減が課題でもあったのです。
やがてSAPやOracleといった大手ERPパッケージベンダーが「クラウドERP」をリリースすると、変化が訪れます。クラウドERPはクラウドの手軽さや柔軟性はそのままに、導入も容易でカスタマイズ性に優れた環境を提供します。さらに「クラウドファースト」の概念による後押しもあり、基幹システムであってもクラウドで賄おうという企業を増やしました。
基幹システムのクラウド化によって構築にかかる初期コストが圧縮されるだけでなく、ランニングコストも削減可能という認識が広まりました。また、ハードウェア資産が自社内にないことで災害やテロに強く、BCP対策としても有効であるメリットも認知されました。現在ではERPパッケージベンダーの多くが、クラウド利用を推進しています。
ただし、基幹システムに堅牢性が求められること自体は変わりがありません。では、基幹システムをクラウドサービスで実現する場合、どうすれば堅牢性を高められるのでしょうか。そのヒントは、自社とクラウドサービスをつなぐゲートウェイにあります。
クラウドサービスをできるだけセキュアな環境で利用するためには、複数のサービスを組み合わせて堅牢性を高めることが重要といえます。例えばAmazon AWSやMicrosoft Azureといったクラウドサービスに対し、できるだけインターネット(公衆回線網)を経由せずに接続するのも1つの手です。
大手回線事業者が提供する閉域網を使い、なおかつセキュアなゲートウェイサービスを介してクラウドサービスに接続すれば、堅牢性は担保されます。このように、クラウドサービス・閉域網・セキュアゲートウェイという3つを組み合わせることで、オンプレミス型と同様の堅牢性を実現できるのです。ちなみにこの閉域網はVPNのなかでも「IP-VPN」が適しているでしょう。VPNには「インターネットVPN」と「IP-VPN」の2種類があり、後者のほうが通信速度と堅牢性で勝っています。
また、IP-VPNであれば新たにアクセス可能な拠点の構築も容易で、クラウドサービスとの高い親和性も望めます。さらに、複数のクラウドサービスに同時接続可能なゲートウェイサービスを使えば、クラウドの利便性はより一層高まります。
クラウド単体で堅牢性を高めようとせず、複数のセキュアなサービスを使いこなすことが、セキュリティという課題を解決する鍵となります。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年3月12日)のものです。
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