ICTで業務を効率化(第22回)

働き方改革をはばむ障壁 その解決方法とは?!

posted by 廉 宗淳

 ここ約1年、「働き方改革」という文字を目にしない日はほとんどありません。日本全国にだいぶその概念は浸透してきており、「フレックスタイム制」や「在宅勤務」などを導入する企業も増えてきました。しかし働き方改革になかなか踏み切れない企業もあります。例えば専門的な技術やノウハウを必要としながらも、24時間体制で保守・運営を必要とする部署などでは人材不足が大きな障壁となっているようです。

浸透する働き方改革

 2018年は働き方改革ゼロ年と言われています。政府が最重要法案と位置づけた働き方改革関連法が6月29日に成立しました。その中身は「裁量労働制の適用範囲拡大」「同一労働同一賃金」を目指す一方、残業時間の上限値を決め、働く人の健康を守ることも重要な施策となっています。

 国にとっての働き方改革の目的は、働く人を増やして税収を増やし、財政を健全化することにあります。一方、働く側から見れば、適正なワーク・ライフ・バランスの実現や、残業時間を減らしつつ、在宅勤務やテレワークなどによって働きたい時間に働くという選択が可能になるというメリットがあります。

 働き方改革の眼目は、やはり長時間労働の是正でしょう。長時間労働が慢性化すると、うつ状態になったり、その状態がさらに続くと過労自殺という最悪の結果に至ることがあります。そこで、政府は働き方改革の具体的な施策として、1ヶ月で100時間以内(2~6ヶ月の平均残業時間80時間以内)という上限値を決めました。この上限を超えて働かせた企業には、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金という罰則規定が設けられました。大企業は2019年4月から、中小企業は20年4月から適用されます。いままで明確な残業規定がなかった中小企業も、否応なしに対応に迫られているのです。

作業負荷の軽減が改革のポイントに

 そもそも、なぜ企業は働き方改革に取り組まなければならないのでしょうか。その背景として、日本は他の先進国に比べて、労働時間が長い割に生産性が低いことがあげられます。しかし、時間の“量”だけを削減すれば、生産性という“質”が低下してしまいます。

 そこで必要となるのが作業負荷の軽減です。ムダな時間と業務を減らし、従業員の負担軽減につなげることが求められているのです。長時間労働がなぜ常態化してきたのかに目を向け、そこから明らかになった、従業員にかかる過大な作業負荷を軽減する必要があります。

 ムダな時間と業務を減らすには、何がムダな業務で、それによってどれだけムダな時間を費やしているのかを明らかにするため、業務の洗い出しが必要です。働き方改革を進めるにあたっては、業務の洗い出しを行うことで明らかになったムダを無くすため、自社の従業員が行う必要性がない業務をアウトソーシング化する、といった選択肢があります。業務のアウトソーシング化は従業員の作業負荷の軽減につながり、企業にとって働き方改革を実践する上で有効な手法となり得ます。

どうしても負荷を抱え込みやすい部署も

 業務の洗い出しを行い、その結果を検討する過程で、作業の負荷が偏在している部署が明らかになります。典型的なのが情報システム部門です。

 情報システムは「情報資産」と呼ばれるように、販売管理、在庫管理、仕入管理、生産管理から人事給与管理など経営上必要不可欠な基幹システムや、顧客管理やグループウエアなど業務を円滑に進めるための業務システムが、サーバー上で24時間365日、休むことなく稼働しています。

 情報システム部門は業務に追われる忙しい毎日を送っています。サーバーのメンテナンスやトラブル対応に追われ、ユーザーサポートを行うヘルプデスクの役目をこなしつつ、ビジネス部門の依頼に応じてデータを集計するなど、時間がいくらあっても足りないくらいです。本来であれば、経営戦略に則った情報戦略の立案や遂行などの中核的な業務を進めたいところですが、それが十分にできないのが実情でしょう。

 また、情報システム部門の従業員には専門的なITスキルが要求されることから、他部門に業務を肩代わりしてもらえない分、作業の負荷を抱え込みやすい傾向にあります。

外部委託先を有効活用

 独立行政法人情報処理推進機構が出した「IT人材白書2018」によると、ユーザー企業はIT人材の“量”に対する過不足感について「大幅に不足している」29.3%、「やや不足している」54.5%と回答しており、「不足している」と回答した割合は83.8%にものぼっています。このデータから明らかなのは、情報システム部門は多忙にもかかわらず、人員が足りていない実情です。

 情報システム部門は、直接利益を生み出さない部門であることを理由に人員は切り詰められています。「忙しいから人員を増やしてほしい」と訴えても、他部門から人員をシフトし増員することは、現実問題として難しい状況です。

 この現状をそのままにしておくと、世の中が働き方改革の方向に大きく進んでいるのに対し、情報システム部門だけが取り残されることになりかねません。

 企業におけるすべての部門が公平に働き方改革を実行するためには、情報システム部門を外部にアウトソーシングすることが有効です。そのアウトソーシング先となるのがデータセンターです。機器監視やバックアップ作業、故障時の復旧作業など、お客様システムの運用業務を代行するデータセンターにアウトソーシングすることで、情報システム部門の働き方改革は着実な一歩を踏み出すことが可能になります。

 その結果、情報システム部門の作業負荷が軽減され、時間的な余裕が生まれることで、経営戦略に則った情報戦略の立案や遂行といった本来担うべき業務に注力することもできるでしょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年9月30日)のものです。

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廉 宗淳

廉 宗淳
【記事監修】

1962年ソウル市生まれ。イーコーポレーションドットジェーピー代表取締役社長。1997年にITコンサルティング会社、イーコーポレーションドットジェーピー(株)を設立、代表取締役に就任。青森市 情報政策調整監(CIO補佐官)、佐賀県 統括本部 情報課 情報企画監を歴任。主な著書に『電子政府のシナリオ』(時事通信社、2003年)、『行政改革に導く、電子政府・電子自治体への戦略』(時事通信社、2009年)など。

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