自社業務の基幹システムを長年稼働させてきた信頼感から、オフコンのハードを後継機に何代も乗換えながら使い続けている企業は中小企業を中心にまだ数多く存在します。
「Linuxなどトレンドにあったオープン系への切替えを検討したけど、パッケージでは自社業務に合うものがなくて開発が必要になる。現状のオフコンは稼働が安定しているし、開発コストをかけるメリットが小さいので見送ってきた」という経営者やシステム担当者は多いのではないでしょうか。
一方で、ハードの保守期限が迫っていたり、オフコンを扱える社内技術者が高齢化している場合は、「いつまで使い続けることができるのか」という懸念もあるでしょう。自社の業務内容に合わせて最適化され、使い勝手のよさや業務ノウハウが蓄積されたオフコンは何物にも変えられない資産です。ここでは長年活躍してきたオフコンを、今後も活用し続けていくための対策を紹介します。
オフコン移設、運用・保守のアウトソーシングという選択肢
今後もオフコンを継続利用するためにまず選択肢となるのが、データセンターハウジング(以下DCハウジング)による、オフコンの移設と運用・保守のアウトソーシングです。
メリットは大きく2つあります。1つめは、BCP(事業継続計画)対策に繋がる点です。多くのデータセンターは耐震性が高い構造であり、また活断層や海、河川から離れた立地条件であるため、災害の影響を受けにくいという特徴があります。自社にオフコンを設置するよりも、安心できる環境といえるでしょう。
2つめは、オフコンをメンテナンスする技術者を自社で抱えなくてもよくなる点です。オープン系開発が主流となった昨今では、RPG、COBOLなどオフコンをメンテナンスするためのプログラム言語を使える若い技術者が、市場で稀な存在になりつつあります。今後、社内の技術者が一線から退いたり定年退職をした場合、後任の技術者を雇用することが年々難しくなっているのです。
その点でDCハウジングは、運用・保守をアウトソーシングしやすいのが利点です。最近ではオフコンに強い技術者を数多く抱え、データセンター内に常駐させるサービスベンダーも存在します。その中には集中管理によって多くのオフコンで構築・運用・保守を実施したノウハウを活かし、仕様書紛失などでブラックボックス化したアプリケーションであっても診断や分析を依頼できるサービスベンダーも存在するなど、アウトソーシングの選択肢の幅は広がっています。
将来的には、クラウド化も視野に入る
メリットが多いDCハウジングですが、課題もあります。それはハードの後継機の生産が打ち切られた場合です。昨年、国内大手ベンダーのひとつNECが後継機の生産中止、オフコン事業からの撤退を発表しました。ハードの市場が縮小傾向の中で、オフコンを今後も使い続けることができるかは、不透明になっています。
そういった中で今から取り組める対策として、将来的なIaaS(※)型のクラウドサービスへの移行も選択肢となります。昨今はベンダー側が、特に自社のオフコンに対してOSやアプリケーションをそのまま仮想化環境に移行できるプラットフォームの整備を積極的に進めています。プログラムを書き直してオープン化を進めるよりも、アプリケーション資産がそのまま活かせるクラウドサービスへ移行したほうが、リスク管理・コスト面において優位になることが多くなっています。
※Infrastructure as a Serviceの略。情報システムの稼動に必要な機材や回線などの基盤(インフラ)を、インターネット上のサービスとして遠隔から利用できるようにしたもの。
まずはベンダーから知恵を引き出す
オフコンを今後も使い続けるための対策として、「DCハウジング」によるオフコン移設と運用・管理のアウトソーシング、「IaaS型のクラウドサービス」について紹介しました。なにが自社に適しているかは、既存のオフコン環境や予算、規模などにより変わってきます。まずはベンダーに問い合わせ、さまざまなソリューションを引き出してみてはいかがでしょうか。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年8月31日)のものです。
●NTT東日本では、オフコンに関するご相談やお問い合わせを受け付けております。詳しくはこちら。
https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/lp/dc01.html
連載記事一覧
- 第5回 農業をICT技術で先端産業に変える! 2016.07.25 (Mon)
- 第1回 ICT機器のクラウド化でコスト削減 2016.04.14 (Thu)
- 第2回 紙のマニュアルより伝わる社員向け動画を作ろう! 2016.04.21 (Thu)
- 第3回 ソフト不正利用は2割!企業はIT機器の徹底管理を 2016.06.13 (Mon)
- 第4回 いまどきのできる社員の1日 2016.06.27 (Mon)
- 第6回 ネットワークを柔軟に管理する「SDN」「NFV」とは? 2016.08.08 (Mon)
- 第7回 クラウドを理解するために知っておきたい専門用語 2016.09.26 (Mon)
- 第10回 銀行から融資を受けたいなら経理を「ICT化」すべし 2017.01.13 (Fri)
- 第11回 ICTによる勤怠管理システムは、経営の「核」である 2017.01.27 (Fri)
- 第12回 働き方改革実現で覚えておきたい、今どきのICT事情 2018.02.26 (Mon)
- 第13回 在宅勤務は情報漏えいと紙一重!?正しい環境づくりを 2018.02.27 (Tue)
- 第14回 拠点間コミュニケーションのリスクはVPNで克服! 2018.03.20 (Tue)
- 第15回 手軽さと堅牢性の両立を、クラウドサービスで実現! 2018.03.27 (Tue)
- 第16回 「使えない社内システム」からの脱却はクラウドで 2018.03.27 (Tue)
- 第17回 Wi-Fiによる業務効率UPは全オフィス一括導入が肝心 2018.03.28 (Wed)
- 第19回 オフコンの保守期限が切れそう、どうすればいい? 2018.10.25 (Thu)
- 第20回 現役稼働のオフコン資産を今後も活用していくには 2018.10.25 (Thu)
- 第21回 オフコン人材が不足!? 新たな担い手を確保するには 2018.10.26 (Fri)
- 第22回 働き方改革をはばむ障壁 その解決方法とは?! 2018.12.18 (Tue)
- 第23回 過重労働によるトラブルが大惨事につながることも 2018.12.18 (Tue)
- 第24回 2020年、商機の裏側に隠れたICTの課題 2019.06.03 (Mon)
- 第25回 企業が2020年に取り組むべき業務効率化とは? 2020.01.24 (Fri)
- 第26回 仮想オフィスの導入で、むだなチャットを25%削減! 2020.12.01 (Tue)
- 第27回 りそな銀や日テレも、精度向上でAI文字起こしに脚光 2021.02.19 (Fri)
- 第28回 20%の応募者UPも!いま旬のオンライン会社説明会 2021.02.26 (Fri)