企業の基幹業務を担うシステムにおいて、求められる要件の1つは安定性です。安定性が最優先の業界において、高い堅牢性を誇るオフコンの需要は根強く、今なお現役稼働している企業もあります。しかし近年は、オフコンの技術者が確保しにくくなったという声を耳にします。ここでは、オフコン資産を支える人材をどう確保するのか、背景や理由を踏まえて考えてみましょう。
なぜオフコン技術者の確保が難しいのか?
オフコン上で動作するアプリケーションの多くは、COBOLなどの言語によって記述されたプログラムです。しかし、COBOLなどを扱うスキルを持った人材が、市場から姿を消しつつあります。その理由としては、「オープン化の波により、WindowsやUNIX、Linuxなど汎用OS上で動作する他言語への移行が進んだこと」「COBOLなどオフコン上で動く言語を習得した世代の高齢化が進み、第一線から退いたりするケースが増えたこと」「IT業界の技術トレンドとして、軽量言語やスクリプト言語を使用したウェブ業界への志向が強まっているため、若年層が確保しにくいこと」などが挙げられます。
これらの理由から考えると、現時点でオフコン資産を扱うスキルを持った人材が確保しにくいだけでなく、将来にわたっても増加が見込みにくい状況にあるでしょう。
オフコン技術者の「自社所有」がベスト?
では、現実問題としてオフコン技術者を自社で確保することが可能なのでしょうか。結論としては、かなり難しいと言えます。経済産業省の「IT人材需給に関する調査(概要)(2019年4月発行)」によると、IT業界全体の人材不足が深刻化しており、2030年には需要に対して約16~79万人ものIT人材の不足が予測されており、引き続き人材の確保が難しい状態は続きそうです。
これに加えて、オフコン自体を知らない世代の増加も、人材確保の難しさに拍車をかけるでしょう。オフコンは数年~数十年前に導入した企業が多く、これからIT業界に入ってくる20代の若年層と接点がない可能性があります。接点のないオフコン市場へ、意欲を持って参入してくる20代の技術者はそれほど多くはないと思われます。したがって、技術継承をしようにも、継承する対象の確保が難しいのです。
こういった現状を踏まえると、自社でオフコン技術者を全て賄うというのは、現実的ではありません。既存人材の確保も、新規参入者の獲得も難しいのが、オフコン技術者の現状ではないでしょうか。
運用・保守のアウトソーシングによって安定稼働を目指す
しかし、自社でオフコン人材を確保できないことが、オフコン資産を活用できないことに繋がるとは限りません。オフコン資産の活用は、運用・保守のアウトソーシングによっても達成できる可能性があります。
特に、近年進められている「オフコン資産のクラウド化」は、COBOLなどで記述されたプログラムもそのままクラウド基盤に移行できるため、自社で運用・保守を担う必要性が低くなります。これまで積み上げてきたオフコン資産の利点を享受し、人材確保が難しい運用・保守は全てアウトソーシングできるというわけです。
見方を変えれば、オフコン技術者を自社内に抱え込まないことは、逆にメリットであるともいえるでしょう。昨今のビジネス環境と、それに対応する技術トレンドの変遷速度を考えれば、オフコンだけに特化した人材を雇用するよりも、できるだけ新しい分野に挑戦してもらうほうが、ビジネス全体として考えたときのメリットは大きいという考え方もあります。
貴重なオフコンの情報資産は運用・保守のアウトソーシングによって稼働させつつ、自社内のIT人材は新しい分野に投入する。オフコン人材の確保が難しいこれからの時代、事業の安定した基盤と成長力を両立させるためのひとつの形といえるのではないでしょうか。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2019年9月13日)のものです。
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