2023.09.08 (Fri)
カーボンニュートラルを実現するために(第6回)
SDGs目標達成のカギは「効果の可視化」にあり!
SDGsは、社会や企業だけでなく、一個人としても取り組むべき課題です。しかし、ただ単に取り組みや活動を表明するよりも、その取り組みの結果、どのような効果が得られたのか数値として測定・可視化することで、SDGs活動への取り組みの意義が明確になり、組織全体で活動のモチベーションを向上することが期待できます。
本記事では、組織におけるSDGs活動をどのように可視化していくか、その方法やSDGs可視化ソリューションの導入事例を紹介します。
SDGsはビジネスにも好影響を与える
企業の中には、すでにSDGsに関して何かしらの取り組みを行っているケースも多いかしれません。そうした取り組みの結果、どのような成果が得られたのか、その効果を数値化し可視化できれば、SDGsの活動をより良いものにできる可能性があります。
たとえば、「組織全体のモチベーション向上」にも繋げられます。目標に対してどれだけ達成できたのか、あるいはどれだけ未達なのかを数値で明確化することで、継続や改善といった次なるアクションを取りやすくなります。目標の達成度を組織全体に共有すれば、取り組みに対するモチベーションの向上も期待できます。
さらに、SDGsの取り組みを「ESG経営」に繋げることも可能です。ESG経営とは環境や社会への配慮を重視する経営スタイルのことで、近年ではこのESG経営を投資の材料とする「ESG投資」というスタイルも生まれています。
たとえば「温室効果ガスを◯◯トン削減しました」「廃棄物の量を◯◯トン削減しました」といったように、環境に配慮した取り組みを数値で表すことで、投資家にアピールすることも可能になります。
「土壌の質の改善」をどうやって数値化する?
とはいえSDGsには、17の目標と169ターゲットという多用な目標が掲げられているため、各取り組みの効果を数値化するのは簡単なことではありません。それぞれの目標やターゲットに対する取り組みごとに、成果を測定するためのソリューションが求められます。
たとえばSDGsの2つ目の目標「飢餓をゼロに」には、ターゲットとして「漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する」という内容が掲げられています(ターゲット2.4)。つまり、SDGsの効果を可視化するためには、SDGsの取り組み前後で、土地や土壌がどのように改善しているのかを示す必要があります。
こうした農地の可視化に貢献するツールが、JAグループとNTTデータが共同して展開する営農支援プラットフォームの「あい作」です。あい作は圃場(ほじょう、農産物を育てる場所のこと)ごとの土壌特性を、数値や地図上でのマッピングで可視化し、管理するサービスで、農薬などを使用した作業記録も可視化できるため、農薬散布量を適正化したり、肥料の過剰投入抑止することにも貢献します。
このプラットフォームを使用することで、環境にやさしい農業を行っていることが可視化でき、SDGsの目標達成にも繋がっていくことでしょう。
「人々が健康になっている」をどうやって数値化するのか?
SDGs目標の中には、「健康」も掲げられています(目標3「すべての人に健康と福祉を」)。健康に対する取り組みの成果を検証するためには、人々が健康に生活できているかどうか、そのデータを取得し、数値化する必要があります。
こうした取り組みを、街づくりの一環として行っているのが、千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」です。
柏の葉スマートシティでは、体温などのバイタルデータを住民の同意を得て取得し、データベースにて管理しています。これらの健康データを活用し、「健康見える化サービス」や「電子母子健康手帳サービス」にて住民の健康状態を可視化するサービスを提供。これにより、住民の健康度を可視化して把握するだけでなく、総合的な健康支援を行うことが可能となっています。
SDGsの取り組み全体を評価するツールもある
ここまでは個別の目標を可視化するソリューションを紹介しましたが、企業や団体が行っているSDGsの取り組み全般を診断・可視化するソリューションも存在します。それが、日本工営が提供する、自治体や地方金融機関向けの「KIBOH2030」です。
これは企業が自社のSDGsの取り組み具合を測定するためのツールで、17のSDGs目標に合わせた定性的な設問に回答することにより、SDGs達成に向けた活動の自己評価を100点満点で表示します。さらに、SDGsへの取り組み内容の変化についても可視化することができるといいます。
メーカーではKIBOH2030について、SDGsの取り組みに対する評価手段と達成度のアピール手段がなかった中小企業にとって、時間的な負担を最低限に抑えて評価を実施できるツールとしています。
もし自社でSDGsに対する取り組みを進めている、もしくは検討しているものの、その効果を測定することに手が回っていない場合は、今回紹介したような評価方法を採用することで、SDGsの取り組みがより効果的なものになることでしょう。
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