2023.03.24 (Fri)
カーボンニュートラルを実現するために(第1回)
脱炭素に向けた「連携」はビジネスチャンスになる
温室効果ガスの排出量実質ゼロをめざす「カーボンニュートラル」を宣言する国は、2021年11月時点で154カ国・1地域におよびます。
日本もこの宣言国のうちのひとつであり、すでにカーボンニュートラルに向けた取り組みが積極的に進められていますが、最近ではより早期に目標を達成するため、自治体や企業、個人が連携して取り組む動きが顕著となっています。
本記事では、カーボンニュートラルを目標とした異業種や自治体、民間、個人の連携の中からいくつかの事例を取り上げます。
「水素燃料」普及のために生まれた連携とは
まずは、資源エネルギー庁が“カーボンニュートラル実現のカギ”と呼んでいる「水素燃料」を基にした連携の例を紹介します。
2018年、トヨタ自動車や岩谷産業といったインフラ事業者や自動車会社など11社は、水素ステーションの戦略的整備と効率的な運営に取り組む「日本水素ステーションネットワーク合同会社(JHyM)」を設立しました。この合同会社は、水素を燃料として走るFCV(燃料電池自動車)の普及のため、FCV台数の増加、水素ステーション事業の自立化、さらなる水素ステーションの整備を行うことを目的としています。
日本水素ステーションネットワークは、金融投資家とも連携しています。投資家が同社への出資を通じて水素ステーション事業の自立化までに必要な資金を拠出し、インフラ事業者の初期投資負担を軽減し、新規参入事業者の参画を促す、という仕組みです。FCVと水素ステーションとの間に好循環を生み出し、脱炭素化を加速することで、将来的な利益につなげる狙いがあります。
カーボンニュートラルに取り組みつつ、地域活性化も推進
地域の異業種団体が連携している例もあります。2023年2月20日、栃木県佐野市では、農業・林業団体や農業関連の金融機関、住宅メーカーなど、栃木県内に本社や支店がある6団体が協定を締結。この協定では、6団体が連携し、森林や農業環境を保全することでカーボンニュートラルの実現をめざすことを宣言しました。
この協定では、林業団体が良質な県産の木材を住宅メーカーへ安定的に供給することや、農業関連の金融機関が住宅ローンを利用する人に農業体験を行う特典を用意することが想定されています。つまり、企業間はもちろん、企業と顧客の間にもメリットをもたらす協定ということになります。
こうした協定により、地域内の資源を活かした経済モデルが構築できれば、カーボンニュートラルを推進しつつ、地域の経済を活性化する効果も期待できます。
個人も中小企業も、脱炭素に向けて連携していく必要がある
日本政府も国民に向け、脱炭素に向けた取り組みが行えるよう、具体的な行動を呼びかけています。
2022年10月、日本政府は新たに「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」という取り組みをスタートしました。この運動では、2050年カーボンニュートラルおよび2030年度削減目標の実現に向け、消費者に脱酸素を促す新しい暮らしの情報を提供すること、および国、自治体、企業、団体、消費者などの取り組みを結集し、それぞれが連携して目標到達をめざすことがビジョンとして掲げられています。
すでにポータルサイトも開設されており、どのような行動を取れば脱酸素につながるのか、具体的な取り組みが紹介されています。たとえば「太陽光発電を取り入れる」「住宅を断熱化する」「照明をLEDに切り替える」「エアコンや冷蔵庫を省エネタイプのものに買い替える」といった行動が挙げられています。
中小企業に向けた施策としては、企業や自治体、団体がカーボンニュートラルに向けた取り組みで連携できるよう、マッチングをサポートするプラットフォームも用意されています。こうしたプラットフォームを利用すれば、たとえ大企業と比べて資金力に乏しい中小企業でも、脱炭素に関する取り組みがスタートしやすくなります。
カーボンニュートラルは、特定の企業だけが取り組んでも、達成できるものではありません。その連携の輪を社会全体に広げることで、ようやく達成できるものとなります。まずは自分たちが簡単にできることから始めることが重要といえるでしょう。
連載記事一覧
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