顧客満足度を高めること、従業員の離職率を減らすこと、この2点は多くの企業にとって叶えたい希望でしょう。今回は、従業員の満足度を高めることが離職率を減らし、顧客の満足にもつながるとの考えで成功している、東京ディズニーリゾートとトヨタ販売店について取り上げます。
従業員満足が顧客満足につながる!?
顧客満足度を高めるためには、従業員が自分の仕事に誇りを持って楽しく取り組むことが必要だという考えが広がりつつあるようです。つまり、自分が楽しくなければ、人を楽しませることはできないというわけです。これからの企業は顧客の満足だけでなく、従業員の満足についても同じように考えていくべきなのかもしれません。
サービスマニュアルがない東京ディズニーリゾート
95%以上ものリピート率を誇る東京ディズニーリゾートは、顧客満足度が高いと認知している人も多いでしょう。キャストと呼ばれる、短期アルバイトを含めた18,000人もの従業員ひとりひとりの姿勢が、ファンを生み出し「また来たい」と思わせています。
東京ディズニーリゾートには、サービスマニュアルがなくキャストに多くの裁量が任されています。従業員に指導する考え方は実にシンプル。「来てくれた人をいい気分にすること、笑顔で帰ってもらうこと」。これができれば、また足を運んでくれるはずだというわけです。
キャストはマニュアルではなく、社内報でお客さまが喜んでくれた事例を共有し、どのようなサービスをすれば喜んでもらえるのかを学びます。あとは各自の想像力に任せるので、自分で考えて動くようになり、仕事へのモチベーションが上がります。その結果、従業員満足度が高まり、顧客満足につながるのです。
失敗例を共有し、同じ間違いを繰り返さないように注意する企業も見受けられますが、東京ディズニーリゾートのように良いことを共有するほうが、仕事に前向きに取り組むことができるでしょう。
採用する人材を厳選、ネッツトヨタ南国
全国に3,000社あるトヨタ販売会社のなかで、12年連続顧客満足度1位をキープしているのが、高知県のネッツトヨタ南国です。ネッツトヨタ南国もマニュアルを持たず、ひとりひとりが自分で考えて行動することを大切にしています。社員の主体性を重視し、上司は部下に指導しないとの徹底ぶりです。
そのため、主体的に働くことのできる人材を確保できるよう採用に非常に力を入れています。新卒採用の場合、ひとりの学生に対して最低5〜6回、30時間以上の面接を行います。中には200時間も面接に時間をかけたこともあるのだとか。多くの人の目で時間をかけて、一緒に働きたい人物かどうか見極めるのだそうです。
会社説明会では社内の良い部分・悪い部分すべて見てもらい、本当に入社したいのか決断してもらうとのこと。企業と学生双方がお互いのことを深く知ることで、離職者は年にひとりいるかいないかという、驚きの少なさを実現しています。
またネッツトヨタ南国では、顧客向けイベントを多く開催しています。そこでは、お客さまに喜んでもらえる満足感と、自分たちですべて準備し成し遂げたという達成感を得ることができ、社員どうしの理解度も深まるそうです。
マニュアルを持たず主体的に仕事に取り組むことで、それぞれの可能性を最大限発揮することができ、従業員の満足度が高まっているようです。
昇進や報酬よりも従業員満足に必要なもの
多くの人たちは、主体的に考えたことが結果に結びつき、自分の能力が高まることを実感した時に仕事や企業に満足を感じるとのこと。若い人ほど昇進や報酬よりも、夢や希望を実現できるかどうかに重きをおいているようです。そして従業員満足度が高ければ、離職率は低くなるもの。
従業員に主体性を持たせ、モチベーションを上げることが、従業員満足度と顧客満足度のどちらも高めることにつながりそうです。
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