ビジネスパーソンの中には、論語や孫子の兵法、君主論や韓非子といった古典を愛読している方々も多いでしょう。これらの古典は何世紀にも渡って語り継がれたもので、物事の本質をついている書籍といえます。それ故、古典から学ぶべき内容は非常に多く、ビジネスに応用することも可能です。また、人間関係における問題も言及されており、学ぶべきことが非常に多くあります。
今回は、ビジネスパーソンに愛読者が多い「孫子の兵法」から、2つの教訓を引用し解説していきます。
「何だか知らないけど商品が売れて儲かっている」は危険
最初に紹介するのは、有名な以下の教訓です。孫子の兵法を知らなくても、どこかで似たような教訓を耳にしたことも多いでしょう。
(原文)
彼を知りて己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし。
(現代語訳)
競争相手のことをよく知って、自分のこともよく分かっていれば、百度戦っても危ないことはない。
競争相手のことを知らずに自分のことを知っているというのは、勝ったり負けたりして勝負がつかないことになるだろう。
競争相手のこともよく知らない、そして自分のこともわからないという状態であれば、戦いの度に、危険な目に陥ってしまうだろう。
つまり、相手に打ち勝つためには、相手のことはもちろん、自分のことも知っておくべき、という教訓となります。
ビジネスで言うと、「彼」とは競合他社と言い換えられます。そして、「己」とは自社のことです。
この名言は広く知られているにもかかわらず、実行していない会社は多いかもしれません。ビジネスでは一定以上の売り上げを出して利益をあげれば “勝者”と言えますが、理由は分からないものの商品がなぜか売れている、という会社も非常に多数存在します。今はその状態で構わないかもしれません。
しかし、競合他社がそれ以上のサービスを提供するようになり、さすがに自社商品をテコ入れしないといけない状況になった場合、“なぜ自社が選ばれているのか”がわからないと、何をどうテコ入れすればいいのか、そのポイントをつかむことができません。結果的に、競合他社に足元をすくわれることになるかもしれません。
自社のことを知ると言うのは、簡単な様で非常に難しい作業です。分析をしても目に見える結果が出てこないため、後回しにされがちです。しかし、重要なことなので、ぜひ積極的に行ってください。
先程の例で言えば、「自社の強みは何か?」「自社の弱みは何か?」がきちんと分析できれば、「こういうサービスを追加して新しい市場を開拓しよう」といった戦略が決定できます。それとともに、「この市場では自社の良さは活きないから、あまり進出しないほうが良い」というネガティブ面を考慮した戦略も採用できます。
戦略なき会社は、いつか必ず躓きます。「自社の存在意義は何か?」「自社の目的は何か?」は、会社の理念とも密接に関わることです。自社が何の為に存在しているのかを知ることができれば、自社が進むべき道、自社が進んではいけない道が分かってくるはずです。
自社のことがわかったら、競合他社を知ることにも挑戦しましょう。競合が打ってくる戦略や戦術が分かり、それにあらかじめ備えることができます。
そもそも競合他社と戦わない方がラク
もう1つ、孫子の兵法からビジネスに繋がりそうな言葉を紹介します。こちらもどこかで聞いたことがあるかもしれません。
(原文)
百戦百勝は善の善なるものにあらず。
戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり。
(現代語訳)
百回戦って百回勝ったからといっても、それがベストな戦い方とは言えない。
戦わずして敵の軍隊を降伏させてしまうのが、最もすぐれた戦い方なのだ。
己(自社)と彼(競合他社)を知れば負けることはなくなりますが、むやみやたらに戦いを繰り返すことが正しいことではない。理想的なのは、“戦わずして勝つ”方法を考えることだと説いているのです。
たとえば「そもそも競合他社と戦わない」という選択も、ビジネスにおける「戦わずして勝つ」の例といえるでしょう。競合が勝てないような参入障壁を作ることができれば、自社の市場が他社に荒らされることはありません。自社の疲弊も防げるため、ラクしてビジネスに勝つことができます。
この場合、参入障壁をどう作るかがポイントとなります。参入障壁の例としては、「ウォールマートの大量仕入れによる低価格戦略」「セブンイレブンのドミナント出店(高密度な多店舗出店)戦略」「キヤノンのプリンタのインク事業を守る為の特許戦略」などがあります。言い換えれば、自社が他社よりも勝っているところに注力することです。先ほど挙げた会社は、必ずこうした優位点を作り、戦わずに勝てる状況を作り出しているのです。
御社は「自社と競合他社」の分析をしていますか?そしてそこから、市場参入を抑止する参入障壁を考えていますか?まだ始めていないのならば、すぐに始めてみてはいかがでしょうか。
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