いまどきのテレワーク事情(第16回)

企業も従業員も観光地もメリットあり。ワーケーションの可能性

 ワーケ―ションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語です。コロナ禍に一時話題を集めましたが、現在も観光庁による取り組みが続いています。

コロナ禍で一時話題になった「ワーケーション」の今

 「ワーケーション」という言葉をご存知でしょうか。ワーケーションとは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、職場や自宅ではなく観光地やリゾート地といった場所で、リモートワークをしながら働くことを指します。

 ワーケーションが脚光を浴びたのは、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年頃のことです。2020年7月に政府が開催した観光戦略実行推進会議にて、コロナ禍における観光需要の低迷に対する打開策としてワーケーションが挙げられたことで、新聞やニュースでその存在が大きく報じられました。

 政府は2024年現在も、ワーケーションを促進の取り組みを続けており、観光庁では「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー」と銘打たれたプロジェクトが推進されています。ここでいう「ブレジャー」とは、ビジネス(Business)とレジャー(Leisure)を組み合わせた造語で、出張をした際に滞在を延長するなど、余暇を楽しむことを指します。

 コロナ禍がひと段落し、国内の観光需要も復調している今、なぜ政府は現在もワーケーションを推し続けるのでしょうか?

観光庁「ワーケーションは三方よし」

 観光庁が公開している「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー」という資料によると、ワーケーションを推進することは、企業・従業員・観光地(宿泊地など受け入れ施設)の三者それぞれにメリットがあるといいます。

 企業側のメリットとしては、従業員の多様な働き方を認めることで、優秀な人材の採用や離職率の低下にもがり、人材の流出が期待できるとしています。このほか、従業員の有給休暇の取得促進にも効果があるといいます。

 従業員側のメリットも、企業側と同様に働き方の選択肢の増加と長期休暇が取得しやすさが挙げられます。特に観光のハイシーズンを避けてワーケーションを行えば、混雑を避け、余裕のある観光が可能になります。加えて、非日常の土地で仕事を行うことで心身がリフレッシュされ、モチベーションが向上し、新たなイノベーションを生み出す力が養われることが期待できます。

 観光地側としても、オフシーズンの観光客の増加が見込めます。さらに、従業員単独ではなく、企業が主導し、業務としてワーケーションを実施する「業務型」のワーケーションであれば、企業との関係性の構築、遊休施設の活用など、地方創生の効果も期待できます。

 資料では、ワーケーションやブレジャーが普及することで、働き方改革を推進できる企業、柔軟な働き方を求める従業員、地域の活性化や地方創生を目指す地域の“三方よし”のメリットをもたらし、持続可能なビジネスモデルになるとしています。

連泊すると交通費がキャッシュバックされる地域も

 このように観光庁では、ワーケーションがビジネスに与えるメリットを訴求していますが、実際に導入している企業はまだまだ少ないようです。

 観光庁が2022年3月に公開した「『新たな旅のスタイル』に関する実態調査報告書」によると、「ワーケーションを導入している」と回答した企業はわずか5.3%、「導入を検討している」も12.7%でした。調査は新型コロナウイルス感染症が流行していた2021年11月だったこともあり、非常に低調な数値となりました。

 しかし、ワーケーションの利用を促進する新たな取り組みは、各社・各自治体から続々とスタートしています。

 たとえばJR東日本では、2022年7月から法人向けワーケーション商品「JRE Workation Pass」を発売しています。これはJR東日本の列車・宿泊施設の予約サイトで利用できるクーポンが、最大20%のプレミアム付きで購入できるというものです。さらに、同グループが展開するワークスペース「STATION BOOTH」の利用権も付与されます。

 JRE Workation Passは2024年に個人用のプランを追加。5万円/10万円の2つの料金プランがあり、それぞれ5.5万円/12万円分のクーポンが付与されます。2024年度のJRE Workation Passは2025年3月31日まで販売される予定です。

 自治体では、北海道の苫小牧市が「北海道滞在応援ワーケーション in 苫小牧」という取り組みを実施しています。

 これは平日に苫小牧市内に連泊し、市内の指定のコワーキングスペースを利用、かつSNSにワーケーションの様子をアップロードした人に対し、航空運賃・市内宿泊費の旅費を、最大で25,000円キャッシュバックするというものです。対象者は北海道以外に在住の20歳以上の社会人で、滞在前に事前申請が必要です。すでに2024年7月からスタートしており、2025年2月末まで実施される予定です。

 ワーケーションを上手く活用すれば、従業員満足度が高められるうえ、新たに従業員を採用する際の良いアピールとなるでしょう。観光庁のサイトには、すでにワーケーションを実施した企業や、企業を受け入れた地域の事例も掲載されています。もし自社の採用がうまくいっていないのであれば、導入例を参考に、ワーケーションを始めてみてはいかがでしょうか。

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