2021.06.15 (Tue)
いまどきのテレワーク事情(第13回)
テレワークで地域活性化、4億5000万円の経済効果も
少子高齢化や労働力人口の減少など地域の課題解決につながると期待されているテレワーク。日本政府や地方自治体はさまざまな補助金・助成金制度を実施し、テレワーク環境の整備を後押ししています。今回は代表的な補助金・助成金制度や、助成金を活用してテレワークを推進し、地域活性化に貢献したユニークな事例を紹介します。
COVID-19を機に、政府・地方自治体のテレワーク支援が加速
自社にテレワークを導入するうえで調べておきたいのが、日本政府や地方自治体の補助金・助成金です。以前から日本政府は地域活性化の一環として企業のテレワーク導入を支援してきましたが、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、さらに数多くの補助金・助成金制度が新設されました。
2021年5月時点で申請可能な制度の代表例として挙げられるのが、経済産業省の「IT導入補助金」と、厚生労働省の「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」です。前者はITツールの導入に最大450万円、後者はテレワーク機器などの導入に最大100万円、さらに目標達成による助成を最大100万円申請できます。厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)」(最大50万円)も、テレワーク機器の導入・更新が支給対象となっているので、あわせて詳細をチェックしてみましょう。
そのほか、地方自治体や財団法人でテレワークに関する支援制度を運用しているところもあります。一例として、東京都荒川区の「荒川区新型コロナウイルス感染症拡大防止対策設備投資等支援事業補助金」(最大100万円)、福島県福島市の「新たなビジネスモデル創出支援事業」(最大50万円)、公益財団法人東京しごと財団の「テレワーク定着促進助成金」(最大250万円)が挙げられます。
補助金・助成金制度には申請期間が設けられていますが、申請者が急増すると受付を停止するケースも少なくありません。補助金・助成金の申請を検討している人はできるだけ早めにリサーチし、こまめに情報をキャッチアップすることをおすすめします。
テレワークによる地域活性化で、実際の経済効果も続々
2015年に開始され、テレワーク導入に関する支援制度として注目を集めたのが、地方のテレワーク環境整備を補助する総務省の「ふるさとテレワーク」。上限3000万円という補助金額の大きさが話題になりました。この制度を活用して、地域の課題解決に寄与した事例をいくつか紹介します。
特に著しい効果を生んだのは、一般財団法人長野経済研究所の「信州ふるさとテレワーク」です。長野県塩尻市、富士見町、王滝村の3市町村でバーチャルオフィスの整備、地域SNSや遠隔教育といった生活サービスを構築し、都市部の仕事を地方でも続けられることを実証。その結果、県内に与える経済波及効果は4億5000万円にも及ぶと推計されました。
「栃木市WORK SMART・プロジェクトコンソーシアム」は、「子育て・若者世代が住みたい田舎ランキング」で継続的に高評価を得ている栃木県栃木市のさらなる地域活性化を推進。その一環としてテレワークオフィスにコワーキングスペースを併設し、地元テレワーカーの発掘やママさんテレワーカーの育成を通して、子育て・若者世代にフォーカスしたテレワーカーの新しいコミュニティを形成しました。
長野県立科町の「立科町テレワーク推進コンソーシアム」は、子育て世代、高齢者、障がい者、ニート、ひきこもりといった多様な人たちが仕事を通じて社会参加を果たす「社会福祉型テレワーク」にチャレンジ。都市部の企業から移住や多拠点オフィスを誘致する「企業進出型テレワーク」、多様な地域住民に育成や研修、業務発注を通して社会参加を促す「雇用創出型テレワーク」の2つを並走させることで、社会福祉を兼ね備えた新しいテレワークのかたちを示しました。
ほかにも北海道ニセコ町が旧でんぷん工場を最先端のテレワーク拠点にリノベーションしたり、徳島県那賀町が小学校跡地をドローン活用のサテライトオフィスに変えたりといったユニークな取り組みが生まれています。
無料コンサルティングで、一歩を踏み出そう
テレワークを自社に本格的に導入すると相応のコストがかかるため、補助金・助成金制度を活用しない手はありません。しかし、どこから手を付けたらいいかわからない、調べてみたけれどいまいち理解できない、といった悩みをもつ人もいると思います。
そんな時は、総務省の「テレワークマネージャー相談事業」に相談するのも一つの手です。これは、テレワークによる効果の説明や、テレワークに適したシステム、情報セキュリティ、勤怠労務管理、その他テレワーク全般に関するコンサルティングを無料で受けられるものです。補助金・助成金についての相談も可能なので、活用を検討するとよいでしょう。
都内限定となりますが、東京都産業労働局の「ワークスタイル変革コンサルティング」も役立ちます。自社のテレワーク導入段階に応じたコンサルティングを5回も無料で受けられるのが特長です。
ニューノーマル時代を迎えた今こそ、ワークスタイルや組織の仕組みを変革するチャンスです。新しい働き方を検討してはいかがでしょうか。
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