リモートワークは必ずしも良いことだけでなく、特有の疲れが存在し、頭痛など体調不良を引き起こしたり、孤独感から「寂しい」「辛い」といったメンタル面に悪影響を及ぼすこともあります。この記事では、リモートワーク疲れの代表的な症状を、健康面とメンタル面に分けて紹介するとともに、その原因を解説します。同時に、今すぐに取り組める対処方法を中心に紹介することで、気がつきにくいリモートワーク疲れの解消をサポートします。
精神や身体を蝕むリモートワーク疲れ
リモートワークの普及に伴い、「リモートワーク疲れ」という言葉がよく聞かれるようになりました。リモートワーク疲れとは、リモートワークや生活のリズムの変化により、無意識にストレスや疲労をため込み、心身にさまざまな悪影響が現れる現象です。
もう無理や限界という声も
2020年の新型コロナウイルス感染症の影響により、リモートワークを導入する企業が急速に増加しました。リモートワークはオフィス内での従業員の密集を回避し、感染症の拡大を防止する手段のひとつとして注目されていました。それ以外にも、ライフワークバランスの向上や通勤のストレス軽減といった効果も期待されていました。
リモートワークの本格普及から1年が経過した2021年現在、リモートワークを続けることを苦痛に感じている人は、実は数多くいます。その理由として「孤独感が強いこと」「職場とプライベートの境界が曖昧であること」「コミュニケーションの低下や相談のしにくさ」などが挙げられます。
なかには、身体面・メンタル面にさまざまな不調が出ている人も。リモートワークが原因の心身の不調は「リモートワーク疲れ」と呼ばれています。本記事では「リモートワーク疲れ」について掘り下げます。
健康面への悪影響
まずは身体面・健康面でのリモートワーク疲れについて解説します。フィジカル面での悪影響には、主に「疲労感」「頭痛」「体重の増加」があります。
疲労感
リモートワークではオフィスへの出勤がなくなったにもかかわらず、強い疲労感を抱える人も多くいます。具体的には「全身の倦怠感」「腰痛」「深刻な肩こり」などがあります。これらは、リモートワーク特有の在宅環境に原因があります。
リモートワークでは、単純にデスクに向かっている時間が長くなります。長時間同じ姿勢でいると筋肉が固まり、腰痛や背中の痛みの要因となります。加えて、もともと自宅にあった椅子や机でリモートワークを行うことも、身体的な不調の原因の1つに挙げられます。
理由としては、家具の椅子や机はデスクワークに適した高さや広さが維持できていないことが多いためです。日常的な使用には問題なくても、長時間の仕事の利用では、姿勢が悪くなったり、首・肩・腰に痛みが生じる可能性が高くなります。
さらにリモートワークでは、「通勤」のような定期的な運動の機会が少なくなります。この点も、腰痛や肩こりといった身体的な不調の要因になります。
頭痛
リモートワークでは、首・肩・腰の痛みの他に「頭痛」の症状を訴える人も多くいます。リモートワークが原因の頭痛は「リモートワーク頭痛」と呼ばれており、病院や医薬品会社などでも取り上げられています。
リモートワーク頭痛の原因として、「姿勢が悪い状態が長時間続くこと」や、「パソコンなどのディスプレイから出るブルーライト」などがあります。あるいは、仕事と家庭の境界があいまいなことから、ずっと緊張状態が続いてしまい、それが原因で頭痛を引き起こすこともあります。
体重増加
「リモートワーク中に太った」という声も聞かれます。些細なことに思えますが、体重増加も健康面の不良の1つです。体重が増える原因として、「通勤などによる運動量が減少したこと」があります。また、自宅で作業することから「つい間食してしまうこと」「他人と会わないために外見を気にしなくなったこと」なども、リモートワークによって太る要因です。
メンタル面への悪影響
続いて、精神面におけるリモートワーク疲れについて解説します。メンタル面では、主に以下のような不調が見られます。
孤独感
リモートワークでは、他人とのコミュニケーションの機会が減ることから、孤独感を感じるという人が多くいます。会社でのちょっとした雑談や何気ない会話は、ストレスの緩和に大いに役立っています。他人との些細なやり取りがなくなるリモートワークでは、寂しさから大きな孤独感を感じることもあります。
あるいは、出社して仕事をしている人を見ると、「自分より偉い」と感じ、それが孤独感につながることもあります。こういった格差感情は必要以上に自分を卑下し、結果として孤独感につながってしまうのです。
孤独感はリモートワーク開始後すぐに感じるものではなく、時間を置いてじわじわ襲ってくるのが特徴です。気が付いたときには感情が負の連鎖に巻き込まれているため、非常に厄介だといえます。
不安感
リモートワーク疲れには「不安感」も挙げられます。たとえば「仕事ぶりが正当に評価されているか」「サボっていると誤解されていないか」など、承認欲求が満たされないことによる不安感があります。あるいはコミュニケーションの低下から、「仕事の不明点を質問しづらい」というのも原因の1つです。
実はこういった不安感を感じている人は多く、リモートワークや部署を管理する上司も同様の不安を感じているケースがあります。
リモートワーク疲れを引き起こす他の要因
リモートワーク疲れの感じ方には個人差があります。より強くリモートワーク疲れを感じやすい人や、その原因を紹介します。
リモートワークに反対や廃止したい会社の雰囲気
マネジメントの手法が古い管理職がいる企業では、リモートワークができるにも関わらず、導入を反対したがる傾向があります。リモートワークを強固に反対する主張がある中でリモートワークを続けることは、無意識にストレスや心理的な疲労をため込んでしまいがちです。
苦手意識や向き不向き
リモートワークには「向いている人」と「向いていない人」がいます。当然ながら「向いていない人」はリモートワーク疲れになりやすいといえます。リモートワークに向いていない人の特徴として、「自分でスケジュールやタスク管理ができない」ことや「テキストやチャットなどでのコミュニケーションが苦手」であることが挙げられます。
反対にリモートワークに向いているのは「計画性がある」「自発的に動ける」「自己管理ができる」といった特徴を持つ人です。
生活環境の違いからくる難しさ
生活環境の違いによっては、リモートワークの難易度が高くなることがあります。これに関しては個人差が大きく、人によっては、慣れないリモートワークによって生活リズムが崩れ、それが原因でストレスや体調不良を抱える場合があります。
家庭と仕事の境界があいまいになり、ずっと仕事中であるかのような緊張状態に陥る人もいます。また、家族や配偶者のストレスを気にすることが、自分のストレスにつながることもあります。このように、生活環境によっては家庭内ストレスが増加し、結果として心身にさまざまな不調をきたします。
健康面への対処
リモートワーク疲れは、日常的な工夫によって軽減できます。まずは身体面・健康面での対処法について解説します。
ストレッチ
頭痛や肩こりといった身体的な痛みには、ストレッチや軽い運動が有効です。体の痛みや肩こりは、筋肉が固まり、血行が悪くなることが原因です。そのため、ストレッチや軽い運動によって血行を良くすることが大切です。
とくに目の疲労からくる頭痛は、首・肩のこりが原因です。痛みの原因がどこにあるのかを把握し、その部位別にストレッチをおこなうと、より効果を高めることができます。
ダイエット
体重増加を防止するには、大前提として「意識して運動を行うこと」や「自己管理をする」ことが大切です。もし体重が増えてしまった場合には、ダイエットが最適な対処法です。
ダイエットを成功させるための基本的なポイントとして「間食をしない・食生活の改善」、「浮いた通勤時間を運動時間にあてる」ことや「日々の体重を記録する」の3点があります。リモートワークは人目がないため自己管理がおろそかになりがちですが、外見や体重への意識は高く保ちましょう。
メンタル面への対処
続いてメンタル面でのリモートワーク疲れの解消方法を解説します。リモートワークは心理的なストレスをため込みやすいものだということを理解し、積極的に自分の気持ちを切り替える工夫をすることが大切です。具体的には以下の3つの方法があります。
外出による気分転換
メンタル面での不調全般には、外出による気分転換が有効です。散歩で外の空気を吸うことにより、メンタル面のリフレッシュが期待できます。あるいは、リモートワークを自宅外で行うのも1つの方法です。たとえば「カフェ」「ホテル」「シェアオフィス」など、普段と異なる環境で仕事をすることは、気持ちの切り替えがしやすくなります。
他者との関わりを増やす
リモートワークで感じる孤独は、他者との関わりを増やすことで軽減できます。このとき、相手は仕事関係者でもプライベートな友人・知人でもかまいません。
仕事上でコミュニケーションの機会を増やしたい場合は「ウェブ会議」「チャット」「社内SNS」を積極的に取り入れるのが有効です。普段から他人とコミュニケーションを取りやすい環境を作っておくと、何気ないタイミングでも他人にコンタクトを取りやすくなります。この点は、仕事での質問のしやすさにもつながるポイントです。
オンライン会議ツールは、プライベートな交流にも転用できます。たとえばオンライン飲み会やリモートコーヒーブレイクタイムなどを設け、ほっと息をつける機会を意識して作りましょう。仕事仲間とのプライベートな交流は人間関係を深めるため、チームワーク形成というビジネス面でのメリットも期待できます。
同僚や上司とのコミュニケーションを増やす
リモートワークでは「仕事ぶりへの評価」が他から見えづらいため、不安感につながることが多いです。対処法としては、同僚や上司とコミュニケーションを増やすことが有効です。
リモートワークでは人事評価が「成果主義評価」になりやすい傾向があります。高い結果を残すためには、チーム内で密なコミュニケーションをとり、全体でプロジェクト管理を行っていくことが重要です。そのためには同僚や上司と積極的にオンライン会議をおこなったり、定期的に進捗を報告する機会を設ける必要があります。
同僚とのコミュニケーションを積極的におこなうことは、互いの仕事状況を把握しやすくするというメリットがあります。すなわち、他人の労働状況が把握しにくいリモートワークであっても、コミュニケーションを通して「見える化」することができます。
リモートワークが原因で解雇やリストラは有り得る?
リモートワークが原因で解雇やリストラの対象となることはあるのでしょうか。その可能性について、実例を交えて解説します。
とあるICT企業に入社した新入社員が、リモート研修中の態度が悪いとして解雇を言い渡された事例があります。しかしこれは企業と新卒者との行き違いに起因する面が大きく、きわめて例外的な事例です。
リモートワークが原因での解雇やリストラは、たとえばリモートワークをよいことに会社で認められていない副業をするなど、よほどのことをしない限りは起こりにくい事態です。しかし、リモートワークは上司からの人事評価が的確でなくなる可能性があります。そのため、査定次第でリストラ対象になる可能性は否定できません。
適切な対処をしてリモートワーク疲れを解消
リモートワーク疲れには、健康面・メンタル面の両方があります。その症状や度合いには個人差があります。いずれの場合であっても、原因を自分できちんと把握できていれば、それに応じた対策も立てやすくなります。リモートワークは心身が疲れやすいものだということを理解し、意識的に自分を労わることが重要です。
※この記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています
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