2021.03.19 (Fri)

最初に覚えておくべきBCP(事業継続計画)のノウハウ(第13回)

BCPの評価基準と業種別の注意ポイントとは

 近年台風・地震などの被害が甚大化するケースが増える中、BCP(Business Continuity Plan)の重要性に注目が集まっています。多くの企業が取り組みを進めていますが、事前に計画の評価をしっかりしなかったために、緊急時にうまく機能しない例も少なくありません。BCPは各企業の業種・特徴に合わせて柔軟に策定することが大切です。この記事では、BCPを策定する際の評価基準と、各業種別の注意すべきポイントについて紹介します。

BCPの評価基準

 BCPは策定するだけでなく、内容を評価し、その評価をもとに定期的に見直しを行うことが大切です。的確な評価を行うためには、事前に評価基準を確立しておかなければなりません。以下に、BCPの評価基準として考えるべきポイントを解説します。

目的が明確に設定されているか

 BCPの評価では、BCPが「自社がもっとも重要視するものは何なのか」という、「BCPの目的」に沿ったものであるかという点を考えます。自社がもっとも優先する事項は、たとえば「社会的影響の大きいクライアントへの供給責任を果たす」こと、「従業員の安全を第一に考える」など、企業によって異なります。

 BCPは緊急時にも事業の継続を図るための取り組みです。事業継続の目的が何であるのか、経営理念や基本方針の原点に立ち返って考えてみてください。BCPの目的を明確にすることで、BCPの評価を行うときにも、その目的を達成するための基準がより具体的になります。

重要な業務が網羅されているか

 BCP評価では「自社にとって重要な業務が網羅されているか」という観点から評価することが重要です。BCPは事業中断時に復旧すべき業務の優先順で策定します。自社にとってもっとも効率のよい事業復旧が行えるよう、重要な業務をすべて洗い出し、優先順位をつけましょう

 重要な業務とは、たとえば「売り上げへの寄与が大きい業務」「納期の遅延が甚大な損害を及ぼす業務」「社会的責任を果たすべき業務」などがあります。さまざまな観点をもとに、非常時に自社が維持すべき重要な業務を洗い出し、BCPに盛り込みましょう。評価の際にも、これらの観点から改めて見直しを行います。

リスクアセスメントができているか

 重要業務の洗い出しが済んだら、その業務に起こりうるリスクについて考えます。たとえば台風被害で工場が水没して商品の生産ができなくなった、というようなケースがあります。重要業務に対して起こりうる危機・災害をリストアップし、あわせて、それらのリスクによって発生する事業への影響と損害についても精査しましょう。

 BCPを策定する際は、これらのリスクを想定することで、より具体的な復旧方法を編み出すことができます。BCPを評価する際も同様です。BCPの実効性を高めるためにも、リスクアセスメントは緻密に行うことが大切です。

具体策が設定されているか

 BCP評価の際には、「実際の緊急事態の発生時にどのような指揮で事業復旧をめざすのか」という具体策も重要な観点です。誰が指揮をとり、どのような指揮系統で、どの作業をどの順序で行うべきなのか、明確にされていることを確認しましょう。

 迅速に行動するためには、個別の災害を想定し、それぞれに対して細かく具体的な内容を策定しておくことが必要です。BCP策定時に想定外の事態が起こったり、BCPの内容が簡素すぎたりする場合には、BCPが正常に機能しなくなるからです。

 一般的には、BCP策定は災害発生から平常時に戻るまでのタイムスパンを意識し、時系列に即した対応策を決めておきます。さらに、対応策を検討する際は、「人的リソース」「施設・設備」「資金調達」「体制・指示系統」「情報」の5つの視点で行うことが大切です。

BCPマニュアルで重視するポイント【製造業編】

 製造業におけるBCPマニュアル策定の重要ポイントを解説します。製造業では、「在庫」と「関連企業との連携」に重きを置苦くことが大切です。

必要十分な在庫の確保

 製造業は商品を製造し、顧客に届けることが主業務となります。つまり商品の在庫は企業の売り上げに直結する命綱と言えます。製造業が事業継続を図るためには、どのような緊急事態であっても在庫を確保し、かつ、顧客からの信頼を維持する必要があります。

 製造業でBCP評価を行うときには、以上のポイントを念頭に置きましょう。すなわち、まず自社にとって重要な製品を洗い出し、どの製品の在庫をどの程度確保すべきなのか、具体的な数値の目標設定が重要です。

サプライチェーンの維持

 製造業は自社の商品の全部品について、一貫生産ではなく、外注先や材料の仕入れ先といったサプライヤーに依存していることがほとんどです。そのため、自社の商品を安定して生産し続けるためには、関連企業間での連携が重要となります。

 たとえば東日本大震災の際には、市場シェア率が高い自動車部品メーカーの1社が被災した結果、自動車メーカーの多くが、一時生産停止を余儀なくされました。このようなリスクを避けるためにも、緊急時の代替取引先の確保や、サプライヤーのBCP取り組み状況を把握・すり合わせを行うなど、関連企業間での緊密な連携が求められます。

BCPマニュアルで重視するポイント【建設業編】

 次に、建設業におけるBCPの重要ポイントを解説します。建設業は、災害時にはインフラ復旧を求められることを視野に置きましょう。

インフラ復旧への迅速な対応

 建設業は、大災害時発生時などに、インフラ復旧の要とされます。たとえば「近隣からの救助要請」や、「インフラ・建物の応急復旧の要請」といったさまざまな要求が、行政機関や民間から複数同時に並行して持ち込まれることを想定しておかなければなりません。

 これらの事業はCSR(企業の社会的責任)の一環であるだけでなく、自社の利益そのものでもあります。両者をかなえるためにも、さまざまな災害を想定し、それぞれに対して綿密なBCPを練ることが重要です。

建造物のステータスに合わせた適切な管理

 建設業は竣工完了して、すでにクライアントに引き渡しを行った物件であっても、一定期間はその物件に対する責任が発生しています。顧客との信頼関係を保つためにも、物件に関する状況確認と顧客へのフォローが必要です。

 当然ながら、施工中物件における品質管理も重要です。さらに災害時には迅速な遂行が求められるため、早期に工事を再開し、納期を遵守することが大切です。とくに災害発生後などは人材や物品資源が乏しいことが多いため、優先すべき業務について優先順位を決めておく必要があります。

BCPマニュアルで重視するポイント【銀行編】

 銀行におけるBCPマニュアルの重要ポイントを解説します。銀行をはじめとした金融業では、災害発生などの緊急時時においても、現金供給や決済などの金融サービスの遂行が求められます。BCP策定や評価の際にも、上記の点を重要視する必要があります。

ICTシステムへの対策

 金融業界は、他業界よりも業務内容の自動化・電子化が進んでいます。すなわち、ICTシステムへの依存度が極めて高いと言えます。災害発生時のICTシステム断絶を避けるため、システムや回線の二重化、自家発電の導入といった対策が必要です。

適切な人材の用意

 対策を万全にしていても、思わぬ事態によりICTシステムが機能しなくなることもあります。そういったリスクに備え、システムがストップしてもサービスを提供できるだけの人員の確保が必要です。

 ICTシステムが機能しないとはつまり、ATMや決済サービスなどが利用できなくなるということです。つまり、確実な現金供給のために、現金調達や支払い手続き、預金の引き出しといった手続きは人手に委ねられることになります。

 さらに、行政機関や日本銀行からの特例措置に基づく対応依頼や、最寄りに銀行がない避難住民に対しての対応などを、平時とは異なる普段と環境でこなすことが求められます。つまり、単純に人数を揃えればいいのではなく、その業務に精通した人員の育成・確保が求められます。

策定と運用のサイクルを回してより強固なBCPを策定する

 BCPを実効性の高いものにするためには、「事業の理解」「BCPの準備・策定」「評価」「更新」といったBCPサイクルを回すことが重要です。策定や評価の段階では、本記事で解説した業界別のBCPマニュアルポイントを参考にしてください。

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