2020年から始まった新型コロナウイルスの流行は、BCPで想定される「感染症の蔓延」に当たる状況です。BCPを策定していた企業は、業務の早期復帰や普段とは異なる環境での業務維持を可能としました。とはいえ、BCP策定を行うにはそれ相応の設備や設備を導入するための費用が必要となります。そこで注目したいのが、BCP策定に関する補助金や助成金の存在です。この記事では、実際にどのような補助金や助成金があるのか、その申請方法などを解説していきます。
BCP実践促進助成金について
BPCの助成金としては「BCP実践促進助成金」が存在します。この助成金を受け取るには、対象となる事業や経費の確認が必要です。以下ではBCP実践促進助成金について詳しく解説します。
BCP実践促進助成金とは
「BCP実践促進助成金」とは、都内の中小企業などが公的機関などの認定を受けて策定したBCPを実施する際に、必要な備品・物品の購入、設置にかかる費用を対象に助成が受けられる東京都の助成金制度です。
特に中小企業は資本力や経済力が大企業と比較したときに弱いことから、災害などの影響を大きく受けやすいため、BCPの策定が重要となってくることから打ち出された助成金です。
助成対象事業者
助成対象となる事業者は、「都内に所在する中小企業・小規模事業者及び中小企業団体」または「本社が東京都または関東6県、山梨県にある事業所」となります。
助成対象事業者
助成対象となる事業者は次の3つの条件いずれかを満たすBCPを策定した事業者となります。
1つめは「BCP策定支援講座(ステージ1)に基づいて策定したBCP」であることです。本講座は東京都中小企業振興公社が無料で実施している講座で、講義と演習を通してBCPに対する理解を深めることができます。
ステージ1はBCPの基本方針を決定する程度のもので、対象となる災害も地震、風水害、感染症のみとなるため、ステージ1だけでは自社のBCPを完成させることはできませんが、BCPについて理解を深めることができ、助成金も受けることができるため、メリットは大きいです。
2つめは「中小企業強靱化法に基づく事業継続力強化計画の認定を受け、その内容に基づいて作成したBCP」であることです。認定は経済産業大臣が行い、BCPに記載する項目としては、「ハザードマップ等を活用した自然災害リスクの確認方法」、「安否確認や避難の実施方法など、発災時の初動対応の手順」などが挙げられます。
3つめは「平成28年度以前の東京都又は公社が実施したBCP策定支援事業等の活用により策定したBCP」であることです。
助成対象経費
助成対象となる経費は「策定されたBCPを実践するために必要な設備・物品の購入、設置に係る費用」であることです。例としては、自家発電装置や蓄電池、安否確認システム、データ管理用サーバー、転倒防止装置、非常食などの備蓄品、水害対策用設備、感染症防止用品などが挙げられます。
助成率と助成額
助成率は「助成対象経費のうち、どれだけ助成するかの割合」です。助成率は中小企業と小規模企業で異なります。中小企業の助成率は「助成対象経費の1/2以内」、小規模企業の助成率は「助成対象経費の2/3以内」となります。
ただし、感染症対策を含むBCPであった場合には「助成対象経費の4/5以内」まで助成金を受け取ることができます。
助成額は上限額が1500万円で下限額が10万円となります。
助成対象外経費
「BCP実践促進助成金」の対象は、BCP対策のために投資したものに限定されますが、BCP対策の経費であっても「BCP実践促進助成金」を管理している「公益財団法人東京都中小企業振興公社」の判断により、助成の対象として認められない場合もあります。
BCP対策の投資として、自社施設の耐震対策が挙げられますが、助成対象と対象外の費用には注意が必要です。耐震診断にかかった費用は助成対象となりますが、実際の改修や補強工事はBCP対策ではなく、日々の事業に関わる費用として捉えられるため、助成対象となりません。
BCP実践促進助成金を申請するには
BCP実践促進助成金には、申請後すぐに助成金を受けられるわけではない、対面での受付が必要といった、決まりごとがあります。以下では申請に当たってのポイントについて解説します。
BCP実践促進助成金申請の流れ
本助成金の申請は「公益財団法人東京都中小企業振興公社」に対して行う必要があり、審査を受けてから、1カ月後に審査の結果が通知され、助成対象となった場合は審査結果受領後4カ月が助成対象期間となります。ただし、BCP対策が完了した後も、5年間は稼働状況の報告を定期的に行う必要があります。
具体的な申請の流れ
具体的な申請の流れは「申請前準備」、「BCP策定」、「申請」、「審査後、交付決定」、「BCP実施」、「完了報告」、「完了検査と助成金額の確定」、「助成金額の請求」、「助成額の支払」となります。
申請前の事前準備としては、BCPについて理解するだけでなく、上記の「BCP策定支援講座(ステージ1)」や「中小企業強靱化法に基づく事業継続力強化計画の認定」を受けることが挙げられます。
BCP策定支援事業について
上記の「BCP策定支援講座」はBCP策定支援事業の一貫であり、東京都中小企業復興公社が実施している事業となります。BCP策定支援事業は大きく「知る」「つくる」「動かす」の3つの事業から成り立っています。
「知る」については、普及啓発セミナーを実施しており、BCPに取り組む重要性を理解することできます。「つくる」については、BCP策定講座で基本方針の決定や、専門のコンサルタントによる自社のBCP作成といった支援をしてくれます。
「動かす」については、BCP策定後のフォローアップセミナーを実施しており、訓練などの企画を行うことができます。
事業継続力強化計画の認定について
「事業継続力強化計画の認定」とは、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度のことです。認定を受けることにより、「低利融資、信用保証枠の拡大等の金融支援」を受けることができるなどのメリットがあります。
申請方法
申請方法は事前に予約し、対面のみでの申請となります。郵送などの非対面での申請には対応していないことに注意してください。
必要書類
申請のための書類は多く、法人と個人でも異なるため、ホームページをよく確認し、必要な書類を揃えるようにしましょう。
その他の助成金や補助金
「BCP実践促進助成金」だけでなく、他にも活用すべき助成金が多く存在します。本記事ではその中からBCPに関わるものについていくつか紹介します。
テレワーク助成金
「テレワーク助成金」とは、自宅またはサテライトオフィスにおいて新たにテレワークを導入する事業者を対象とした助成金で、厚生労働省が主体となる「働き方改革推進支援助成金」のテレワークコースです。最大で300万円の助成金を受けることができます。
上記助成金は働き方改革の一環として導入されているものですが、テレワークは近年の新型コロナウイルスなどのパンデミックに対するBCPとして導入することが勧められています。
IT導入補助金
「IT導入補助金」は既存の対面でのサービス事業を「非対面型」に移行する際にかかる経費に対しての助成金です。新型コロナウイルス対策のために新たに「C類型」という特別枠が設置され、経費の最大3/4が補助されます。
特定の地域における助成金や補助金
助成金や補助金には他にも「特定の地域を対象としたもの」も存在します。以下ではその中から、東京都江戸川区の事例と千葉県船橋市の事例を紹介します。これらはあくまで一例であるため、ご自身の企業の地域に関しても利用できるものがないか調べることをお勧めします。
東京都江戸川区「BCPの策定にかかる助成金」
本制度は東京都江戸川区内に本社のある区内事業所を対象として、BCPの策定にかかる費用を一部助成してくれる制度です。
助成対象者としては、「中小企業であること」、「前年度の法人住民税及び法人事業税を完納していること」、「公序良俗に反せず、東京信用保証協会の保証対象業種であること」、「風俗営業を営む事業者でないこと」の全てに該当する企業となります。
助成額は助成対象経費の3分の2以内で、20万円が上限となっています。助成対象経費としては「コンサルタントによる指導に要する費用」、「内部研修の実施に係る講師派遣等の費用」、「外部研修の参加費用」が挙げられます。
千葉県船橋市「船橋市感染症BCP策定支援事業費補助金」
本制度は千葉県船橋市内に事業所がある中小企業者等を対象とした感染症BCPの策定・改訂にかかった費用を一部補助してくれる制度です。
補助対象者としては「市内に事業所を有すること」、「宗教法人または政治団体ではないこと」、「暴力団、暴力団員またはそれらと密接な関係を有すものではないこと」を全て満たす企業となります。
補助額は対象経費の3分の2以内で、20万円が上限となっています。補助対象経費は江戸川区と同様に「コンサルタントによる指導に要する費用」、「内部研修の実施に係る講師派遣等の費用」、「外部研修の参加費用」が挙げられます。
重要性を増すBCPと助成金制度の有効活用
東日本大震災や新型コロナウイルスのパンデミックにより、BCPは重要度を増しています。BCPの作成には時間も費用もかかるため、中小企業にはハードルの高いものではありますが、国や地域が開催しているセミナーや、助成金や補助金をうまく活用して、緊急事態に備えましょう。
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