ちりも積もれば山となる…かも
コスト削減は一朝一夕で成らず、毎日コツコツと節約する意識が大切といわれます。一つひとつの節約額はけっして大きくないとしても、数や回数を重ねていけば大きくなるもの。コピーを取るときに不要な紙の裏側を使う、暖房の設定温度を下げるといった工夫はすでに定着してきました。では、税金にも節約できる面はあるのでしょうか? 今回は日々の業務のなかで意識したい節税対策を解説します。
節税対策といえば法人税
会社の事業活動に関係する税金のうち、最も基本的なものが法人税です。法人税を簡単に解説すると、会社が得た利益にかかる税金です。算出方法は、まず会計上は収益を表す「益金」から、会計上は費用を表す「損金」を差し引いた「所得」を割り出し、この所得に決められた利率で課税します。
会計と税法では、なにを儲けとし、なにを経費とするかが微妙に異なるので、収益と益金、費用と損金の額がイコールというわけではありません。そうした調整をかんがみながら、不正のない範囲で益金を減らし、かつ損金を増やして、課税対象である所得を少なく見せるのが節税の考え方です。次は実際の節税対策を紹介します。
「交際費」を節約するときの考え方
会社から、お客さまとの打ち合わせで発生した飲食代を「ひとりあたり5000円以下にしてください」といわれたことはありませんか? そこにはきちんとした理由があります。
仕事上の付き合いで発生した費用を交際費といいますが、交際費は基本的に経費として認められていません。つまり損金に算入されないということなので、いくら交際費を使っても所得は減らず節税にはならないのです。
しかし、一定の条件を満たせば、交際費を経費として認める例外があり、そのひとつが「ひとりあたり5000円以下の場合」なのです。
交際費が経費になるか否かの条件は、会社の規模と交際費の金額によります。ほかにも、資本金1億円以下の会社は、800万円までの交際費、または飲食のために支出した費用の50%までが経費として認められます。ただし細かな規定は頻繁に改正されるので、注意しましょう。
経費や役員賞与を計上するタイミング
法人税の節税対策として、経費計上のタイミングを考えておくことも大切です。例えば予期せぬ大幅な黒字が見込まれたのであれば、予定していた設備投資を早めに行うなどして、黒字を小さくする工夫をします。
同じく役員賞与も、普段から計画しておきたい項目のひとつです。役員賞与を経費として計上するには、期首から4カ月を経過した日、または役員報酬の額を決議した株主総会の日から1カ月を経過した日のいずれか早いほうに金額と支給時期を税務署に届け出る必要があります。これは役員賞与の額をつり上げ、不当な税金対策に利用されることを防ぐ措置で、届け出た支給日と支給額のわずかな違いも許されません(正当な理由があり、理由の届を提出すれば変更可能)。忘れずに資金繰り計画に織り込んでおきましょう。
印紙税などのこまめな対策
ここまでで解説した法人税の節税対策は、代表的な部分になります。最後に細かな節税対策を見ていきましょう。
会社が支払う税金には、法人税のほか消費税、固定資産税、相続税、贈与税、印紙税などがあります。それぞれ制度の範囲内での節税対策が考えられますが、日々のコスト削減の一環として、印紙税の節税対策を見ていきます。
印紙税とは、取引によって作成される文書にかかる税金です。原則として契約書などの書面に収入印紙を貼ることで納め、偽造防止や信頼性増加などの効果があるといわれます。
例えば自社で契約書を複数保管したい場合、契約書の数に合わせて収入印紙を貼る必要がありますが、原本をコピーする方法であれば、原本以外に収入印紙を貼る必要はありません。また、会社設立時に定款を作成する場合、電子定款を利用すれば印紙代を節約することが可能です。いずれも節約額としては少額ですが、行わない手はありません。
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