2023.01.30 (Mon)
もっと税金を知ろう!(第10回)
2023年10月導入のインボイス制度。まずは、これだけ理解しよう
2023年10月1日よりインボイス制度が導入されます。インボイス制度導入後は、消費税の納付に関して、個人事業主に大きな影響が出ると言われていますが、多くの企業にとっても他人事ではありません。本記事では、インボイス制度について基本事項を解説し、どのような影響があるのか、導入前に考えておくべきポイントなどを紹介します。
インボイス制度とは
消費税には、生産、流通などの各取引段階で二重三重に課税されないように、売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を控除する仕組みがあります。これを「仕入税額控除」といいます。このような取引における消費税率と税額を正確に把握するために導入されるのが、インボイス制度です。
2023年1月現在、消費税については原則的に、個人事業主であれば前々年、法人であれば前々事業年度における課税売上高が1,000万円以下の場合(免税事業者)は納税が免除されています。
その場合、免税事業者に発注しても、課税事業者(消費税を納付する義務のある法人・個人事業主)に発注しても、発注事業者が負担する消費税の総額は同じです。しかし、インボイス制度が導入されると、「制度に対応していない免税事業者」に仕事を依頼した場合、発注事業者は仕入税額控除が受けられなくなり、消費税を余分に負担することになるのです。
インボイス制度は、正確には「適格請求書等保存方式」といいます。これは、適格請求書(インボイス)の発行または保存することで、冒頭の仕入税額控除が受けられる制度です。適格請求書とは、簡単に言えば国が認めた請求書で、「発注事業者(買い手)が仕入時に消費税を払った」という証明になるものです。
適格請求書と従来の請求書では、以下のような点が異なります。
従来の請求書では、取引年月日や取引内容、金額、請求書を発行する事業者と、それを受け取る事業者などを記載していました。適格請求書では、これらに加えて、適格請求書発行事業者の登録番号、適用税率と各消費税額を記載しなければなりません。そして、適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者となる必要があります。2023年10月1日のインボイス制度導入時点で同事業者となるためには、原則的に2023年3月31日までに登録申請書を税務署に提出しなければならないのです。
個人事業主は実質負担増になる!?
インボイス制度が導入されると、原則として適格請求書を受け取った場合のみ、仕入税額控除ができます。
例えば、企業Aが30万円の商品を販売すると、消費者から3万円の消費税を預かります(税率10%の場合)。この商品をつくるために、下請会社に10万円を支払った場合、消費税が1万円かかります(10万円×10%)。企業Aは、消費者から預かった3万円から、仕入れにかかった1万円を引いた、2万円を納税します。
インボイス制度導入後、協力会社が適格請求書発行事業者であれば、これまでどおり納税額は2万円ですが、下請会社が的確請求書発行事業者でない場合は、1万円の控除を受けられず、企業Aは3万円を納税することになるのです。
こうなると、企業Aのような発注事業者は、納税額が減額できる適格請求書発行事業者に仕事を依頼することが増えるかもしれません。下請会社は税務署に申請することで適格請求書発行事業者になることができますが、そうすると消費税の納付義務が生じます。
下請会社の視点からこの制度変更を見てみましょう。
これまで、個人事業主の場合、起業後2年間は、消費税として受け取った金銭を納税せず利益に上乗せすることができました。これは事業が軌道に乗るまでの大きな助けになっていました。しかし、インボイス制度の導入により、免税の恩恵が受けられない可能性が生じます。
さらに、請求書に記載する事項が増えるため、請求書のフォーマットや発行システムの変更が必要になることもあるでしょう。請求書の発行は頻繁に行われていて、取引先が多いほど経理作業の大きな負担になります。インボイス制度の導入前に、会計システムの見直しなどを行い、効率的に業務を進められるようにしておきたいところです。
発注事業者は、経理の負担が増える可能性も
インボイス制度は、個人事業主などに仕事を発注する企業にとっても、さまざまな影響があります。いちばん大きな影響は、前述したように免税事業者からの仕入れにおいて、仕入税額控除が認められないので負担増になることです。また、仕事の発注先に免税事業者と課税事業者が混在している場合、消費税の申告業務が複雑になります。受け取った適格請求書の管理方法も考えておかなければなりません。さらに、インボイス制度には経過措置があり、免税事業者からの課税仕入れについて、2023年10月1日から3年間は80%、2026年10月1日から3年間は50%の仕入税額控除が可能です。こうした措置に対応するためにも、インボイス制度導入前に経理業務とシステムはしっかり見直しておきたいところです。
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