2016.02.01 (Mon)
お悩み解決コラム(第1回)
社員のモチベーションをアップさせ生産性を上げるには
日本だけでなく世界全体でも大変厳しい経済状況が続いています。どのような業界においても売上や利益だけでなく、社員のやる気や前向きさといったメンタル面まで落ち込んでしまう場面も少なくありません。中には社員のモチベーションが下がり、さらに生産性が下がり、社員の離職につながる・・・といった悪循環に陥っている企業もあるようです。 そこで、社員のモチベーションをアップさせて、ビジネスの生産性をアップさせ、売上と利益を確保する方法を、いくつかご紹介しましょう。
モチベーションとは?
「御社の社員さんは、みんなモチベーションが高いですね」とか、「モチベーションを高めて仕事に取りかかろう」といった具合に、 日本では「メンタル面のやる気」や「前向きな態度」のようなニュアンスで使われることが多い「モチベーション」という単語ですが、本来こんな意味があるそうなんです。
「モチベーション【motivation】」という英語には、『動機を与えること。動機づけ』という意味があります。もともとこの単語は、「動機・理由・目的」という意味の「motive」と、「行動・活動」という意味の「action」を合成して作られました。つまり、「動機や理由や目的のための、行動や活動」という意味があるのです。
経営者として社員のモチベーションを高めるには、「動機・目的」を設定して、それに向かって積極的な行動がとれるような仕組みと環境を整えることが求められるのです。
経営者は数字だけでなく、「夢や希望」というビジョンも提示すべき
以前、知り合いのコンサルタントのA先生からこんな話を聞きました。
A先生が顧問をされていた、某製造業の社長さんが、社内会議で経費削減を呼び掛けました。その社長さんは具体的な対策を説明された後、 「この経費削減を成功させないと、当社の経営状態がいかに悪くなるか」 ということを延々と説明されました。その表情と語り口は暗く、とても切実で押し迫っていたそうです。
その後、社内の雰囲気は急速に暗くなり、かつての活気が失われたそうです。社員の言葉数も少なくなり、コミュニケーションが少なくなったことにより、社内の伝達ミスによる製造ミスや、クレームが徐々に増えていきました。そしてそれから半年後、その会社のスタッフの人数は半分以下になりました。 この会社を去ったある社員は、このように言っていたそうです。
「この会社に未来はないと感じ、早いうちに他の会社に移ろうと思った」
この社長さんは、自社の切実な現状を社員に伝えると同時に、「この経費削減を実施することで、こんな良いことがある。こんなビジョンを実現して、このような素晴らしい会社にしたい」といった「社長の夢」も語る必要もあったのではないでしょうか。
経営者は社員のモチベーションを高めるために「このままではマズイぞ」というマイナスのメッセージを発信して危機意識を持たせながら、「夢」や「希望」といった明るくプラスのメッセージも同時に発信して社員が明るく前向きに頑張れる環境を作る、バランス感覚が必要だと、このエピソードを聞いて感じました。
社員一人ひとりが、自分の夢を意識することで、モチベーションが高まる。
当然のことですが、社員一人ひとりに、それぞれの家庭があり、人生があり、夢があります。会社として経営者として、社員それぞれが持っている夢を、現実化するためのサポートができれば、社員のモチベーションは自ずと上がります。そのような環境を整えるための方法を、簡単にご紹介しましょう。 まず社員の夢を①仕事②家庭③個人の3つの分野で調査します。経営者や幹部が直接ヒアリングしても良いですし、アンケート用紙を配って記入してもらっても良いでしょう。 次に②家庭と③個人の夢を実現するために必要な資源を、社員に考えてもらいます。多くの場合、『「家族と一緒に過ごす時間」や、「個人の趣味を充実するためのお金」といった資源が必要だ。そして、その資源を確保するためには、より一層仕事に情熱的に取り組む必要がある』ということが明確になると思います。
ネガティブな「経費削減」も、社員のやる気を引き出す仕組みとして活用
また、厳しいビジネス環境の中で「経費削減」に取り組まれる企業も多いと思います。「経費削減」にはネガティブなイメージが強いですが、これもうまく活用すれば、社員のモチベーションアップにつなげることができます。具体的な方法としては、会社の経費削減が成功した暁には、節約できた経費や時間の一部を、成果報酬として社員に還元する仕組みを作るのです。某美容院のチェーン店ではこの「成果報酬つき経費削減」を、各店別に行い、最も経費削減額が多かった店にはさらにボーナスを追加するという方法を取り入れ、店同士で競い合わせて、大幅なコストダウンにつなげました。また、各店のスタッフが積極的にアイデアを出し合いながら行ったので、各店の団結力と自主性も高まったそうです。
具体的な手順の一例を、参考までにご紹介します。
- 経費の項目別に担当者、あるいは担当部署を決める。
- 項目別に現在かかっている経費(あるいは前期にかかった経費)を書きだす。
- 経費削減の目標と、目標達成した場合に、担当スタッフに還元する成果報酬を設定する。(例:前年比10%の経費削減を目標とし、達成した場合は削減できた経費の3%をスタッフに還元する、など)
- 経費削減目標を達成するためのアイデアを出す。
- 具体的な行動計画を立てる。
- 定期的に(できれば月に1回程度)、行動計画の実施状況を確認する。
- 経費削減額に応じた成果報酬をスタッフに支払う。成果報酬の支払いは毎月の方がモチベーションが維持しやすいが、半年や1年というサイクルでも良い。
「経営者の本気」が、社員のハートに火をつける
社員のモチベーションを上げるために最も有効なのが、社長さんの会社に対する熱い思いを語ることです。現在、社長業をされている皆さんの中には、創業者の方、先代から会社を引き継いだ2代目、3代目の方、 一般社員として就職し、その働きを認められて出世して現在のポストに就任された方など、様々だと思います。 実際に体験したら分かりますが、社長業とは生半可な気持ちでは勤まらない大変なものです。「社長になる」というチャンスが巡ってきて、それを自分の仕事として引き受ける方には、仕事に対して深い思いがあったり、社長になってまで実現したい夢や理想があったり、あるいはそれを決意させるだけの大きな過去の出来事があることが多いようです。そんな会社と社長業に対する想いを、社員さんにストレートに語りかけてみてください。
「何を話せば良いのか分からない」という社長さんは、以下の視点からご自身と会社のことを振り返ってみてください。
- なぜ、この仕事をしようと思ったか? この道に入ったきっかけ。
- この仕事を通じて、お客さんにどんな幸せや喜びを提供したいか?
- この仕事を一緒に頑張ってくれる社員さんや、協力会社に対してどんな想いを持っているか? どんなチームを一緒に作っていきたいか?
- この仕事を通じて、地域社会や日本、世界に貢献できるとしたら、どんな働きかけをしたいか。
- この仕事を通じ、(社長自身の)家族をどのように幸せにしたいか?
最初は難しいかもしれませんが、まずは思いついた単語だけでも良いので、ノートに書き留めてください。やがて、ご自身の想いの全貌が見えてきて、一つの文章につながっていくと思います。
モチベーションを高めて、厳しい時も乗り切ろう
よくないニュースが続いたりすると、言いようのない閉そく感に覆われているように感じてしまうときもあります。しかし、我々ビジネスマンはそんな時こそ、明るく元気にモチベーションを高めて、日々の仕事を頑張って日本を明るくするべきだと私は思います。
もしよろしければ、今回ご紹介した以下の方法を試されてみてください。
- 厳しい時代だけど、社長自ら、夢やビジョンを語る。
- 社員の夢やビジョンも聞き出し、日々の仕事を通じてそれを実現できる、という仕組みを作る。
- 経費削減の目標と、社員の成果報酬を明確にして、利益確保の活動を意欲的に取り組める環境を整える。
企業を経営しているとご飯が喉を通らないくらい大変な局面があると思います。しかしそんな時こそ、明るく前向きに「目的・動機」を目指して、日々「行動・活動」を続けていきましょう。
連載記事一覧
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