2016.02.01 (Mon)
キーマンズボイス(第13回)
株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長 是枝 周樹 氏
8,400もの会計事務所と17,000の中堅・中小企業がそのシステムを利用し中規模企業向けERPシステムの売上4年連続No.1を達成するなどまさに日本における「財務会計・税務システム」のリーディングカンパニー、ミロク情報サービス(以下、MJS)。
2012年の東証1部上場を“通過点”と話す是枝周樹社長に、同社36年の歴史や今後の展望などについて伺った。
株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長
是枝周樹(これえだ・ひろき)
経歴
1964年2月24日生まれ、東京都出身。
1994年に同社取締役、2004年の代表取締役副社長就任を経て、2005年より現職。
最大の衝撃はあのOSの登場だった!?
――まずは設立の経緯についてお聞かせください
当社は元々、ミロク経理という会社の会計事務所向け部門が独立し、会計事務所という専門業界に向けて財務計算サービスを開始したのが始まりです。
――御社といえば財務・会計システムや税務システムに強いといった印象がありますが、36年という歴史の中でさまざまなビジネスモデルの変化やそれに伴う苦難もあったと伺っております。その辺りについてお聞きしてもよろしいでしょうか?
そうですね。まずは設立当初の主力ビジネスであった計算センタービジネスからオフコンの開発・販売に舵を切るという大きな転換がありました。
オフコンというのは、例えばキーボードに勘定科目が刻印されているなど、業務の効率化を支援する専用機のことです。専用機は、(ハードとソフトが)すべて一体となっているので、お客様は導入すればすぐに使えるという利点がありました。 日本の経済成長と相まって、このオフコンビジネスにより、かなりの市場を獲得することができました。現在の当社の主要顧客のベースがここで出来上がったと言っても過言ではありません。
例えば、その当時当社の専用機をお使いになられた会計事務所様は、現在ご子息の代になっても引き続きシステムを使い続けていただいているケースも少なくなく、これだけ長く同じお客様にご支持頂いているというのは当社の一つの強みと言って良いと思います。
その後も様々な専用機を開発・販売し順調に業績を伸ばしていったのですが、大きな転機となったのはウィンドウズ95の登場でした。このインパクトは当社の歴史上でも最大のものだったと思います。
ウィンドウズ95の登場をきっかけにお客様が(ハードである)パソコンを選べる時代になり、サーバー環境の発展なども相まって、ソフトウェアをどのように開発・販売していくのか、また、それに伴ったサポート体制等について重点的に考え、ビジネスモデルを転換し、環境変化に対応しました。
中小企業における“ICT×財務・会計”の現状とは!?
――そういった経緯を踏まえた上で、財務・会計システムは今後どういった方向に進んでいくとお考えでしょうか?
やはり時代の流れを考えるとクラウド化という方向に進まざるを得ないでしょうね。 ただ、今後の財務・会計システムを考えていく上で、クラウドなどのIT活用法を含め、世界に目を向けるということが大事だと思います。例えばIT先進国である韓国やドイツ、アメリカなどの市場を見渡すと、それぞれの国でまるで違った財務・会計システムとIT活用事例がある。
そういった他の国々から学びつつ、日本に最適なモデルを探っていくことが今はとても重要だと考えています。
――御社としての今後の展開についてもお聞かせください
当社はこれまで、会計事務所およびその顧問先企業等に、財務・会計をコアとする経営システムおよび経営情報サービスを提供してきました。 これに関しては今後も変わらずコアビジネスとして続けていくと同時に、継続的に企業価値を向上させていかなければならないと考えています。
その為には、今までとは別のビジネスモデルを新規事業として立ち上げ、新たな価値創造に向けて果敢に挑戦していく必要があるのです。
――今度は御社サービス(システム)の主なターゲットである中小企業市場についてお伺いしたいのですが、是枝社長から見て中小企業市場とはどういった特徴を持った市場なのでしょうか?ICTとの関わり等も含めてお聞かせいただけると幸いです
中小企業とひとことで言ってもその規模や置かれている環境はさまざまなのでなかなか表現が難しい部分があるということを前置きさせてください。 その上で日本の中小企業における“ICTと財務・会計”の関わり方についてお話をさせていただくと、現在、日本国内の企業における会計システムの普及率は、米国と比較しても決して低い数字ではありません。
しかし、本当に重要なのは導入することではなく、それをどれだけ企業経営の最適化に利用できているかということです。そういった視点で見てみると日本においてはまだまだ本当の意味で“使いこなせている”中小企業はそれ程多くはないと思います。
MJSの仕掛ける次なるキーワードとは!?
――引き続き中小企業市場についてお伺いしたいのですが、市場の置かれている現状から今後の変化や成長、そしてそれに対して御社としてはどのようなアプローチを考えているのでしょうか?
少し視野を広げてお話しますと、乱暴な言い方になるかもしれませんが、日本におけるインターネットビジネスというのはまだまだ内需の組み換えしか行われていないというのが私の印象です。
ネット通販などがその一例で、既存の通販ビジネスモデルにインターネットという技術を導入したものの、ICTを利用した国内の輸出産業はそれほど伸びているでしょうか。小売業等に目を向けると、顧客が大型量販店やネット通販に集まっているといった印象もあります。さまざまな事情により中小企業の多くは今後の活路を模索する必要があるかもしれません。
劇的に変化していく経営環境において、どのような経営戦略をもって勝ち残るべきなのか、これらを会計・財務システムからどのように支援ができるかがこれから当社としてとても大事になってくると思っています。
例えば製品別・商品別・地域別でセグメント化された売上・利益はどうなっているのか、それによって、経営資源の選択と集中を実行できているのか、そういった部分をしっかりと分析できるようなICTの使い方が大事になってくると思いますね。
――その他に御社が今後力を入れていこうと考えているサービス等はありますか?
今までの事業者向けサービスに加え、家計簿系のアプリやそれに伴ったサービス等の“BtoC”向けビジネスについても今後更に力を入れていきたいと考えています。家計簿と言っても単に主婦の方だけを対象としている訳ではなくノマドワーカーや個人事業主、会社員の方々もその対象ユーザーとして捉えています。
例えば既にサービスを開始している『マネトラ』シリーズなどはスマホのカメラでレシートを撮るだけでそのデータをクラウド上で簡単に管理できたり、銀行口座などと連動して簡単にお金の管理ができますので、それらを確定申告や家計管理の一助として役立てて頂ければと考えています。
つまりは個人資産に結びつくようなサービスを展開していくことで今までのようなBtoBのサービスだけでなくBtoCのサービスに対しても我々はいちはやく裾野を広げていきたいと考えています。
モノづくりの原点は音楽にあった!?
――ここからは是枝社長ご自身のことについても伺いたいと思います。影響を受けた人物や自らのルーツと呼べるものはありますか?
影響を受けた人物は特にいませんが、私自身ずっと音楽畑で育ったので自分のルーツは音楽にあると思っています。10代でアメリカに渡り、5年間はギターばかり弾いて過ごしていた記憶しかありません。
――音楽が現在の仕事に与えた影響などはありますか?
あると思います。音楽というのは元々何もないところから創るものですよね?例えば絵だとキャンバスがありますけど音楽は本当に何もない所から頭の中に浮かんだイマジネーションを形にしていく作業です。
そういう才能というか能力というのは会社でいうところのイノベーションに通ずるものだと思いますし、私自身はそういったものを音楽から学んだと思っています。
――是枝流・人材育成術などはありますか?
『あなたは会社と向き合って仕事をしていますか?』ということを常に社員には問うようにしています。
例えば朝7時に起きて9時に会社につく。会社を出るのは18時か残業があれば20時になり、家につくと21時。そして24時に寝ているとしたら考えてみると一日の内ほとんどの時間を会社の為に使っているということになります。つまり、起きている時間、もっと大袈裟に言えば人生の多くの時間を会社で過ごしている訳であって、このことをただ漠然と捉えているのではなく明確に意識をして過ごすということが私はものすごく重要だと思っています。
その事実を明確に意識しながら会社と正面から向き合い、高みを目指して日々を過ごすことで、数年後にはそうしなかった自分との間に必ず大きな差が生まれます。これは業績的な部分だけでなく人格的な面にも現れると思いますね。
――最後に長く不況と呼ばれる時代が続いてきましたが、そのような中でもがんばってきた他の経営者の方々に是枝社長からひとことメッセージをお願いします
当社は、会計事務所の先生方やその顧問先企業の方たちと長いお付き合いをさせて頂いています。経済環境が厳しい時代ではありますが、中小企業の皆さんには元気になって欲しいという想いとそれを手助けしたいという気持ちを人一倍持っているつもりです。
そんな中で私自身が、企業経営において一番大事だと思っていることはとにかく“企業を継続させる”ということであり、その為に重要なことは“理念を持ち続けること”だと思っています。
起業した時の理念を最後まで貫き、まっとうしていくということ。どうか経営者の皆さんにはそれをいつまでも忘れずにいて欲しいと思いますね。
――ありがとうございました
連載記事一覧
- 第3回 株式会社ペリエ 社長 和田 浩美 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第4回 株式会社いろどり 代表取締役 横石 知二 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第6回 株式会社ラック 代表取締役社長 髙梨 輝彦 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第7回 株式会社フォトクリエイト 代表取締役社長 白砂 晃 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第8回 株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一氏 2016.02.01 (Mon)
- 第9回 サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第10回 株式会社AOI Pro. 代表取締役社長 藤原 次彦 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第11回 株式会社デジタルハーツ 代表取締役社長 河野 亮 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第12回 株式会社キングジム 代表取締役社長 宮本 彰 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第13回 株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長 是枝 周樹 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第14回 株式会社ネクスト 代表取締役社長 井上 高志 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第15回 全日本空輸株式会社 代表取締役社長 篠辺 修 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第17回 株式会社カカクコム 代表取締役社長 田中 実 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第18回 株式会社朝日ネット 代表取締役社長 土方 次郎 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第19回 株式会社サカタのタネ 代表取締役社長 坂田 宏 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第20回 株式会社学研ホールディングス 代表取締役社長 宮原 博昭 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第21回 コイニー株式会社 代表取締役社長 佐俣 奈緒子 氏 2016.02.01 (Mon)
- 第22回 株式会社乃村工藝社 CC事業本部ワークプレイス事業推進部長 兼 空間DMP事業準備室長 中村 久 氏 2016.02.01 (Mon)