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2016.06.10 (Fri)

顧客満足と経営のほどよい関係(第3回)

SNS時代の顧客満足とクレームの基礎を知る

posted by 株式会社アークコミュニケーションズ

時代とともに変化してきているクレーマー対策

 個人の権利意識と企業の顧客満足主義を逆手にとるクレーマーの存在は、いまに始まったことではありません。こうした層の顧客に対して、企業はクレームを処理するための専門部隊を作って応じてきました。しかしここ数年のあいだに、これまでの方法では対応しきれず、逆に火に油を注いでしまうケースが目立つようになっています。

 クレームがツイッターにアップされ、それが瞬くあいだに拡散。容易には収拾できない事態まで発展した事件をウェブニュースで見たことがない人は、いまやいないのではないでしょうか。

 ここではSNSが浸透したことで、新たな局面を迎えるクレーマー対策を見ていきます。

かつては1対1だったクレーマー対策

 ひと昔前までのクレームは、電話がかかってくる、店頭に直接来るといった、相手の姿が見えるかたちがほとんどでした。クレーム対策のマニュアルはそれに準じて作られているので、とにかく相手に納得してもらうために、くり返し丁寧に応対するのが基本だったのです。クレームというと悪いイメージがつきまといますが、顧客の生の声とニーズを直接的に聞くいい機会でもあって、真摯に話を重ねるうちに、商品の改善や改良へとつながった例も、少なくありません。

 また、商品不具合のクレームに対しては、話をきちんと聞き、心を込めておわびをするという、誠意をもった初動を怠らなければ、大事にはなりませんでした。製造の過程で出てしまう不良品が消費者の手に届いてしまったら、その不良品1点についておわびをし、新しい商品に取り替えれば問題は収束していったのです。

 不良品1点に対して、その1点のみを交換する対処で許された。かつてはこれで問題が沈静化するケースもありましたが、SNSが普及した現代では、こうした気持ちのまま対応をすると、多くの場合、クレーマーの気持ちを収めるどころか、へたをすると怒りをあおる結果になります。

かつてのようなごまかしが効かなくなった

 結論からいえば、不良品1点に対して、SNS時代のお客さんが真に求めているのは、不良品が出た原因の迅速な情報公開と今後はできるだけ不良品を出さないようにする対策だと考えられます。

 2014年から2015年にかけておきた、2つの食品異物混入事故がそのことを象徴的に物語っています。

 ひとつは、まるか食品の「ペヤング」、もうひとつは日本マクドナルドの「チキンナゲット」です。両者は商品の中に異物が混入していたことを指摘されると、発覚直後こそ「異物混入は考えられない」と弁明しました。しかし、まるか食品は、その後に同一ラインで製造した商品の自主回収と生産中止を発表。約半年の工場設備の改修を経てから、やっと再発売にこぎつけ、一時は品切れが続くほどの大復活を果たしました。

 一方で日本マクドナルドは異物が混入した商品の代金を返金し謝罪、のちに会見を開いたものの、十分な情報公開がなされたとはいえないままに営業を続け、消費者の反感を買います。

 2つの騒動でSNSがどのように作用したのかを見ると、状況は異なるものの、ほぼ同一です。まるか食品の場合は、異物混入の写真がセンセーショナルに広がり、誠意ある対応を求めるネット世論が拡大・拡散しました。日本マクドナルドの場合は、商品の代金返金は同然のこととして話題にならず、その後の対応のまずさが拡大・拡散していきます。

 キーワードは「拡大と拡散」。SNSによって、ひとりのことに端を発するクレームが、消費者全体にすぐに拡大・拡散するので、1対1を基本とする対応ではもはやこと足りないのです。

クレーマーが会社に求めている対応は古今変わらず「誠意」

 たしかにSNSの普及によって、顧客がクレームを入れるときのアクションと、求められる企業の具体的な対応方法は変わりました。少しでも対応を間違えると、失敗がより大きく世の中に広がるので、細心の注意が必要です。その意味ではかつてよりも企業の負担は増えているかもしれません。

 しかしながら、クレームを入れた人が、本当に企業に求めている本質さえ見失わないよう心掛け続ければ、大きな失敗にはならないでしょう。仮に一時的に失敗をしたとしても、それを挽回するチャンスは何度でもあります。失敗が広がる速度が速いということは、成功が広がる速度も速いといえるのです。

 顧客が企業に求める本質がなにかというと、その時点における、顧客への最大限の企業努力です。SNSが広がる前の、1対1の顔が見える関係では、直接会って返金することを最大限の努力と考えられる人もいました。しかし、相手が多数となったいまの時代、多数にできるだけきちんとした商品を届ける努力が必要となるのです。

株式会社アークコミュニケーションズ

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